『テセウスの船』人気を裏で引っ張ったのは、やっぱり「あの子役」 | FRIDAYデジタル

『テセウスの船』人気を裏で引っ張ったのは、やっぱり「あの子役」

“いがぐり坊主くん”の愛され度は殿堂入りに!

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『テセウスの船』で主役の田村心を演じる竹内涼真
『テセウスの船』で主役の田村心を演じる竹内涼真

3月22日(日)に最終回放送を迎える『テセウスの船』(TBS系)。昨今のストーリー展開で人気の、複雑な犯人探しが効いている。結局、佐野家を地獄へと陥れようとしている犯人は誰なのか? 3連休の最終日にその答えが判明する。ただ私がこのドラマで惹かれてしまったのは、犯人探しではなかった。もうなんと言っても、大人役者たちを食い荒らしていた、子役たちのパワーだ。

作品を制作していく上で欠かせないコンテンツ=子役。特にこの作品では、未知の能力が随所に現れていたと思う。最終回を前にしてそのパワーを振り返りたい。

将来を見据えた? ちびっ子たちの演技力に平伏

放送回数が10回を超えると、内容がだいぶ混線してきた『テセウスの船』。私視点でざっくり! とあらすじを振り返りたい。

“田村心(竹内涼真)は父・佐野文吾(鈴木亮平)が犯人となった『音臼小無差別殺人事件』によって、不遇な人生を送っていた。ただ父が無実かもしれないという妻からの情報を頼りに、真実へ近づこうとすると、何度かタイムスリップを繰り返すようになる。そこで見えてきた事件の真犯人に、今、近づこうとしている。”

時代の舞台は平成元年。青酸カリを使用した、おぞましい大量殺人事件の犯人は加藤(木村)みきお。なんと小学5年生。自分の計画に手を貸してくれる大人の共犯者はいるけれど、自らが主犯だと名乗っている。

そのみきおを演じているのが、柴崎楓雅(しばざき・ふうが)くん。まだパソコン普及が乏しく、ワープロで文章を打ってフロッピーディスクに落とす時代が舞台。その彼が大量殺人を目論み、さらに約30年後にはの姉と結婚しているから怖い。その狂気に満ちた、サイコパスの役を演じているのが楓雅くんである。

「正義の味方は、僕ひとりだけでいい。まだ計画は終わっていない。邪魔者は消えてもらう」

こんなことを小学生が言うのである。終盤に来て正体が見え始めたので、登場回数やセリフは増えているが、それまでは全く登場のないことも。それでも出てくるだけで大人に恐怖感を与えるのだから、楓雅くんのずば抜けた演技力の深さを証明している。ついでに顔がちょうど良く可愛い。将来のイケメンぶりが見えると、私のレーダーが言っています。

しかしこの事件。平成9年に起きた『神戸連続児童殺傷事件』を思い出す。中学生が殺人犯という衝撃をいまだに忘れることはない。この事件の断片的な記憶が、みきおの行動も不思議はないと語っている気がする。

“いがぐり坊主くん”の愛され度は殿堂入りに

佐野家には三人の子どもがいる。長女の慎吾(番家天嵩)、それから母親の胎内にいるだ。この佐野姉弟の演技も大人の心をぐいぐいとくすぐってくる。

鈴役の白鳥玉季(しらとり・たまき)ちゃんは、10歳。『凪のお暇』(TBS系・2019年)で凪に懐き、吉田羊の子ども役だったあの子である。これが絶妙に“普通っぽさ”を醸し出している。それからいかにも子どもらしい素早い動作、明るさも画面でアピールされている。女というものは、幼少期からマウンティングに絡まれて生きている。特にそれがませた子役の世界であれば、その様子は顕著に現れてしまう。たまに見ているとゲップが出そうなほど、張り合っているのが伝わってくる。

そんな様子を微塵も感じさせず、どこにでもいそうな小学5年生を演じる玉季ちゃん。女の波に揉まれず、スクスクと育ってほしい。

そして慎吾役の番家天嵩(ばんか・てんた)くん。子役キャスティングには必須の、丸坊主頭で出演中。今回この作品にはたくさんの子役が顔を見せているけれど、私が選んだ絶対的エースは彼である。おそらく今回は小1くらいの役を演じているが、単純に『元気いっぱい!』というだけではないのだ。セリフも子ども特有の適当そうなことを言っているように聞こえるけれど、実はナチュラル演技の天才じゃないかと予想している。

イチ視聴者に、そんなことを思わせてしまうほど、あのプリミティブ(風?)な笑顔と、触り心地の良さそうな頭に秘められた魅力は大きい。今、募集がなくなってしまった15代目のマルコメCMキャラクターをぜひ。

と、ここまで紹介をしてきた三人の可能性たち。最終回はちょっと気にしてくれたら、これ幸い。

昔、同じ業界で働く先輩が

「子役というのは残酷だ。だってチヤホヤされる人生のピークを幼少期に終えて、あとの人生がどうなるかわからないのだから」

そう言っていて、言われた数年前は納得した。確かに子役で活躍した後、没落した人生を送る人はいる。でも最近の子役たちを見ていると、そういう雰囲気は漂わない。むしろ成長後のブランディングも考えて、子役を将来に向けたインターンシップにしていそうだ。でもそれくらいの頭の回転数がないと、今回紹介した三人のような演技をするのは難しいんだろうな、と……だんだんこちらの回転数が鈍ってきたところで、本日終了。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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