売れ残り服のタグを付け替え再販 注目の新事業「リネーム」って? | FRIDAYデジタル

売れ残り服のタグを付け替え再販 注目の新事業「リネーム」って?

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食料廃棄と並び、大きな社会問題となっているアパレル在庫の廃棄問題。個人で中古品を販売する「メルカリ」や「ラクマ」などフリマアプリの普及が進む中、今「リネーム」という新たなリユース事業が注目を集めている。

「リネーム」は、入荷した在庫服を元のブランド時の30~80%オフで再販し、“値段相応”ではなく”価格以上の品質”を謳う
「リネーム」は、入荷した在庫服を元のブランド時の30~80%オフで再販し、“値段相応”ではなく”価格以上の品質”を謳う

「アパレル廃棄という社会課題がきっかけで生まれた“服の新しい売り方”です」

そう答えるのは「リネーム」を運営するFINE代表の加藤ゆかりさんだ。

「アパレルメーカーから余った在庫を買い取り、そこについているブランドタグと社名が記載された洗濯表示のタグを『Rename(リネーム)』という名前のタグに付け替え、新しい価格をつけて販売しています。

百貨店やショッピングモールで新品を、アウトレットで訳あり商品や型落ちした商品を、フリマアプリやリサイクルショップで中古品を、という従来の買い方に加えて、もうひとつの“新しい買い方”として『リネーム』というカテゴリがあっても良いと思うんです」(FINE代表取締役・加藤ゆかり氏 以下同)

アパレルの買取・販売を行うFINEが新事業として「リネーム」を立ち上げたのは2016年こと。もともとは、CD、DVD、メディアソフトなどをはじめ、家具、家電、衣料品などさまざまな中古品の買取・販売を行っていた。

「取り扱う商材の幅を広げていく中で、在庫に対する課題の大きさが見えたのがアパレルでした。リセール(再販)の仕方によっては、まだまだ在庫品の多くを活かせるという可能性を感じたんです。それからはアパレルに的を絞って、メーカーから売れ残り商品を買い取り、50〜70%オフの価格で販売するアウトレット事業にシフトしました」

取引先が増えていく一方で、少しずつ在庫とリセールの問題点が浮かび上がってきた。

「買い取った服を格安で販売するとなると、どうしても“ブランドの安売り”感は否めない。実際に『ブランドの価値を下げるのなら、在庫があっても譲れません』というメーカーさんの声も多くて。そんな中、ある企業さんから『リセールをするなら、ブランドタグを外して欲しい』と言われたんです。でも、ブランドタグも洗濯表示タグもなければ、買った人たちはどこで作られた服なのか、どう手入れをすればいいのか分からず不安になりますよね。そうなると結局、訳あり商品として扱わなければならなくなり、結果、価格を下げざるを得なくなる」

在庫を再販してもらいたいけれど、ブランドイメージを下げるリスクは避けたい。多くのアパレルメーカーが抱える問題点を『Rename』と書いたタグに付け替えることで、解決へと導いた。

バリエーション豊富な服をブランド名というフィルターを通さず「自分の選び方」で楽しめ、”服本来の価値”を再発見する機会になるという
バリエーション豊富な服をブランド名というフィルターを通さず「自分の選び方」で楽しめ、”服本来の価値”を再発見する機会になるという

「リネーム」のいちばんの狙いは、廃棄される服の在庫を減らすこと。

「以前、イギリスを代表するブランド『バーバリー』が約42億円分の売れ残り商品を焼却処分したことが発覚し、大きな問題になりましたよね。アパレルに特化した某マーケティング会社によると、国内衣料の供給量が年間約28億着なのに対し、消費量が約13億着。つまり、約15億着が余剰になっているという数字が出ています。

間違いなく言えるのは、供給量が増えていく一方で消費量がそんなに変わっていないという現実です。食べ物と違い衣類は腐るものではないし、少し傷みがあったって、5年前のものだって着られますよね。なのに1、2年の販売シーズンを終えて売れなかったものはゴミと同じように捨てられてしまう。環境問題以前に、“捨てる”という行為そのものがもったいないと強く感じました」

取引先が増え「リネーム」が認知され始めたのは、立ち上げから1年くらい経ってからだった。『バーバリー』の一件をきっかけに、アパレル業界の廃棄問題に危機感を抱き、社会課題として捉える風潮が追い風になった。

「アパレル業界で当たり前のように行われている在庫廃棄ですが、『本当にそれでいいんだっけ?』と問われるようになってきたのが、ここ最近の大きな変化ではないでしょうか。環境にとってマイナスになることが問題視されるようになってきている世の中の流れを見ていると、私たちがやってきたことは間違っていなかったんだなと感じます」

そして「リネーム」の利点は、在庫廃棄を減らすことだけではなく、お客さんが服を選ぶときの“自由度”が高まることだという。

「以前、ヤフーのオークションストアでアウトレットの販売をしていたときに感じたのは、ブランドがあることによって、お客さんが限定されてしまうということ。ブランド名そのものに消費者の好みってあらわれますよね。つまり、ブランド名を伏せることで、今まで好みじゃないからとチェックしてくれていなかったお客様にも、気に入った服を見つけてもらえるかもしれない。

年齢を重ねるにつれ、若い世代向けのブランドの服ってなかなか手に取りづらいですよね。服装の年齢差がなくなってきている今、『リネーム』ならブランド名に縛られず、買い物の自由度が増すのではと」

昨年10月に、大丸梅田店で開催され大好評だった期間限定ショップ。同11月には、東急ハンズANNEX店とコラボで名古屋栄セントラルパークで開催された
昨年10月に、大丸梅田店で開催され大好評だった期間限定ショップ。同11月には、東急ハンズANNEX店とコラボで名古屋栄セントラルパークで開催された

環境問題が取り沙汰され、私たち消費者が企業背景を重視した買い方に変わってきている。その時代の流れに呼応するように、本格的に走り出した「リネーム」。目指すべき業界の姿としてさらなる展開を考えているという。

「『リネーム』によって、ブランドや企業の枠を外せないかなと考えています。例えば、A社の商品を、競合であるB社の店舗で扱うのは難しいけれど、タグを付け替えた『リネーム』であれば、競合の商品でも一緒にお店に並べることができるのではないか。そうしてアパレル業界全体で在庫を共有すれば、業界の在庫削減につながるのではないかという考えです。コーディネート提案として組み合わせている商品が、実は競合ブランド。そんな風に、企業が協力し合えたら面白いと思います。

社会貢献したいと思っても、何から始めればいいか分からない人って多いと思うんです。けれど、ものの選び方ひとつが、ちょっとした社会貢献になるんだということを『リネーム』を通じて伝えていけたらうれしいです」

「ブランドタグを付け替える」というごくシンプルなひと手間が、「似合うものは似合う、いい物はいい」と濁りのない目で服を選べる環境を作り、そこで買うことがアパレル廃棄削減という社会貢献につながる。消費者にとっても、社会にとってもメリットは大きいのではないだろうか。

加藤ゆかり FINE代表 愛知県出身。椙山女学園大学で臨床心理学を専攻。ハウスメーカーの営業職に就いた2年後、2008年に株式会社FINEを設立、取締役に就任。2013年7月より代表取締役CEOに就任する。

Rename(リネーム)の公式オンラインストアはコチラ https://www.rename.jp/shop/

  • 取材・文大森奈奈

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