広島高2女子殺人・鹿嶋学被告に「無期懲役」死刑願った父の慟哭

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16年前に広島県廿日市市で起こった女子高生殺害事件で、殺人罪などに問われていた鹿嶋学被告(36)の裁判員裁判判決が3月18日、広島地裁で開かれ、杉本正則裁判長は求刑通りの無期懲役を言い渡した。

3月3日の初公判後、被害者・北口聡美さんの父親がカバンに入れていたという遺影を見せたくれた

2004年10月、当時高校2年生だった北口聡美さん(17=当時)が廿日市市の民家で刺殺され、聡美さんの祖母(72=当時)もナイフで刺され重傷を負った本事件は長らく、犯人逮捕に至らず未解決だった。

ところが13年半後の2018年4月、山口県内で暴行事件を起こして検挙された鹿嶋被告の指紋とDNA型が、廿日市市の事件現場に残されたものと同一であることが判明し、逮捕に至ったのだった。

聡美さんの両親はこれまでの審理と同様、判決言い渡しを法廷で聞いており、閉廷後父親が取材に応じ、「主文を聞いた時点で……娘に報告しました。思いの中では、極刑を望んでいただけに……」と、声を詰まらせながらコメント。

13年半もの間、犯人逮捕に至らず、未解決事件の様相をおびるなかで「『家で殺されるくらいじゃけえ、相当悪い女だろう』という思いを持たれた方もおられただろうし、私も、そういうことを実際、聞きました。でも娘には落ち度はなく、一方的に被害にあったと判決で言ってくれて……汚名を晴らせたと、被害者遺族でありながら、いわれのない中傷により苦悩した過去も明かした。

「人数がどうだとか関係ない。実際1人でも命が奪われたら大変なこと。その辺を考えた判決を、これからそうなってほしい。そして広島にはまだ多くの未解決事件があります。残された家族の『いつ解決するだろう』という願いは私と多分同じだと思いますので、風化しない、させないことが大切だと思います」(聡美さんの父)

3月3日の初公判で「間違っていません」と起訴事実を全て認めていた鹿嶋被告。判決のこの日も同じ黒い長袖Tシャツに黒いジャージで法廷に現れた。新型コロナウイルス対策により、マスクをつけており、表情はうかがえない。“職場の機械音で遠くなった”という右耳に補聴器をつけ、証言台の前で言い渡しを聞いた。

広島地裁は起訴事実をおおむね事実と認定したうえで聡美さんに対する犯行を「凶器となった折りたたみナイフ自体の殺傷能力は高くないが、被害者の負った傷に照らせば、ためらうことなく多数回、非常に強い力で突き刺した。

また致命傷ではないが、聡美さんの首を切り裂くなど残忍で相当に悪質な態様。自宅でくつろいでいたところを突然襲われた苦痛や恐怖は想像に絶する。何の落ち度もない被害者を殺害した」と厳しく指摘した。

瀕死の重傷を負った祖母に対する殺人未遂に対しても「(殺人でなく)殺人未遂にとどまったのは、搬送された病院に心臓血管外科医がおり直ちに手術ができたからであり、偶然の事情によるところが大きい」と、搬送された病院の状況によっては殺人となっていた可能性にも言及した。

「当時、被告人は会社から適切な扱いを受けていないと感じていたものの、真面目に勤務していた。だが、犯行前日に初めて寝坊をしてしまったことから自暴自棄になり、悪事への抵抗がなくなり強姦を起こそうと考えた。

被告人は情緒面の発達が乏しく、物事を段階的に捉えがちで、その段数が少ない。寝坊したことで直ちに会社を辞め、被告人にとっては『明日世界が滅びると知った状況』ともいえる状況と捉え、自暴自棄になった。

強姦が成功しなかったことの怒りを聡美さんに向け、八つ当たりした」(広島地裁)

3月4日の審理では、鹿嶋被告の父親が証人出廷し、被害者遺族に対する思いをこう述べている。

「私も同じ娘を持つ親として大変申し訳なく、手紙を託そうとしましたが(ご遺族に)受け取ってもらえませんでした。それ以外は、近所の神社に、お参りに行く毎日です……。大変な事件を起こし……同じ娘を持つ親として……とても……悲しく思っております」

一方で、息子に対する複雑な気持ちものぞかせた。遺族が死刑を望んでいることについて問われ、たどたどしく答えている。

「大きな事件のことを思うと、私たちも胸が痛みますが……親としては……言葉が出ません」

鹿嶋被告は、判決言い渡し後も入廷時と全く変わらぬ落ち着いた様子で、手錠と腰縄をつけられ、退廷した。法廷で複雑な心情をのぞかせた鹿嶋被告の父は、この判決をどう受け止めているだろうか。

  • 取材・文・写真高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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