新車のBMW最大1000台が雨ざらし&砂利で傷だらけのワケ | FRIDAYデジタル

新車のBMW最大1000台が雨ざらし&砂利で傷だらけのワケ

販売台数の競い合いが原因でモータープールが足りず、新車が粗悪な環境で放置される現実

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千葉県山武市の山中にBMWの新車が保管されている。地面は砂利だらけで車体に傷が付くこともザラだという
千葉県山武市の山中にBMWの新車が保管されている。地面は砂利だらけで車体に傷が付くこともザラだという

東側は太平洋に面し、西に進めば緑地や山々が連なる自然豊かな地、千葉県山武(さんむ)市。’19年3月、この市の山中に約635㎥の産業廃棄物を不法に投棄したとして、とある業者が行政処分を受けた。

その同じ市内の土地に、雨風に晒(さら)され、泥まみれになった大量の車が置き去りにされていた。産業廃棄物の不法投棄が繰り返されているのか、そう通行人に尋ねると、思わぬ答えが返ってきた。

「これは、BMWの新車ですよ――」

車体が動物のフンまみれに

山武市松尾町の山中に突如現れたこの場所は、BMW車両専用のモータープールだ。モータープールとは、海外から輸送されてきた新車を、売れるまで保管しておく場所。車両は千葉港からトレーラーで運び込まれ、販売店で購入が決まると、購入者の元に運び出されていく。

だがこのモータープールは、新車を保管しているとは思えないほど劣悪な環境にある。BMW車両の流通に関わる会社で働くA氏はこう嘆く。

「地面が石や砂利だらけのため、車両が移動するたびに『ガチャガチャ!』と嫌な音が鳴り、石が飛びはねます。車体が傷付いたり凹(へこ)んだりすることは日常茶飯事。雨が降ると水溜まりができて車両が水没し、錆(さ)びてしまうこともある。山の中なので、車体が鳥や獣のフンまみれになることまであります。傷付き汚れた車は、洗車機にかけペイントを施すことで何とか新車らしく見せています」

通常、自動車業界の人々が「モータープール」と言った場合、思い浮かべるのはこことはまったく異なる光景だ。過去にBMWと正規ディーラー契約を結んでいた販売店の社長はこう語る。

「モータープールと言ったら、コンクリートが打たれた平らな土地に白線が引かれ、その線に沿って整然と車両が並べられている場所ですよ。私がディーラーをやっていた頃に契約していたモータープールは、屋根付きの綺麗な立体駐車場だった。新車が傷付かないよう細心の注意を払うのが一番の仕事なのに、山の中で泥まみれにするなんて考えられません」

なぜ、BMWの新車がこうした粗悪な環境に放置されているのか。そこにはやむを得ない事情が存在すると前出の流通会社社員・A氏は語る。

「約10年前、BMWドイツ本社から日本法人に課される販売ノルマが急激に増加したんです。ベンツとの販売台数競争が激化したことが原因だと聞いています。

すると、売れもしないのに大量の新車が輸送されてくるようになった。当然ながらモータープールは次々と満車になり、保管場所が足りなくなりました。だから我々下請けの流通会社は仕方なく、この場所のように安くて広い土地を一時的に借りて新車を保管しているのです。

ここに野ざらしにされている新車は多いときで最大収容数の1000台に上ります。売れて出ていく車は日に50台ですが、港から運び込まれてくる車は日に200台超。単純計算で毎日150台ほど増えている。新車が溢(あふ)れれば、また新たな保管場所を見つけなければなりません」

BMW日本法人はこの状況を把握し、対策を講じているのか。1月下旬、本誌が質問状を送ったところ、「12月はBMWグループにおいて例年、販売台数が一番多い月になります。それゆえ、一時的に車両を保管しておりました」との回答があった。

モータープールでの保管環境を改善するためにも、まず行き過ぎた販売ノルマを是正すべきではないか。モータージャーナリストの森口将之氏はこう指摘する。

「’19年9月、BMWに公正取引委員会が入りました。その知らせを聞いて感じたのは、自動車業界全体として、販売台数だけで競い合うことに限界が来ているということです。欧州ではCO2排出量を基準にしたランキングも存在しています。販売台数だけでなく環境への負荷なども考慮した競い方をするほうが、今の世界の状況に合っているはずです」

空き地で雨ざらしにされた新車は、BMWによる販売方法の矛盾を象徴しているようだ。

|港区高輪にある『BMW Tokyo』の販売店。山武市のモータープールはこのディーラーと契約している
|港区高輪にある『BMW Tokyo』の販売店。山武市のモータープールはこのディーラーと契約している
本誌未掲載カット 新車のBMW最大1000台が空き地に雨ざらし、砂利で傷だらけのワケ
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『FRIDAYデジタル』2020年2月14日号より

  • 撮影結束武郎撮影蓮尾真司(港区高輪の本社)

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