1年ぶり登板 鷹・守護神サファテが告白「引退覚悟した348日」

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広島、西武、ソフトバンクと渡り歩いたサファテ。日本で通算234セーブをあげている

新型コロナウイルスの影響で日本国内はスポーツを含め各種イベントの自粛が続く中、プロ野球(NPB)は3月20日の開幕を見据え、無観客試合ながらもオープン戦を続けている。

さらに3月2日、Jリーグと合同記者会見を開き、両組織でタッグを組んで新型コロナウイルス対策連絡会議の設立を発表。翌3日には第1回会議を開催し、協議を行った。

最終的には9日に予定されている第2回会議での話し合いを受けた上で、NPBは独自にシーズン開幕の是非を決めることになるようだ。

まだ余談を許さない状況に変わりないが、今シーズンの開幕を誰よりも待ち侘び、完全復活を期す投手がいる。2017年にはNPB新記録の52セーブを記録するなど、ソフトバンクの絶対的守護神だったデニス・サファテ投手(38)だ。

2018年にシーズン途中で右股関節痛のため戦線離脱すると、そのまま緊急帰国し手術を受け、残りのシーズンを棒に振った。復帰を目指した昨シーズンも右股関節の状態が上がらず、オープン戦に1試合登板しただけ。6月に米国に戻りリハビリを続けてきた。

そんなサファテは、自ら志願して6年ぶりにキャンプ初日からチームに合流。だが彼の表情に悲壮感など微塵もなく、笑顔を見せながら精力的に調整を行っていた。今回3年ぶりにインタビューする機会を得て、質問をぶつけた。

まず、右股関節の状態について――。

「昨年は残念ながら完治していない状況でうまくいかなかったが、今年はすごくいい感じできている。

昨年は人々を失望させてしまい本当に心苦しく思っている。昨年は契約延長した1年目であり、手術から完全復帰を目指すべきシーズンだったのに、その準備ができていなかった。

実を言うと、昨シーズンの時点で自分のキャリアは終わったと感じていた。当時は満足に歩くこともできず、まるで90歳の老人になったような状態だった。

今は健康な身体を取り戻し、より強靱な状態で投げられるようになったと感じることができている。このままチームと一緒にチームの勝利に貢献したいと思っている。

とりあえず自分が現時点でどれだけやれるのかを確認するために、2月1日からのキャンプ参加を決めた。今はここからコンディションをさらに上げていけるように頑張っている。

今はケガをせず、(開幕に向け)準備をすることが最大の目標だ。ただケガをしないで済むなんて誰にも分からないし、(4月で)39歳になることを考えれば、あまり自分にプレッシャーをかけすぎないよう心がけている。昨年からずっと復帰を目指し、十分に取り組んできたからね」

「個人記録を気にするのは止めたんだ」

宮崎市内で行われた春季キャンプの様子。ゴムを使ったトレーニングで足腰を鍛える

サファテが発する言葉の端々から、今シーズンの体調の良さを窺い知ることができるだろう。それだけに昨年の悔しい思いを晴らす意味でも、3月20日のシーズン開幕を「自分の目標とする日」と表現し、そこに照準を合わせている。

「自分が目標にしている日こそ、シーズン開幕だ。今自分がすべきことこそ、その日を目指し準備を整えていくことだ。その間にどんな投球ができるかを気にしても仕方がない。とにかく3月20日までに自分としての準備ができるかだ。

それができれば嬉しいことだ。だがもし間に合わなかったとしても、そこから慌てずに考えるスマートさは持っているつもりだ。そこから改めて自分がやるべき事を確認しながらやっていくだけだ。

(開幕1軍入りは)自分には分からないし、気にしても仕方がない。それを決めるのは(監督の)クドウさんだ。自分ができることは、チームの一員になれる状態かどうかを見せることだけだ。

チームは自分に高額年俸を支払っているので、(開幕から)使ってくれるかもしれない。もしそうでなければ、また違ったアプローチで使ってもらえるように最善の努力を尽くしていくつもりだ。

ただ自分はこれまで日本で実績を積み重ね、残してきた成績が多くを語ってくれていると思う。繰り返すが(開幕1軍入りを)心配しても仕方がない。とにかく自分のことだけに集中するしかない」

サファテの離脱中、森唯斗投手が見事にクローザー役を務め、チームは日本一連覇を達成している。チーム内での彼の立ち位置は確実に変わってきている中、サファテの心境も大きく変化しているのだ。

2017年シーズン終了後に通算セーブ数を234セーブまで積み上げ、当時はアレックス・ラミレス選手に続く史上2人目の外国人選手の名球会入りに意欲を見せていたが、現在のサファテは個人記録へのこだわりは一切なくなっている。

「もう個人記録を気にするのは止めたんだ。54セーブを達成し、次なる目標は(名球会入り基準の)250セーブになった。でも54セーブ達成を喜んでいるチャンスもないまま、この2年間はそうした記録を考えることができない状況に置かれた。

もちろんそれが達成できればこれ程光栄なことはないし、自分自身としても素晴らしい功績だと思う。だがそれが達せできなかったとしても、自分が日本で成し遂げたキャリアが色褪せるものではないし、(250セーブは)1つの報償のようなものだ。

それ以上に自分が大切に考えているのは、コミュニティ(地域社会)に貢献するとともに、ホークスの若い選手たちの成長を手助けしていくことだ。それは、自分が引退するまで続けていきたいと思っている」

3月3日に行われたヤクルトとのオープン戦で、348日ぶりに実戦登板を果たしたサファテ。1回1安打無失点と無難な結果に終わった一方で、ストレートの最速は144kmに留まり、まだまだ本調子とはいえない。

それでも登板後は満面の笑みを浮かべ、自身のツイッターで今回の登板を「大きな一歩」と綴っている。サファテの復活劇が、いよいよ幕を開けようとしている。

193cmの長身から投げ下ろすストレートは威力十分。他にスライダー、チェンジアップ、カーブなどを投げる
最多セーブを3回獲得。外国人選手としては初となる正力松太郎賞も受賞している
来日して10年目。日本語も徐々に話せるようになりチームメイトとの会話も支障ない
  • 取材・文・撮影菊地慶剛

    1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂英雄投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始める。20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技を取材。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、近畿大学で教壇に立ちスポーツについて論じている。

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