「アメリカファースト」で東京五輪中止?「秘密通達」のウラ側
国際オリンピック委員会が中止を決められる最終期限は5月末だが……
3月3日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が「7月24日から開催予定の東京五輪成功に向けて今後も全力を尽くしていく」と声明を出したウラで、衝撃の情報が駆け巡っていた。
「アメリカ政府とつながりのある一部の航空会社とホテルチェーンに『東京五輪のキャンセル』について、極秘で通達があったのです。新型コロナウイルスを取り巻く状況が劇的に改善されない限り、東京五輪はキャンセルされる。延期はない。アメリカ政府が日本人の入国拒否を発表。その後、IOCが東京五輪の中止を発表する――と。五輪が中止になれば、選手と観客の移送と宿泊を担う両業界が受けるダメージは大きい。いまから備えておけ、ということでしょう」(在米ジャーナリスト・伊吹太歩氏)
なぜ、アメリカ政府が開催中止に言及できるのか。伊吹氏は「五輪は完全にアメリカファーストだから」と言う。
「米テレビ局『NBCユニバーサル』は’22年から’32年まで77億ドル(約8050億円)で独占放映契約を結んでおり、これがIOCの収益の半分を占めている。NBC、つまりアメリカの言いなりにならざるを得ないのです。過去には9月に開催されたこともあるのに、東京五輪が酷暑の7月スタートで決められていたのも、NBCが秋にアメリカンフットボールの試合を放送する予定だから。NBCの親会社でケーブルテレビ大手の『コムキャスト』は東京五輪の広告枠の9割、12億5000万ドル(約1308億円)を販売済みですが、同社のロバーツCEOはこう言っています。『保険をかけているので、五輪が中止になってもわれわれに損失は出ない』と」(前出・伊吹氏)
1年延期した場合、来年8月にアメリカで開催される『世界陸上』とバッティングしてしまう。今年、無観客で開催するにしても、世界中の選手を一都市に集めて大丈夫なのか、という疑問が残る。選手の派遣を拒否する国が出てくる可能性も否定できない。『オリンピック秘史 120年の覇権と利権』の著者で、パシフィック大学教養学部政治学科のジュールズ・ボイコフ学科長が嘆く。
「NBC以外でも五輪にかかわる米企業はキャンセルに備えて保険に入っていますが、日本は違う。東京五輪が中止となれば1兆3500億円にものぼる開催費用がムダになってしまうのです」
アメリカの代表選手が来日できること。それが開催の絶対条件だが、アメリカ国内で感染者数が急増している現状を考えると厳しいと言わざるを得ない。
「感染拡大中のウイルスの動きを予測するのは難しい。IOCが中止を決められるリミットは開催日の60日前。つまり5月末ですが、それまでに感染爆発が収まるとは思えない」(ネブラスカ大学公衆衛生学部長のアリ・カーン氏)
開催決定から7年かけて準備された会場、宿泊施設、警備計画――何より、東京五輪に心血を注いだ選手が報われない。
アメリカが日本人の入国を拒否したとき、それが悲劇の始まりとなる。
『FRIDAY』2020年3月27日・4月3日号より
- 写真:freshfocus/アフロ(バッハ会長) 時事通信社(相撲) Getty Images