『アンナチュラル』が2年前に予言していた「コロナの猛威」

2018年のドラマなのに…!

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2年前のドラマ『アンナチュラル』主演の石原さとみ

言わずもがな、であるけれど、コロナパニックが起きている現在。誰もが解決策の見えないウイルスたちと、毎日どこかで戦っている。マスクやトイレットペーパーを買い求める長蛇の列、ガスマスクを着用した職員による消毒作業。中国・武漢では病院に押しかける患者たち、情報番組の放送内容は軒並み同じ、すべてウイルスのことを扱う。もうこれはれっきとした有事だ。

そんな様子に、ぼんやりと既視感を覚えた。

「(あれ? この光景、何かのドラマで見た??)」

最近、どうも物忘れが多くなってきた。落ち気味の海馬を働かせて、思い出したのが2018年にTBS系列で放映された、石原さとみ主演のドラマ『アンナチュラル』だ。確か第一話でウイルスのことをテーマにしていた。急いでオンデマンドで視聴をすると、まるで2020年の日本を予期したような内容が放送されていたのである。

令和のパンデミック騒動を2年前に予測?

私が思い出した放送回は第一話『名前のない毒』。すでに最終話まで放送済みなので、まずはあらすじを書こう。

“三澄ミコト(石原さとみ)はUDIラボに勤務する、法医解剖医。このラボでは、国内で発見された不自然な死の原因を究明している。ある日、息子の突然死に不信感を覚えた両親が遺体を持ち込み、死因を調査してほしいと言う。当初は毒物死を疑うミコトたち。ただ、死亡した本人に海外渡航歴があり、コロナウイルスに感染していたことが判明する。”

放送を見直すと背すじがゾクッとした。ドラマ制作時、2年後の令和に時空を超えたのではないかと思うほど、今の日本が状態がしっかりと広がっている。

物語では当初、会社員男性がサウジアラビアの出張時にウイルスに感染。帰国後に社内や恋人、浮気相手に、そして社会に菌を振りまいたとクラスター扱いをした報道をされてしまう。本人は亡くなっているので、代わりに両親がマスコミに追いかけられる苦痛の日々が始まってしまう。今の日本ではクルーズ船での菌の蔓延、厚労省の初動ミスが原因のいくつかに挙げられている。でも、この事態は少しずつ変わる。いずれは個人が報道されることも懸念されるのだと思うと、本当に……怖い。

PCR検査法、濃厚接触などのワードが飛び交う緻密な取材

今回、日本でこの騒動が起こるまでパンデミックという言葉を、私はほぼ使ったことがなかった。と言うよりも、使う機会もないほど平和ボケしていたのかもしれない。言葉そのものも世の中には流布されていなかった。

ただ『アンナチュラル』では、今まさに情報番組やニュースで国民の合言葉になりつつあるワードが飛び交っている。報道時に様々な連想をさせてSNSのトレンドに上がった『濃厚接触』。死亡した会社員男性と、その恋人(山口紗弥加)がどれだけの性行為に及んだのかを聞くときなどに使われていた。それから『コロナウイルス』が判明した際に、ミコトがラボ内に検査ができる人間はいないかと、アナウンスを放送する。すると

「『PCR法』での検出なら出来ますけど」

と、手を挙げるスタッフ。奇しくもメジャーワードになってしまった『PCR法』が当たり前のようにセリフで使われている。2年前、このドラマを作るためにスタッフや、脚本家が濃密、緻密な取材を繰り返したのだろうと思うと舌を巻く。

石原さとみたちが放つ、戦慄が走る数々のセリフ

今、私たちは窮地とも言える状況に対面している。毎日押し寄せてくるのは現実的な数値ばかりだ。正直もう辟易している。でもこの第一話では、ウイルス騒動に関する数値や予測ではない、聞いておくべき言葉がセリフで登場する。そのいくつかを紹介しよう。

ミコトの同僚・東海林夕子(市川実日子)はウイルスにたどり着く以前に、こう言った。

「この世で一番恐ろしい毒って何か知っている?(中略)名前のない毒」

コロナは名前こそついているけれど、ワクチンは開発されていない。解決策が見えないから、国民総出で不安なのである。コロナは“見えない毒”=この世で一番恐ろしいものであることを、改めてこのセリフで認識する。

そして胸を打たれたのは、ミコトが病院長に浴びせたセリフだ。作品では、クラスターになっていたのが男性会社員ではなく、大学病院が原因だったことが判明する。病院内で起きた不祥事を即座にもみ消そうとする院長。そんな姿勢が許せないミコトは

「ウイルス漏れを隠すことは、名前のない毒をばらまく同じことです。死ななくていい人が大勢死んだ……せめてこの先は賢明なご判断を」

と、斬る。とても潔く、そして気持ちがいいシーンだった。

今、政府で何が行われているのかは誰も知らない。ひょっとしたら大きな真実は何か隠されているのかもしれないと、疑心と不安だけが日々募っている。でもひとつだけ間違いないのは、誰もがウイルス感染なんて望んでいない。その回避のために、全国民が政府の動向を常に監視している。その一億人の目を政府はごまかそうと……するのだろうか?

どうか、総理。見通しのいい情報経路を作ってもらって、どうか、賢明なご判断を。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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