日本代表DF 昌子源&植田直道「世界のストライカーを止める」
「日本が世界の強豪と戦う場合、まず守備的な戦法から入るべきでしょう。日本がスペインやドイツと対戦して、ボールポゼッション(保有率)を五分五分に保つことは不可能だと思います。恐らく8割方、相手にボールを持たれるでしょう。世界の強豪との対戦で、はたしてボールを保有できて、自分たちのサッカーができるのか。日本が『世界』と戦うときは、守備的に戦ったほうが絶対に強いと思います」
そう話すのは鹿島アントラーズのセンターバック(以下、CB)の昌子(しょうじ)源選手(25)。隣りは同じく鹿島のCB、植田直通選手(23)だ。6月14日にロシアW杯開幕を控えるなか、5月30日のガーナ戦の日本代表メンバーにも選出されている。”日本の最終ライン”を守る二人だ。そんな二人に世界のストライカーたちの止め方、そして日本がいかに世界の強豪たちと戦うべきかを聞いた。
二人のコンビが世界的にも注目されたのは、’16年のクラブワールドカップ決勝の鹿島対レアル・マドリード戦。最終的には2対4で敗れたものの、世界最強のFW陣の攻撃を何度も防ぎ、延長戦にもつれこむ大接戦を演じた。植田が話す。
「(レアルのFWの)ベンゼマ選手はやはり上手かったですね。ゴール前でのボールの受け方など、一見小さく見える一つ一つのプレーがすごく上手かった。その動き出しに合わせた(SBの)マルセロ選手のパスにも苦しめられました。ただ、どの選手もずば抜けて上手いとは思いませんでした。僕は身体の強さという部分では、誰に対しても負けないと思っていますし、その中でもヘディングには絶対的な自信がある。それは世界が相手でも通用したと思います。ただ、レアルとの間には、一見、小さく見えるいろいろな差があり、それが積み重なって、あの結果(2対4)につながったのだと思います」
昌子もこう話す。
「レアルの選手はパス、トラップなど、基礎的なプレー、一つ一つのレベルが全然違う。それが、あのチームのプレースピードにつながっている。ただ、僕は相手のストライカーを一対一で完全に止める必要は必ずしもないと思っています。シュートを打たれそうになっても、最低限、片方のコースを切って、シュートコースを限定する。ヘディングで負けても、体をぶつけておけば、ヘディングの威力が弱まるわけです。(レアルのクリスティアーノ)ロナウドにしても、(ポーランド代表の)レヴァンドフスキにしても、世界で誰も完璧に止められていないから、スーパースターなわけです。スーパースター相手に完全に勝つというのは不可能なんですよ。最後にキーパーが止められれば、僕は全然いいと思っています」
快活な兄貴分の昌子と、寡黙な弟分の植田。昌子が’16年10月に結婚するまでは、プライベートでも常に一緒に行動していたという。今回の取材中も昌子が「こいつ全然笑わないから、『植田が笑った』っていうだけでニュースになりますよ」と植田をイジり、それを聞いて植田が苦笑するなど、信頼関係はバツグンだ。二人は互いをこう評する。
「源君(昌子のこと)は、個のDF力がかなり高い。一対一でボールを奪い切るという力が圧倒的に優れていると思います。周りを動かす力というか、冷静なコーチングなど、僕にないものをたくさん持っています」(植田)
「ナオ(植田のこと)はファイター気質なので、(頭に血が上っているときは)僕がそのカバーをしないといけない(笑)。でも、相手がパワープレーを仕掛けてきたときなんかは、身体能力が高いナオは無類の強さを誇る。お互いに長所があり、短所もあります。短所をカバーし合える存在だと思いますし、コンビネーションは阿吽(あうん)の呼吸の域に達していると言っても大げさじゃないと思います」(昌子)
そんな二人は日本代表がいかに世界で戦うかという点についても意見が一致しているようだ。植田がこう話す。
「いまの時点で、日本が世界の強豪を相手にして、一方的に押し込むという展開は難しいでしょう。組織で守り、そこからカウンターを狙っていくという戦法のほうが現実的だと思います。いまの鹿島の戦い方もそうですが、相手にわざとボールを持たせて、回させたうえで、チャンスを狙う。0対0で試合を進めながら、カウンターを狙っていくというやり方をしていけば、もっと上にいけるんじゃないかと僕は思います」
ドイツ代表のCB、フンメルス&ボアテングのバイエルン・ミュンヘンコンビのように、クラブで練度を高めたこの二人が”世界”を止めるのではないか。
撮影:濱﨑慎治(全点)