【独占告白】安田純平 外務省“出国禁止の刑”で拷問の悪夢 | FRIDAYデジタル

【独占告白】安田純平 外務省“出国禁止の刑”で拷問の悪夢

旅券発給を拒否されたジャーナリストの独占インタビュー。紛争地での取材を「迷惑」と考える風潮に一石を投じる

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武装勢力が’16年5月に公開した画像内で着ていたのと、同じオレンジの服を見せる安田純平氏
武装勢力が’16年5月に公開した画像内で着ていたのと、同じオレンジの服を見せる安田純平氏

「寝ていると、シリアの武装勢力から拷問を受ける人々の声が聞こえてきます。『ギャー! ギャー!!』という悲惨な声です。ハッと目が覚め、自分が自宅にいることに気づいても不安は収まらない。武装勢力から解放されて徐々に体重も増え、体調も回復していました。こういった悪夢を見るようになったのは、外務省に旅券再発行を拒否されてからです」

こう話すのは、ジャーナリストの安田純平氏(45)だ。

安田氏は、シリアの武装勢力から3年4ヵ月にわたり拘束されパスポートを没収された。解放されたのは昨年10月のことだ。だが外務省は7月10日、同氏の旅券再発給申請を拒否すると宣告。「出国禁止の刑」と自身のツイッターに書き込んだ異常事態の内幕を、安田氏が明かす。

「旅券の再発給を申請したのは今年1月です。東京・有楽町のパスポートセンターに行くと、『旅券発給制限の対象となる旅行法13条1項1号に該当するかもしれない。新宿の都庁にある窓口で話を聞いてください』と言われた。数日後に都庁に行くと、個室に通されこう説明されました。『(解放時に強制退去された)トルコから入国を拒否されているので旅券発給を制限される可能性があります』と。ただ旅券申請の目的は家族での旅行です。トルコは関係ない。だから渡航先などの記載を求められ、『欧州やインドなどを家族で旅する』という内容で提出しました。しかし、1週間たっても2週間たっても申請が下りない。電話で問い合わせても『審査中です』という答えが返ってくるばかりでした」

法律拡大解釈の“一方的通知書”

事態が動いたのは4月に入ってからだ。

「外務省から直接電話が入り、呼び出しを受けたんです。すぐに訪問すると、男性2人が対応しました。そして『渡航計画を今、出してほしい』と求められたんです。旅券もない状態では、具体的なプランもありません。計画書を出す理由を聞いても、『審査で必要だから』と言うばかり。渡航先の国名や飛行機の便名、離発着時間、空港名まで書くように言われたので、私は仕方なくスマホで検索し計画書を提出しました」

その後、しばらく音沙汰はなかった。一方的な通知書を受け取ったのは7月のことだ。

「今度は都から『外務省から通知書が届いています』という連絡が入りました。受け取ると、以下のようなことが書かれていました。『トルコから入国禁止措置(5年間)を受けたので旅券は発給しない』と。トルコが入国拒否して、なぜ他の国へも旅行に行けなくなるのか理解できません。法律の拡大解釈ではないか。解放された他の国の人質が、旅券発給を拒否されたという話は聞いたことがない。おそらく外務省は、武装勢力に拘束され日本国民を騒がせた私の行為を“犯罪”とみなしたのではないでしょうか。ようやく長期の拘束から解放され新しいことにチャレンジしようと考えても、国が過去に引き戻そうとする。悪夢から抜け出せず暗澹たる気持ちなります」

ジャーナリストへの旅券発給拒否は、一個人の問題に収まらない。日本のメリットを損なうことになる、と安田氏は訴える。

「国は、危険を冒す紛争地取材をさせたくないのでしょう。しかし日本人が独自取材せず欧米のメディアに頼ることが、どれだけ危険なことかわかっているのでしょうか。03年のイラク戦争を思い出してください。日本はイラクに大量破壊兵器があるという米国の報道を鵜呑みにし、戦争を支持しました。しかし実際には大量破壊兵器などなかった。また中東の人が、欧米人と日本人を見る目はまったく違います。武装勢力に拘束時、欧米のジャーナリストは殴られるなどされましたが、私は彼らほどの仕打ちは受けませんでした。欧米はイスラム圏と長い衝突の歴史がありますが、日本にはそれはなかった。欧米とは違うかかわり方を目指すべきで、日本人が自ら取材することが必要だと思います」

旅券発給拒否について、外務省旅券課は「個別の案件については答えられない」という反応。安田氏は不服審査請求や訴訟も検討している。

冒頭の写真で見せた服の逆面。囚人服のように装わされていたが、実はどこにでも売っているようなTシャツだった
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安田純平氏が7月に外務省から受け取った旅券発給拒否の通知書
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安田純平氏は「解放時より体重は5㎏ほど増えたが精神的にはまったく安定してない」と語る
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  • 撮影鬼怒川 毅

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