千鳥・大悟 ブランディングの専門家が分析する「最強人気の秘密」 | FRIDAYデジタル

千鳥・大悟 ブランディングの専門家が分析する「最強人気の秘密」

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まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」 

2012年に東京進出を果たし、最初こそ苦戦したものの、徐々に東京のお笑いとなじんでいき、今では10本以上のレギュラー番組を持つ売れっ子コンビに成長した千鳥。 

特に、ボケの大悟は業界だけでなく世間も認める人気芸人のひとりだ。テレビ番組内での大悟の言動はもちろん、ちょっとしたプライベートなことでも、すぐにニュースになり、ネット上には、さまざまな反響やコメントが寄せられている。

芸能戦国時代の現在、なぜそこまで大悟が注目を集めるのだろうか? 

その人気の秘密を、ブランディング専門のコンサルタントを行う松下一功氏にうかがってみた。

(撮影:結束武郎)
(撮影:結束武郎)

お笑い芸人はセルフブランディングがしやすい 

千鳥・大悟の人気の秘密を探る前に、まずは、いまの芸能界で生き残るための基本的な方法をうかがった。

「SNSなどのセルフメディアが世界的に浸透して、芸能人と一般人との距離が近くなっている今、芸能界で生き残るためには、それぞれが自分にあったセルフブランディングを行わないといけません。なぜなら、芸能人は自分自身が売り物です。ほかの業種に比べて、自分の見せ方、PRの仕方、特に在り方に細心の注意が必要だと言えます。 

勘違いしてほしくないのが、『セルフブランディング』とは、SNSを利用しようとか、好感度を上げようといったことではなく、『偽りのない自分』を世間に知ってもらおうということです。芸能界と言っても、俳優・歌手・モデルと様々なジャンルがありますが、そんな中でもセルフブランディングしやすいのは、お笑い芸人でしょう」

仕事柄、俳優・歌手・モデルの方が、自分の見せ方やPRの仕方について熟知していそうだが、これらのジャンルとお笑い芸人との間には、決定的な違いがあるという。

「俳優・歌手・モデルといった方々に限らないのですが、人は基本的に認知度や好感度を求めたり、承認欲求を満たすために『理想の自分』を演じてしまうところがあります。 

ひと昔前は、それでも許されていました。例えば、ドラマやトーク番組の中では情に厚く親しみやすい人物を演じている俳優さんが、私生活ではファンとの交流を一切持たないというのも珍しくなかったんです。しかし、現代でそんなことをやってしまったら、あっという間に炎上してしまうでしょう」

セルルフメディアが発達したおかげで、すべての人に膨大な量の情報が入ってくるようになった昨今。私たちは、テレビでは見られない芸能人のプライベートな部分を知ることで、芸能人に対して親近感や仲間意識を持つようになったと続ける。

「そこで重要になるのが、『偽りのない自分』を見せることです。 

セルフメディアで、作った『理想の自分』を発信し続けると、世間の人たちはその姿を本来のものだと信じてしまいます。『映え』を求めて多少盛ることはあると思いますが、ほどほどにしておかないと、後で大変なことになるケースも考えられます。 

例えば、親しみを持って応援しているタレントの本来の人柄が、セルフメディアで発信している人物像とあまりにも違っていたら、ファンは裏切られた気持ちになると思いませんか? また、品行方正なイメージのタレントが社会的ルールを違反してしまった場合、ギャップがあればあるほどメディアに取り上げられやすくなりますし、世間の目も厳しくなるでしょう。 

そんな中で、誰にも気兼ねすることなく『偽りのない自分』をさらけ出せるのが、お笑い芸人なのです」 

大悟が売れたのは「自分を偽らないから」

「お笑い芸人として売れるには、ネタの面白さが一番に挙げられますが、最近の傾向としては、本人のキャラクターも重要なポイントになっていると思います。

実際にネタ番組の数は限られていますから、自分たちの芸を披露するのが難しく、キャラクターで勝負する方も多いですよね。それに、情報社会となっている今、世間はプライベートな部分に注目しがちですから、時世と合っていると言えます。 

それに、お笑い芸人の場合は、そもそも『偽りの自分』を作り上げる必要がありません。 

大悟さんは、そのポイントをしっかりとおさえていて、番組内での彼の言動には人柄やキャラクターがにじみ出ています。 

ネットニュースに取り上げられているどの記事を見ても、彼の信念や考えは一貫していて、ブレがありません。自分というものをしっかりと持っていて、それを飾らずに発信しているからこそ、世間は自ずとそんな大吾さんを求めてしまうのでしょう。このブレない自分を持つことが、ブランディングで最も重要なことなのです」

お笑い芸人カテゴリーでは、大悟以外にもセルフブランディングが上手くできている芸人が何人もいるという。その中で突出しているのが、ビートたけしとキングコング西野亮廣の2名なのだそう。

「ビートたけしさんは、誰もが認める唯一無二の人でしょう。若い方は知らないかもしれませんが、あの人は昔から自分を偽らない人で、色々な事件で世間を騒がせています(笑)。でも、偽りがないからこそ『ビートたけしさんは、ああいう人なんだ』と理解され、何をしても『しょうがないな』という気持ちになってしまう、不思議な人です。 

キングコング西野さんは、ブレない信念を強く持っている人です。誰に何を言われようと、自分が掲げた目標を達成するための努力を怠りません。さらに、それを自分の言葉で発信し続けています。目標に向けてひたむきに頑張っている姿を見て、応援したくなったり協力したくなったりする人が出てくるのも自然なことです。間違いなく、彼の発信力には凄まじいパワーが備わっていると言えるでしょう」

好感度のバロメーターとも言える広告にも引っ張りだこの大悟。写真は、12月21日から公開されたJTのWEB動画CM「距離を保とうぜ♪」篇より
好感度のバロメーターとも言える広告にも引っ張りだこの大悟。写真は、12月21日から公開されたJTのWEB動画CM「距離を保とうぜ♪」篇より

大悟の認知度・好感度・注目度を速めた悲しい出来事

「昨年、大悟さんの評価を大きく上げた出来事がありました。それは、志村けんさんの逝去です。 

志村けんさんは、日本を代表する国民的スターの一人です。何十年も日本のお笑い界のトップを走ってきた方で、知名度も人気もバツグンでした。そんな志村けんさんが可愛がっていたのが大悟さんです。タイプの違う2人の親交に意外性を感じた人も多いことでしょう。 

それまで大悟さんを知らなかったという人も、志村けんさんの愛弟子のような存在ということで、彼に注目されたと思います。 

そんな中で起こった悲しい事件はたくさんのメディアを動かして、志村けんさんの生涯を振り返り、プライベートを深堀りさせました。 

そこで同時に出てきたのが、大悟さんのプライベートな一面です。数々のネットニュースに登場した、彼の偽りのない姿は、人々に大きな感動を与えました。それに比例するように、認知度・好感度・注目度が上がったのだと思います」

松下氏は、志村けんの死が大悟の人気を加速させたけれど、それは一過性のものではないだろうと分析する。

「志村けんさんの悲しい出来事から、すでに半年以上が経っています。現在もなお大悟さんのニュースが大きな注目を集め続けているのは、彼自身に芸人としての実力と自分を偽らない魅力が備わっていたからだと思います。 

それらがなければ、人気や知名度は一過性のもので終わっていた可能性があります。大悟さんの言動にはブレない信念があって、彼自身が自分を偽ることがないので、世間が注目し続けているのでしょう」

大悟が売れる理由は、『お笑い芸人カテゴリー』の中で、『自分を偽らない』スタイルを貫いていることにあるのだそう。そして、大悟人気を加速させたのが、全国民が悲しんだ『志村けんの逝去』。なんとも複雑だが、誰もが納得できる説だろう……。

また、大悟自身に魅力があるのはもちろんだが、発する言葉にも魅力がある。筆者としては、近いうちに、語録をまとめた日めくりカレンダーや語録集が発売され、大ヒットする可能性もあるのではないかとさえ思っている。今後、大悟がどんな活躍を見せてくれるのか、本当に楽しみだ。

 

松下一功 元グラフィックデザイナーという異色の経歴を持つ経営コンサルタント。広告業界でコンセプトワークが高く評価され独立。自動車メーカーのブランド戦略やコンサルティング等の数々のプロジェクトを手がける。リーマンショックや震災による顧客や自社の経営危機を、独自で体系化したブランド戦略で乗り越え、現在は「真のブランディグを世に伝える」専門家としても活動している。

  • 安倍川モチ子

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