AKB48新曲のダンスが異次元に!「どえらいダンス」誕生の裏側 | FRIDAYデジタル

AKB48新曲のダンスが異次元に!「どえらいダンス」誕生の裏側

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振付担当は高校の数学教師!? 

  • 「AKB48の新曲、ダンスカッコよすぎ」
  • 「振りがめちゃくちゃ揃ってて、今のAKB48 の本気が見えた」
  • 「ロックダンス、カッコいい」
  • 「AKB48 って、いつからこんなガチのダンスグループになってたの?」

7月17日放送の『音楽の日』(TBS系)で、AKB48にとって約1年半ぶりのリリースとなる新曲『根も葉もRumor』(9月29日発売)が初披露されたとき、こうした声がSNS上に続出した。

正直、「神7」と言われるメンバーたちがいた初期や、指原莉乃を筆頭としたタレント性の高いメンバーが在籍した頃などに比べ、現役メンバーはよくわからない……という人も少なくないだろう。かく言う自分もそうで、同番組で最初にパフォーマンスを観た瞬間は「ダンスがすごくカッコいい」と釘付けになったものの、センターの岡田奈々でようやくAKB48だとわかったくらいだった。

しかも、この「どえらいダンス」は、その時点では振付師の名が公表されていなかったことから、ネット上では「相当な大物では」「ロックダンスといえば、もしかして中居正広?」など、様々な憶測が飛び交っていたのだが、後に三重高校ダンス部顧問の神田橋純氏だと発表される。

神田橋氏はプロの振付師ではなく、部活の外部顧問でもなく、本業は「数学・情報教諭」だ。

©AKB48/キングレコード
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いったいどんな経緯で!?

いったいどんな経緯でAKB48の振り付けを担当することに? 神田橋氏にリモートでインタビューした。

「依頼を受けたのは去年5~6月くらいやったと思います。きっかけは、4月4日にYouTubeに動画『うちで踊ろう』(三重中高ダンス部SERIOUS FLAVOR #うちで踊ろう)を投稿したことでした。 

実はクラウドファンディングで1040万円集めて、ニューヨークのアポロシアターに挑戦しようとしていたときに、コロナ禍で行けなくなり、3月からずっと休校期間で部活もできなくなったことで、次に何をしようかと考えたのが動画投稿で、その動画を秋元康先生がYouTubeで見た、と。 

『なんか面白いことをする子たちがいるな』というところからはじまって、僕たちの他のダンス作品を見てくださって、調べていくうちにほとんどが初心者(当時は約9割)だとわかって。でも、全国大会でいろいろ賞をとっていることから、『初心者を教えるのがうまい先生がいるんだな』ということで電話を学校にいただき、『AKB48の指導をしてもらえますか』と言われたんです」

もともと三重高ダンス部は、約14年前、当時高校生だった神田橋氏が数名の同好会として発足したのが始まり。神田橋氏は高校卒業後、立命館大学でダンス部部長を務め、大学生の大会で連続出場記録を作るなど、活躍してきた。

実は教員免許を取得したのは大学卒業後で、2014年に母校に教諭として着任後、同好会顧問に就任。2017年にダンス部に昇格すると、「SERIOUS FLAVOR」(通称シリフレ)の名で創部1年目にして全国大会準優勝を収め、話題となる。

それにしても、学校に突然AKB48の指導依頼が来るとは……。

「事務室に電話がきて、職員室にまわってくるんですけど、僕も移動教室や授業でいないときには、メモが置いてあるんです。そのメモに『AKB?』とか『秋元先生?』とか書いてあって。 

事務の人もなんだかわからずメモをとったようで、僕も秋元先生と書いてあるので、『公立中や公立高などの他の学校で秋元先生っていたっけ?』と思ったくらいなんです(笑)」 

振付担当の三重高校ダンス部顧問・神田橋純氏
振付担当の三重高校ダンス部顧問・神田橋純氏

コロナ禍、すべてリモートで指導 

電話は秋元先生の代理の方からで、ダンスの指導の依頼から、振り付けの作り方などを聞かれ、一緒に作っていくという流れに。しかし、コロナがどんどん拡大し、東京への移動が学校から禁止され、一時は撮影自体がなくなったり、延期が何度も繰り返されたりしたという。

「最初はリモートでダンスが得意そうな子を一人一人見てほしいということで、基礎の振りの動きを説明する動画を1つずつ作って送り、それをもとに一人一人動いてもらい、それを動画で送ってもらってコメントを返すという繰り返しで、運営の方もそのやりとりを共有し、オーディションしていった感じです」 

オーディション時の動画で特に光っていた子は?

「今回フロントメンバーになっている横山結衣さんは、『この子は入れたほうがいいですよ』とすぐに言いました。横山さんのダンスは、ダンサーが好きやろなと思うダンスなんですよ。あまり自分を出さずにきれいに踊るタイプもいますが、彼女はちょくちょく自分の色を入れてくる。尚且つ、ちゃんと体幹があってダンスが巧いんですよね」

そこに、もう一人のフロントとして、今年4月29日に「IZ*ONE」の活動を終了したばかりの本田仁美が加わる。

「本田さんは、器用な子やなと思いましたね。練習していても、オンラインで振り落としをしていても『これって~~ですか?』と細かく聞いてくる。そういうポイントが気になるのは、上から目線で申し訳ないですが、しっかりわかっている証拠やなと思っていました」

神田橋氏は三重からリモートで指導し、それをもとに東京の現場ではアシスタントとして、創部1年目のときのエース二人がレッスンの指導にあたった。そんな中、レッスンを通して存在感が際立って行ったのが、今回センターを務める岡田奈々だったという。

「僕はダンスのスキルだけで言ったら横山さんがいいなと思ったんです。それに、僕は今のAKB48を全く知らなくて、MVを観て勉強したくらいだったので、岡田さんのこともキャラクターまでわかっていませんでした。 

でも、毎回レッスン後にアシスタントの子たちにどんな様子だったか電話で聞くなどしながら、全体を把握し、フォーメーションを考えていく中で、岡田さんがセンターにいることで、全体の雰囲気が良くなるなということがわかりました。 

レッスンが始まる前に、大変やろうと思って、振りの解説動画をいっぱい送っておいたんですが、初日の練習に来たのは3人だけでした。もともとAKB48 では、振りをこんなに早いタイミングからやることがなく、MV撮影の前日や当日に振り入れすることも多いらしいので、『こんな早くに何の練習だろう?』みたいな感覚だったんやと思います。 

でも、レッスンを始めていくと、しんどいぞ、難しいぞというのがわかってきて。そんな中、岡田奈々さんももちろんしんどいはずなんですけど、練習の時から本気でやるし、休憩のときにアシスタントの子たちが『ここがあかんかったから、次は気をつけてやりましょうか』と言ったら、『みんな頑張ろう』みたいな声をみんなに掛けられる子なんですよね。 

うちのダンス部でもそうですけど、センターに来る子にはプレッシャーや風当たりが強くなる中、『この子がセンターなら、まとまりやすいし、文句も出にくいやろ』という感じはありました」 

©AKB48/キングレコード
©AKB48/キングレコード

全国優勝のレベルって…「正直、無理やろと最初は思いました」 

ところで、新曲の振りつけについてはどんな発注があったのか。

「ガンガンやってくださいと言われて、どのレベルでかと聞いたら、『高校生の大会で全国優勝を目指してますというレベルくらいでやってください』と言われて。 

正直、無理やろと最初は思いました。ストリートダンス界は、好きな人はすごく好きなので、ある一定のラインを超えてこないと、『ストリートダンスをバカにしやがって』と思われてしまうんです。そのラインを超えるには1日や2日じゃ絶対に無理なのに、しかも全国優勝を目指すレベルって……と。 

それでも運営からは『やらせます』と言われ、『そしたら、曲をください!』と言いましたが、そうこうするうちにコロナによって撮影日が延期になり、一時は立ち消えになるかとも思いました」

結局、デモ曲が出てきたのは、今年。

「『こんなに早いのは、異例のことです』と運営の方には言われました。それで、振り付けを作って動画で送ったら、すぐに秋元先生から戻しがあり、『とてもいいです』と絶賛してもらえました。 

ただ、僕はサビが一番大事だと思い、サビから作り始めて送ったんですが、ずっとフルスロットルでいくとみんなが倒れちゃうだろうと思ってヌキの箇所を2カ所作っておいたところ、それを秋元先生に言い当てられたんですよね(苦笑)。 

全国優勝を本気で狙うならやらないけど、MVならヌキの部分があっても目立つから良いよなとか、アイドルなら良いんじゃないかと思っていたら、言い当てられたので、ちゃんと見ているなあと思いました」 

メンバー以外のエキストラの生徒は、三重高校ダンス部”SERIOUS FLAVOR”の部員80名
メンバー以外のエキストラの生徒は、三重高校ダンス部”SERIOUS FLAVOR”の部員80名

本格的なレッスン開始はMV撮影の3週間前…

最初にサビから作り始め、Aメロ、Bメロ、イントロ、アウトロ……とやりとりを繰り返し、本格的にレッスンを始めたのは実はMV撮影の3週間前からだったという。

「しかも、3週間といっても、スケジュールの都合から1週目は1人当たり2回参加したくらいで、こちらもだんだん焦ってきて、MV撮影は7月後半、発売9月やというから、無理やろ……と。それで、MVのダンスのパートはサビやと聞いたので、なんとかサビ部分だけでも3週間で完成させようと思いました。 

何度もマネージャーさんやスタッフさんに『このペースでは間に合わないですよ』と言っていたんですが、そんなとき、『音楽の日』出演の話が来て。 

イントロとアウトロとサビはMV撮影の7月後半までに間に合わせなあかんと思っていたところに、この話が来たので、一度は『無理ですよ』と断ったんですよ。 

でも、5月に行われた峯岸みなみさんの卒業コンサート翌日のAKB48単独コンで、新曲の発売日と『AKB48単独』でのメンバー構成ということが発表され、ファンの方々も待ち望んでいる新曲なので、夏の音楽特番の『音楽の日』で初披露したいと。 

ギリギリまで『これいけるのか』『叩かれへんかな』と心配でしたが、リハの映像を観て、なんとか間に合ったか、と」 

本番には神田橋氏も駆けつける予定だったが、東京の緊急事態宣言により、上京を断念。初披露本番は、集会場の部屋のプロジェクターで、ダンス部員たちと一緒に観たという。

「『めっちゃええやん』とみんなで盛り上がりましたよ。リハを見て『なんとか間に合ったなぁ』とちょっと安心したのはあったんですけど、正直、まだこの段階では粗さもあったので、カメラアングルなども細かく指示を出させていただき、本番はすごく良い出来でした。 

反響は怖いので見ないようにしていたんですが、生徒や姉、父母が見てくれて『むっちゃいい反響やんか。良かったな』というのを聞いて安心しましたね。それに、運営の方からも、踊り終わって舞台袖に戻ってきてからすぐに電話があり、『先生ありがとうございました。すごく反響いいですよ』『トレンドの上位に上がりました。あの子たちも喜んでます』と言われて、本当に良かったなと。一仕事終えた感覚がありました」

そして、いよいよ神田橋氏がAKB48本人たちと初めて対面することになったのが、MV撮影日。ここまで神田橋氏の関わりはすべてリモートだったというから、驚きだ。

生徒たちと一緒にバスでロケ地の静岡県伊東市に行って、控室でスタッフの方にAKB48の子たちを紹介されたんですが、『やっと会えた。先生や』『動画の人や』みたいな反応でしたね。逆に僕は『あ、テレビで見る人や』と(笑)。 

彼女たちは、実際に撮影の現場で見ると、プロやなというシーンがたくさんありました。 

僕にも生徒らにも気さくに話しかけてくれたり、撮影が始まったら、監督の指示を的確にくみ取って演技したり。暑い日で熱中症対策にはかなり気を配っていましたが、スタッフさんが霧吹きかけたりアイスやポカリを出してくれたりする中、AKB48の子らも生徒を扇いでくれたり、映像を一緒に確認したりしていましたよ。すごく感じの良い子たちで、生徒たちとも『これは応援したくなるでしょ』と話していたんです(笑)」

『根も葉もRumor』の「どえらいダンス」は神田橋氏の指導のもと、三重高校ダンス部「SERIOUS FLAVOR」バージョンがYouTubeに投稿されているほか、ダンス部やダンス経験者たちによる多数の「踊ってみた」動画へと広がり続けている。上半身中心の簡単な振りにアレンジしたTikTok動画もあるほか、今後は「振り落とし動画」がアップされる可能性もあるそうだ。

ダンス好きがざわつく難度の高い「どえらいダンス」、先生の目から見て現時点でのAKB48の出来栄えは?

「70パーくらい(笑)。というのも、彼女たちにはまだまだ伸びしろがありますから。ダンス経験者じゃないとわからないかもしれませんが、このダンスはかなり練習しないとできない、積み重ねがないとたどり着けないもの。 

激しいダンスを売りにするものはよくありますが、意外と手振りだけの激しさが多いなか、『根も葉もRumor』はわけがちゃうんですよ。忙しい中、あの子らはめちゃくちゃ頑張ったんだということをぜひ知ってもらいたいです」 

©You, Be Cool!/KING RECORDS
約1 年半振りのリリースとなるAKB48 58thシングル『根も葉もRumor』は9月29日発売 ©You, Be Cool!/KING RECORDS
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  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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