フォロワー50万人『ゲイバーのもちぎさん』著者が伝えたかった事 | FRIDAYデジタル

フォロワー50万人『ゲイバーのもちぎさん』著者が伝えたかった事

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ドラマ『おっさんずラブ』や『きのう何食べた?』など、LGBTQ+の人々を描く作品が増えてきた昨今。しかし今年2月には、「噛まれたら同性愛者になる」という設定の映画『バイバイ・ヴァンプ』が「同性愛者に対する差別だ」と大きな批判を呼ぶ騒動も起こった。

ドラマや映画の影響で以前より身近に、よりオープンになったようにも思えるが、差別も偏見も決してなくなったわけではない。

そんななか、ゲイであることを公表し、Twitter上で自身の体験を漫画にして発信してきた人気作家・もちぎさんが、新作コミックエッセイ『ゲイバーのもちぎさん』を上梓した。

『ゲイバーのもちぎさん』1巻書影/作・もちぎ

もちぎさんがTwitterでの発信を始めたのは2018年の10月。

ゲイであること、男性相手に売春していたことを母親に知られ、高校卒業間近の18歳の時に家出してゲイ風俗の世界に飛び込む。という過去をつづった漫画「拝啓 母ちゃん ゲイに生まれてごめんなさい」がTwitter上で大きな反響を呼ぶ。

その後も自身の体験を漫画に描いて発信し続け、今やフォロワー数は50万人。ゲイ風俗での体験をまとめたコミックエッセイ『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。』や、毒親だった母親のエピソードや恩師との交流をつづったエッセイ『あたいと他(た)の愛』を発表するなど、精力的に活動を続けてきた。

新作『ゲイバーのもちぎさん』(「パルシィ」連載中)では、ゲイ風俗の世界から離れ、ゲイバーに勤務していた当時の日々を時にコミカルに、時にシリアスに描いている。

紆余曲折を経てゲイバー「ジーニアス」に勤務することになったもちぎさん。単行本1巻の描き下ろし長編では、ゲイバーに勤務することになったいきさつがより詳しく語られている/『ゲイバーのもちぎさん』1巻より

今回はもちぎさんにインタビューし、新作にこめた思いや、ゲイバーで心に残っているエピソード、濃ゆ~いお客様の話や気になる恋愛事情まで聞いてみた。

ぽっと出の不思議なゲイがいると注目され

――フォロワー50万人を超えるインフルエンサーとなったもちぎさんですが、新作『ゲイバーのもちぎさん』連載の経緯を教えてください

なにかぽっと出の不思議なゲイがいると注目され、『ゲイ風俗のもちぎさん』ではゲイだけの世界を、『あたいと他の愛』では自分の今までをーーと語ってきましたが、フォロワーさんが増えるにつれ、もっと広い世界を発信する土台が整ったと思いました。

ゲイバーでは、マイノリティをはじめ様々な人間に焦点が当たりますので、今までのお話よりも更にたくさんの人が共感できるような、そんなエッセイになっているかと思います。

――これまでの作品と比べると、本作はよりコミカルな場面や、明るいギャグが多いように感じます

そうですね。ただ単に「自分の店が面白かった」ってだけのことも発信したいなと思ったので、ギャグ多めです。

今まで個人売春にゲイ風俗と、個人主義の世界を経験してきたのですが、入店したゲイバーはカウンター内での結託がしっかりしている店でした。

その結託の中に入れた喜びというのもみんなに知って欲しかったんです。明るさやコミカルさは、そういうところから来ているのかと。あとは単に下ネタの思い出が多いからです。

もちぎさんの働いていたゲイバー「ジーニアス」では、店子(※スタッフ)に「みんなのお姉さん」や「盛り上げ担当」などそれぞれ役割があった。そんななか、もちぎさんの担当は「お下劣担当」/『ゲイバーのもちぎさん』1巻より

――非常に個性的な面々の集まっているゲイバー「ジーニアス」ですが、特に印象に残っている、忘れられないエピソードなどはありますか?

全員がモテそうなのに絶妙に彼氏いないのが最高のエピソードですね。ちなみにママだけ彼氏いました。店子(※スタッフ)は全滅です。

彼らのバックボーンというのも、これから連載の中で明らかにしていく予定です。

あとは自分が入店する前に起きていたイザコザなども描いて、ゲイ同士のコミュニティにも相入れないものがあることなど、発信していければと考えています。

――作中では、日本人ラブな外国人のお客様や、BL好きの女性ご一行など、従業員に負けず劣らずな濃ゆ~いお客様が来店されていますが、もちぎさん的に「あれは強烈だった」という面白いお客様のエピソードがあれば教えてください

お客様に関しては、泥酔する度におねしょする弁護士さんや、絶対に全裸になるシェフ、80歳の性欲おじいちゃんとかいろんな濃いゲイのお客様がいたんですが……たぶん詳細に言っちゃうとこの記事が配信停止になります。作中で楽しんでいただければと。

――お客様のなかで、恋愛対象として気になる方と出会ってしまったり、なんてことは……?

あります。がっつりあります。

――えっ、聞いておいてなんなんですが、意外です。『ゲイ風俗のもちぎさん』を読む限り、もちぎさんはお客様と恋愛関係にならないようプロフェッショナルに徹していた印象があったので

自分のなかでゲイ風俗は「キャラクターと時間を売る」仕事でした。多数のお客様がそれを買うなかで、誰か一人のものになってしまったら仕事に支障が出てしまう。

でもゲイバーは「お酒と楽しい空間を提供する」お仕事で、自分はそれをお手伝いするスタッフのひとり。誰を好きになっても自由だし、お客と恋愛してもいいのだ。でも彼氏はできませんでした。

「彼氏欲しい」が口癖のもちぎさんに、「諦めなさい」「あんた今まで彼氏できたことないんでしょ?」とダメージを与えたゲイバーのママ。ショックすぎて危険思想に達するもちぎさんだったが、こんなママの「愛ある説教」が好きだったという/『ゲイバーのもちぎさん』1巻より

ゲイ風俗だけの経験じゃ、きっとゲイの世界にもっと偏見を持っていた

――本作が連載中のアプリ「パルシィ」には、読者が「コメントを書く」という機能がありますよね。別の作家さんが「コメント機能が最初は怖かったけど、今は非常に励みになっている」と仰っていました。もちぎさんはどうですか?

ネットの匿名のコメントって、やっぱり匿名ゆえの心ない言葉もあったりしますが、本心を投げてくれているという点では、自分もすごく励みになります。

顔を明かしてないからこそ、いろんな人が自分のことを赤裸々に伝えられる。そこは素敵だと思います。でも自分はお酒飲まないと本心出ないっす。

――自身の体験や当時の出来事をエッセイ漫画として描くうえで、もちぎさんなりのポリシーというか、「ここは絶対に譲れない」というこだわりのようなものはありますか?

良いも悪いも発信すること。自分の失敗も描き続けることです。

馬鹿だと笑われても自戒になりますし、人の失敗をゆるせる社会を目指しているからです。でも自分の酔っ払って失敗したエピソードは、全部嘲笑ってもらえると助かります。

――「Twitterの投稿を始めたのは『おっさんずラブ』の影響が大きい」と別のインタビューで答えているのを拝見しました。昨年はドラマ『きのう何食べた?』が話題となりましたが、こういった世間の変化を、もちぎさん自身はどういう風に感じているのでしょうか。

いい時代になったなと思います。ドラマや風潮、社会制度などでも、選択肢がある社会は理想的だなと思っています。

ゲイの物語でも、異性愛者の物語でも、どっちでも自分の好きな方を視聴する――そういった考えや社会の流れが出来上がっていくといいなと思っています。

ゲイバーには様々な人が訪れる。常連さんもいればゲイの友達と仲の良い女の子もいるし、緊張しながら初めてゲイコミュニティに足を踏み入れる人も/『ゲイバーのもちぎさん』1巻より

――最後に、ゲイバー「ジーニアス」での日々はもちぎさんにどんな影響を与えましたか?

ゲイ風俗だけの経験じゃ、きっと自分はゲイの世界にもっと偏見を持っていました。

ゲイバーで働くことで、凝り固まったものが融解していったなと感じます。人間味のある商売に関わったことは、自分の血肉になりました。

いろいろ語りましたが、『ゲイバーのもちぎさん』は家の中でのんびりと訪れるゲイバー、というテイストで描いています。疲れた夜、寂しい夜、ホッとしたい夜、そんな時に読んで訪れてやってください。

あけすけな下ネタや、笑えるギャグも満載のはちゃめちゃゲイバーストーリーでありながら、ジェンダーについて、人生について考えさせられるシーンも多い本作。

前から気になっていたバーに今夜こそ行ってみるような、そんな気持ちでもちぎさんの描く世界に飛び込んでみてほしい。

 

 

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