フォーム解析で判明!ロッテ佐々木は170km投げられる | FRIDAYデジタル

フォーム解析で判明!ロッテ佐々木は170km投げられる

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実際の佐々木の投球フォームから、川村准教授が作成した連続解析。始動で身体がブレることなく肩が水平に移動。左足でしっかり地面をとらえられている
実際の佐々木の投球フォームから、川村准教授が作成した連続解析。始動で身体がブレることなく肩が水平に移動。左足でしっかり地面をとらえられている

「これまでにプロを中心に500人以上の投手を見てきましたが、間違いなくナンバー1の逸材です。近い将来、人類初の170kmの速球を投げる可能性が高い。エンゼルスの大谷翔平を超える、偉大な投手に成長すると思います」

こう話すのは、野球動作解析が専門で筑波大学野球部監督の川村卓准教授だ。川村氏が絶賛するのは、ロッテのゴールデンルーキー佐々木朗希(18)。各評論家が「モノが違う」と評し、春季キャンプのブルペンには他球団の投手が視察に来るほどだった。これまで2度じっくりと佐々木の投球を直に見た川村氏も、比較になる投手がいないほどの可能性を感じるという。

「昨年8月には筑波大の学生相手に投げてもらったんですが、これほどの投手とは予想していませんでした。大船渡高時代に163kmを出した球速もさることながら、ボールの回転数が突出していたんです。普通プロの投手の回転数は1分間換算だと2200~2300ですが、佐々木は2500~2600もある。

これはメジャーリーグのローテーション投手並の数字です。ボールがホップするようにイメージで、プロの打者でもヒットにするのは相当難しいでしょう。しかも本人は『これまで全力で投げたことがない』と言う。身体ができて全力で投げられるようになれば、太刀打ちできる打者はいなくなります」

まだ高校を卒業したばかりの佐々木が、なぜメジャー級の豪速球を投げられるのだろうか。川村准教授が作成した連続フォーム解析(掲載画像)から、理由をさぐる。

「たぐいまれなバランス感覚です。佐々木は190cmの長身で手足が長いため、身体のバランスをとりずらい。しかも始動で、左脚を大きく上げて投げます。普通なら身体を支える右足がブレ、上体が大きく後ろに傾いてしまう。しかし佐々木の場合はしっかり体重が左足に乗り、ブレることなく身体が『I』の字になっているんです(画像1)。よほど体幹が強いのでしょう。力みがなく、脱力できている。

通常、日本では高校生にコンパクトに投げるよう指導します。大船渡高の国保陽平監督は、アメリカの独立リーグでプレーし自由な指導を受けた経験がある。佐々木のダイナミックなフォームを許容したことで、体幹が鍛えられたのかもしれません」

4年目でローテーション入り

始動後の体重移動にも、非凡さが感じられるという。

「同じく193cmと長身の大谷の場合は、足を上げてから重心を落とし前方へ力を伝えていきます。上げた足の爪先が『L』の字を描くように、移動しているんです。佐々木の場合は、爪先が『逆ノ』の字を描くように移動している。つまり、よりスムーズに体重移動できています。肩は地面とほぼ水平のまま。股関節が相当柔らかいからできる、他には真似できない理想的なフォームです(画像2~5)」

課題もある。

「上半身です。下半身主導で投げるのはいいのですが、上半身に力強さが足りない。そのため遠心力に頼り、ボールを持つ右手が頭から離れています(画像5~6)。これでは腕が遠回りし、力が外に逃げてしまう。上半身に力強さが出れば、身体に巻きつくように腕を振れるようになるでしょう」

懸念されのが、必要以上の練習だ。佐々木はまだ身長が伸びていて、成長課程にある。成長途中での過度なトレーニングは、身体への負担が非常に大きい。

「一般的に高校生になれば、成長が止まります。しかし佐々木のような高身長の子は、成長が遅い。2mを超えるバレーボール選手などは、高校生になっても体毛が生えそろっていないケースもあります。成長途中では骨と骨の間が開いた状態なので、過度なトレーニングをすると靭帯を損傷する危険性が高いんです。

ダルビッシュ有は、高校時代に成長痛でほとんど練習しなかったことが功を奏しました。逆に大谷は身体ができる前にウエートトレーニングを行い、股関節でケガの癖ができてしまった。こうした教訓を踏まえ佐々木は、しばらく体幹トレーニング程度にとどめておくべきでしょう」

果たして佐々木は、どれほどの活躍ができるのだろう。

「現時点でも、プロで完封する実力は十分あります。ただ、まだ身体が成長途中。ムリをさせず一度登板したら数週間ほど間隔をあけ、疲労をとり体力を向上させることが大切です。ロッテの井口資仁監督は『1年目は50イニングくらい投げさせる』と話していますが、妥当な投球回数だと思います。

2年目、3年目と登板間隔を徐々に狭めていき、順当に行けば4~5年目にはローテーション入りするでしょう。身体が完全にできた24~25歳では、世界最速の170kmのストレートを投げている可能性が高い。投手タイトルを総ナメにしているかもしれません」

“令和の怪物”の実力は本物のようだ。世界最速170kmの速球で、プロの強打者をネジ伏せる勇姿を見るのが今から待ち遠しい。

  • 画像筑波大学・川村卓准教授

    '70年、北海道生まれ。小学校1年の時から野球を開始。札幌開成高3年夏に主将として甲子園に出場。筑波大学大学院を経て同校硬式野球部監督に就任。著書に『バッティングの科学』『監督・コーチ養成講座』など。

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