福島“居住禁止区域”を再び走る常磐線の決意

復興を目指す人々を追った

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運転再開を間近に控えるJR常磐線の双葉駅ホーム。双葉町は町のほぼ全域が帰還困難区域に指定されている

3月14日、福島第一原発事故に伴い営業を停止していたJR常磐線の3駅(双葉駅、大野駅、夜ノ森(よのもり)駅)が営業を再開する。だが、これら3駅の周辺は、「帰還困難区域」に指定されており、最短でも2022年まで居住禁止だ。住むことができない町に、電車が走る――。

常磐線全線開通に先立つ3月4日、双葉駅に隣接する場所に、双葉町役場コミュニティーセンターが開所した。双葉町役場総務課・橋本靖治氏は、こう話す。

「震災から9年経って、ようやくスタートできる。やっと双葉町で仕事ができる、という思いです。居住不可ですので、私たち役場の人間も、毎日区域外から通勤します。人員は各種証明証発行など一般業務を行う3名に加え、個人線量計貸し出し業務専従の2名。

線量計貸し出しは365日休みなく行うので、土日も2名体制で出勤します。双葉駅周辺は〝特定復興再生拠点区域〟として避難指示が解除されますが、町ではこのセンター以外には水道も電気も通っていません。ここでトイレが使えるだけでも、住民の皆さんに安心して一時帰宅してもらえるようになるのでは、と思います」

再開する双葉駅の駅舎は新設され、駅前も整備されているが、ロータリーを囲む建物は、商店を含め半壊のまま。帰還困難区域内の3駅は無人駅となる予定だ。

街中に人影はないが、常磐線に沿うように走る国道6号線は、夕方になれば毎日渋滞する。福島第一原発の廃炉処理など一連の業務に従事する人々が行き交うからだ。再開する駅のひとつ、夜ノ森駅前で美容室「ミスト」を営むエステティシャンの佐々木千代子さんは言う。

「3年前に夜ノ森駅西側が避難指示解除になってこの店を開店しました。地元に戻ってきたお年寄りのために介護脱毛などを手がけていたのですが、今では仕事の後の癒やしになる、と通ってくれる工事関係の男性の予約でいっぱいです。

夜ノ森は、線路の西側は通常の町ですが、東側は帰還困難区域に指定されてしまいました。今でも線路の向こうはゴーストタウンのまま。避難指示解除が実現しても誰も戻ってこないのではと思います。ただ、私は戻ってきてくれたお年寄りを綺麗にしてあげたいんです」

常磐線の再開で佐々木さんのような人が一人でも増えてくれること。それが復興への更なる一歩なのだろう。

3月14日の再開を前に試験運転を行う常磐線の車両。浪江―富岡間の開通に伴い仙台―上野・品川間で特急「ひたち」の運転も始まる
福島第一原発周辺に今も山積みの除染廃棄物。双葉町・大熊町には中間貯蔵施設がある
常磐線開通までJRの代行バスが走っている国道6号線。道の各所に線量計が立てられている
仙台方面からの上り常磐線が折り返していた浪江駅。入り口には「全線開通」の看板が
3月4日の双葉町役場コミュニティーセンター連絡所の開所に向けて準備をする双葉町の橋本氏
双葉駅からほど近い、町内の消防団詰め所。シャッターがめくれた中を覗くと、壁にかけた消防服が残されていた
JR常磐線 運転再開区間/東日本大震災から9年 福島“居住禁止区域”に走るJR常磐線ルポ

『FRIDAY』2020年3月20日号より

  • 撮影濱﨑慎治

Photo Gallary8

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