『恋つづ』女性共感のツボは七瀬の「ピン跳ねヘア」だった | FRIDAYデジタル

『恋つづ』女性共感のツボは七瀬の「ピン跳ねヘア」だった

いよいよ最終回!

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いよいよ最終回を迎える『恋つづ』でナースを演じる上白石萌音
いよいよ最終回を迎える『恋つづ』でナースを演じる上白石萌音

毎週、放送ごとにSNSをざわつかせていた『恋はつづくよどこまでも(以下、恋つづ略)』(TBS系)が、3月17日(火)に最終回を迎える。このドラマ、原作コミックそのままでベッタベタの内容でスタート。どの層にウケるのか? が見えないまま、ドキドキしつつ、放送を見守っていた。でもそんな私ごときの心配はなんのその、世の人気を手中にして高視聴率を記録している。

そこにはやはり佐藤健の力は大きい。需要と供給をよーく理解しているのか、世の女性が求める“ドSキャラ”を見事に演じきっていた。しかもドM視聴者の期待を全く裏切っていない。日本アカデミー賞に輝く俳優が、よく少女漫画の世界に飛び込んできてくれたとプロ精神に感服した。

でも『恋つづ』の魅力はそれだけではない。ひたむきに天堂への想いを貫く演技で、女性の共感を呼んだヒロインの上白石萌音の力ももちろん存在する。二人の共同作業による結果だった。では上白石萌音のどの部分に、私たちを引き付けるパワーがあったのかという、推察をどうぞ。

クイッと、上向き毛先のひとつしばりが及ぼすモノ

最終回直前、ということで内容をさらっと復習しておこう。

“佐倉七瀬(上白石萌音)は高校の修学旅行で、医師の天堂浬(佐藤健)に一目惚れ。彼の彼女になろうと、看護師試験を突破して、天堂と同じ病院に勤務することに。院内では“魔王”と呼ばれるほどの“ドS”天堂と七瀬は、紆余曲折を経て見事、恋人同士に。このまま幸せな生活が続くと思いきや、七瀬に看護留学のチャンスが訪れる。七瀬が選ぶのは恋か? 仕事か?”

ここからディスり記事が始まるわけではないことを先に宣言しておく。

私が感じたこの作品の魅力は、上白石萌音に尽きる。1時間の放送時間内に醸し出される田舎出身の垢抜けない、でも憎めない看護師のビジュアル。この世の女性の90%以上は田舎出身、懐かしさを憶えないわけがない。そして男性目線では、ちょうどよく庇護欲をそそる。もしこのヒロインが広瀬すずだったら、またドラマの人気は変わっていたと思う。

さらにチェックしていたのは、勤務中の七瀬の髪型。看護師という仕事柄、ひとつしばりにしているのだが、毛先が……跳ねているのである。それもかなり勢いよく、クイッと上向きに。

初回放送でその毛先が目に飛び込んでくると、既視感があることに気づく。なんだろう? 誰の髪型とオーバーラップしているのだろう?? そう思い出していると、小学校や中学校のクラスメイトの髪型が浮かんできた。皆一様に毛量が多く、剛毛、くせ毛という髪の毛のため、しばっただけで毛先が上に跳ね上がっていた。ちなみに肌は色黒でもあった。そんな大昔の光景と七瀬が一致したのである。ここまで期待して読んでくださったみなさまには、具体例を提示できなくて申し訳ない。

「(……ひょっとして、イモっぽさを出すための演出なのかな)」

そう考えて、最終回まで毛先を見守ったけれど、下向きになることはなかった。元気に毛先は飛び跳ねていた。でも間違いなく、あの毛先は“勇者らしさ”を演出している。最終回、良ければ毛先をチラ見して欲しい。

三歩下がったと見せかけて恋の手綱を掴む

それから女性が七瀬を応援したくなったのは、最近のドラマでは珍しく彼氏に敬語を使っていた慎ましさではないだろうか。仕事の上司ということもあるけれど、七瀬にとって天堂は何も知らない10代で出会ってしまった王子様。他の男は全く知らず、一心不乱に天堂だけに夢中になっているのは女性の立場からすると理想的。「彼氏がいない」「結婚できない」と騒ぐ原因の発端は、選択肢が多いからだ。他の男を知らなければ真っ直ぐに誰かに進めるのかもしれないと思うと、誰か脳内を初期化して欲しくなる。

昨今の恋人同士の関係性で、彼女が彼氏に敬語を使っているのは稀有だ。自分のパターンで考えてみても、恋人に対して嫌味を含んだ物言いをしたいときに敬語を使う。でも七瀬にとって天堂は完全に神格化しているのだから、敬語を使って当たり前。名作アニメ『サザエさん』(フジテレビ系)のフネが、波平に使う敬語と同じレベル感だ。

そんな風に愛する人に夢中でいられる七瀬に、女性はうらやましさを感じている。最近、何かと世の中が世知辛い。いつも誰かに気遣いをしながら息をしているような環境下、自分が絶対的に崇拝して、愛する存在がいるのは心が安定する。そういう理想像を七瀬は手中にしている。何も知らないような顔をしながら、ちゃんと恋の手綱は操縦しているのである。近著のエッセイで、男女が同じ立場にあることは幸せの選択肢であると書いた私だが、たまには天堂七瀬のような関係性に憧れてしまう。そんな火曜の夜もある。さあ、最終回だ。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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