密着インタビュー 西武の新4番 山川穂高のフルスイング | FRIDAYデジタル

密着インタビュー 西武の新4番 山川穂高のフルスイング

崖っぷちでフルスイング

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やまかわ・ほたか ’91年11月、沖縄県生まれ。高校では2年秋から4番に座ったが、甲子園出場経験はない。プロ通算成績は打率.272、39本塁打、97打点。身長176cm、体重108kg

「自分がレギュラーだとは思っていません。いつも『今日打たなかったら明日はない』という気持ちで、自分を追い込んで打席に入っています。常に崖っぷち。意識するのは持ち味であるフルスイングを、どんな状況でもすることです」

西武の主砲、山川穂高(26)が話す。

山川は昨季終盤から4番に定着し、78試合の出場ながら打率.298、23本塁打、61打点の成績を残した。今季もオープン戦を通じて、4番に座っている。

「シーズンが始まってこんな成績(オープン戦は打率1割台)じゃ、スタメンで使ってもらえないでしょう。でも3月21日の楽天戦の8回に、ベンチ裏で中村(剛也)(たけや)さんにかけてもらった一言で目が覚めました。『そうやって構えてたっけ?』と。今季はフォーム修正に悩み右ヒジが背中方向に入り過ぎていましたが、中村さんの言葉でオープン気味になっていたスタンスをスクエアに戻したんです。ようやく昨季のようにボールが見えるようになりました。もう心配ありません」

沖縄県出身の山川が、野球を始めたのは小学校4年生の時だ。


「中学校に入ると体重は100kgを超え、4番を任されるようになりました。所属していたリトルリーグの監督から受けたアドバイスは、いまだに忘れていません。『オマエはホームランバッターになれる。絶対に小さくまとまった打撃をするな』と。それ以来、フルスイングを意識しているんです。ただ一度だけ、本気で野球をやめようと思ったことがあります。高校(沖縄県立中部商)1年生の時です。新人は『はい』と『すいません』しかしゃべっていけないような、超体育会系の部活でした。もうイヤでイヤで、ほとんど登校拒否。11月に行われた県の新人大会を最後に退部しようと思っていたんですが、準決勝で人生初の本塁打を打ってしまって……。その感触で吹っ切れました。このまま野球を続け、4番としてフルスイングを続けようとね」

書道は八段の腕前

岩手県の富士大学から、’13年にドラフト2位で西武に入団。ファームでは、1年目から21本塁打を放ちホームラン王のタイトルを獲得し4番に座った。


「飛距離には自信がありました。西武の二軍球場は外野の奥にチームの寮があるんですが、窓ガラスは少なくとも5枚割った。停めてあったコーチの車に、打球を当ててしまったこともあります。ただ振り返ると、真剣味が足りなかった。二軍では常に4番に置いてもらっていたし、西武には三軍がないので成績が悪くても落ちることはありませんからね」

二軍では結果を残せても、一軍に定着できない。昨年はオープン戦から一軍に帯同したが、開幕後は打率1割台と低迷し5月に降格。7月に再び一軍から声がかかった際、見かねた潮崎哲也・二軍監督が山川に厳しい言葉をかける。

「オマエ必死でやってこいよ、今度こそは。これでダメなら、本当にクビだぞ」

山川は猛省した。

「入団して3年半、なんとなく野球をしていた自分を強烈に恥じました。二軍でいくら結果を出しても意味がない。もう後がないんだと、自分の置かれている状況を初めて認識し焦りを覚えたんです」

昨年7月8日、楽天戦の行われる仙台への新幹線の車中で、山川は目を閉じ同じ言葉を繰り返しつぶやいていた。「打つ、打つ、打つ、絶対打つ」と。

「ボクは精神力が弱い。一軍の打席に入る前は緊張して脚が震えるほどです。でも、これが最後のチャンス。あえて自分を極限まで追い込みました」

山川は0―2と2点リードされた8回に、2死一塁の場面で代打として打席に立つ。カウント3―1からの5球目。楽天のハーマンの直球をフルスイングすると打球は右中間スタンドに飛び込み、同点の2ラン本塁打となった。


「技術論じゃない。気持ちで打てたのが良かった。あれで勢いが出ましたね」

豪快な本塁打が注目される山川だが、意外に野球を離れての特技も多い。

「小学生の時には沖縄県内で唯一のリンクでアイススケートを習っていましたし、仲のいい友人のお姉さんにピアノを教えてもらったこともあります。楽譜は読めませんが、ベートーヴェンの『エリーゼのために』や久石譲さんの『Summer』などは弾けますよ。一番の特技は、母親の勧めで5歳から習っている書道かな。腕前は八段。求められれば、座右の銘にしている高校の野球部モットーを書きます(3~4枚目写真)。今でも気持ちが後ろ向きになった時、思い返して自分を引き締めているんです」

山川には目標がある。

「沖縄のスターになることです。沖縄県出身者で名を残した野手は、阪急などで活躍した石嶺和彦さん以来いないんですよ。のんびりしたイメージを払拭したい。大谷翔平や筒香嘉智のように、誰からも『エグいバッターだな』と認められるような打者になりたいです。そのための道のりは、まだまだ長い。今季のノルマは、一軍で4番に座り続けることです」

西武の新たな主砲は、「ゆくゆくは50本塁打を打ちます」と顔をほころばせた。

打席に立つ山川。ネクストバッターズサークルにいるのは元4番の中村だ。「よく体型や打撃フォームが似ていると言われます」

「ちゃんとした筆ならもっとうまく書けるのに」と書道八段の腕前を披露

座右の銘を筆ペンで。10分ほどかけて集中して書き上げた

スパイクに縫い込まれているのは、沖縄のブランド豚の名前「あぐー」。山川のあだ名だ。登場曲は沖縄の「オリオンビール」のテーマソング

本誌未掲載カット

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撮影:小松寛之

 

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