コロナ禍で増殖する「闇ウーバーイーツ配達員」の悲しい実態 | FRIDAYデジタル

コロナ禍で増殖する「闇ウーバーイーツ配達員」の悲しい実態

ベトナム人ら技能実習生をスカウト! アカウントつきスマホを貸与し、売り上げの4割を上納させる

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配達員アカウントを有料で貸与するベトナム人”オンチュ”の事務所がある池袋。駅前には、東南アジア系や中東系の配達員が国籍ごとに分かれてたむろしていた(PHOTO奥窪優木)
配達員アカウントを有料で貸与するベトナム人”オンチュ”の事務所がある池袋。駅前には、東南アジア系や中東系の配達員が国籍ごとに分かれてたむろしていた(PHOTO奥窪優木)

コロナ禍でフードデリバリーの利用が当たり前になったいま、街中で外国人配達員の姿を見かけることも増えた。そんななか、ウーバーイーツを運営する『ウーバー・ジャパン』は、昨年末より外国人配達員に対するパスポートと在留カードの現物確認を開始した。

「昨年10月にベトナム国籍の男女4人が出入国管理法違反の疑いで逮捕されました。彼らはビザの在留期限が切れたまま、配達員として働いており、チェックの甘さが指摘されていました」(全国紙社会部記者)

この『ウーバー・ジャパン』の対応により、コロナ禍以来相次いでいた外国人配達員の不法就労問題に終止符が打たれた――はずだった。

「今年の2月から約2ヵ月間、土日に一日9時間働いていました。違法だと知っていましたが、母国に住む家族に仕送りをするためだと割り切っていた」

そう話すのは、茨城県内の工場に技能実習生として派遣されているベトナム人女性・ヒエンさん(仮名)だ。技能実習生の無届の副業は入管法で禁止されている。しかし、ヒエンさんは過去にウーバーイーツ配達員として働いていたという。

「これまではベトナム料理店で隠れてバイトしていました。でも、コロナで店の売り上げが下がり、クビになってしまった。そこで、友人からウーバーイーツの”闇バイト”を紹介してもらったんです」

前述のように、昨年末以降、就労資格を持たない外国人がウーバーイーツで働くことは不可能になっている。ではなぜ、ヒエンさんは配達員として働くことができたのか。彼女がその仕組みを説明する。

「すべて”オンチュ”(ベトナム語で『ボス』の意味)のおかげなんです。オンチュは池袋に住む30代のベトナム人男性で、なぜかウーバーイーツの配達員用アカウントが登録されたスマホを20台も持っていました。私は毎回、池袋の事務所に通い、スマホを1台借りて土日の午前11時から夜8時まで働いていた。

自転車や配達用バッグも貸してくれるので、自分では何も用意する必要がありませんでした。売り上げは一日1万円ほど。うち4割の手数料を引いた額を、毎回オンチュから現金でもらっていました。交通費を引くと、残りは4000円ほどでした」

4割のピンハネは高すぎるようだが、ヒエンさんは「ベトナムの平均月収が約3万円なので、4000円は大金。技能実習生の給料は月10万円ほどで、これだけでは仕送りができない。このバイトのおかげで何とか家族を養えた」と語る。

なお、ヒエンさんが住む茨城県から池袋までは往復4時間。無理な生活で体調を崩した彼女は、今ではオンチュの元を離れているという。

筆者は通訳の協力のもと、就労資格のない在日ベトナム人を装い、投稿者とやり取りを開始。初めに配達員アカウント発行のための手順を尋ねると、「まずは顔写真を送れ」という。そうすれば、筆者の顔写真と別人の個人情報とを組み合わせてアカウントを発行するとのこと。

料金は21万円で、初期費用として3万円、その後は一週間ごとに3万円ずつ支払う分割払い。筆者が「警察にバレることはないのか」と尋ねると、「まったく問題ない。1000%保証する」との返信があった。だが、その根拠について投稿者が語ることはなかった。

外国人の不法就労により、ウーバーイーツ利用者にも影響が及んでいる。台東区在住の20代の日本人女性は、筆者の取材にこう語る。

「在宅ワークなので、ランチにはいつもウーバーイーツを利用します。スマホで注文をすると、アプリ上に担当配達員の顔写真が表示されますが、実際に配達に来た人の顔を見ると、写真と別人なこともしょっちゅうです。そんな人に限って、日本語がほとんど通じません。配達先がわからないと電話をかけてきたのでルートを説明したのですが、全然理解してもらえず、結局商品が届かなかったこともありました」

もちろん不法就労は違法だ。“オンチュ”のように同胞を利用する外国人への取り締まりも強化するべきだろう。だが一方で、不法就労しなくてはならない状況に外国人を追い込んだ行政の対応にも問題があるのではないか。技能実習生への支援活動などを行うNPO法人『POSSE』の代表・今野晴貴氏は、外国人労働者に対する制度上の問題をこう指摘する。

「失業したり勤務シフトを削減された外国人労働者の権利が日本で極めて脆弱であることが問題です。通常、たとえば就労目的で来日した外国人が失業した場合、3ヵ月以内に新たな仕事を見つけなければ在留資格が取り消されてしまう可能性があります。

コロナ禍のいま、政府は会社都合で失業している外国人に在留資格の延長などの特例措置を講じていますが、会社が証明書を発行しないなどでその証明ができない場合は対象とならず、不安定な状況に置かれてしまいます。国や自治体は、彼らが働ける環境を整備するべきです」

本誌は『ウーバー・ジャパン』に、配達員アカウントの売買や貸与が横行している事実を認識しているか確認した。

すると、「調査中につきお答えは差し控えさせていただきます。なおUber では、就労資格をお持ちの外国籍の方が、外国籍であることを理由に就労の機会を奪われることはあってはならないと考えております。同時に、いずれのプラットフォーム利用者様にとっても安心してご利用いただけるためには、法令を含むルールを遵守していただかなければなりません。

プラットフォームをご利用される配達パートナーの皆様に法令遵守を徹底いただけるよう、今般、日本国籍を保持していない配達パートナーの登録に係る手続きを改定しました。同時に、なりすましを含めプラットフォームの不正利用を防ぐ措置も強化しております。措置の具体的な内容については、実効性を損なう恐れがありますため公表しておりません」との回答があった。

不法就労外国人を取り締まるだけではなく、根本的な問題解決に取り組む段階に差し掛かっているのではないか。

  • 取材・文奥窪優木

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