コロナ地獄で不動産市場がこれから直面する「大変革」

新型コロナ問題は、消費者の「住まい」への意識に大変革を起こすきっかけになる?

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写真:長田洋平/アフロ

新型コロナで景気後退入り。不動産はどうなる?

新型コロナウイルスの騒動がいつ収束を見せるのか、まったく先が見えない状況だ。経済への影響は「リーマンショック級」どころか「リーマンショック以上」ともいわれ、不動産価格にも大きな影響を与えることは避けられそうにない。

とはいえ、マイナスの面ばかりとは限らないと指摘するのは、不動産事業プロデューサーでオラガ総研の牧野知弘氏だ。

「コロナをきっかけに、都市部に住む人々の働き方や住まいに対する意識が変わり、不動産マーケットに変革が起きるのではないでしょうか」(牧野氏)

人々の住まいは集中と拡散を繰り返してきた

これまでも日本人の住まいに対する意識は、何度かの転換点を迎えてきた。

戦後は、人々が地方から東京や大阪といった大都市に押し寄せた結果、賃貸住宅が不足。この問題を解消するために、都市郊外で急速に住宅開発が進められ、郊外のベッドタウンに多くの人が住むことになった。

「夫は郊外のマイホームから都心に通勤し、専業主婦の妻は家を守る」というのが当時の一般的な生活スタイルとなった。

90年代に入ると、景気低迷などの要因を受けて夫婦共働き世帯が急増。そうなると、通勤時間が長い郊外での暮らしは不都合になる。そこで大都市に次々と分譲マンションが建てられるようになり、子育て世代の多くが「職住近接」を求めて都心に住み始めた。これにより、都心部への一極集中が加速することになる。

ところがここに来て、新型コロナウイルスの感染が拡大。感染防止策として、テレワークやリモートワークと称して在宅勤務を導入する企業が相次いだ。勤労者にとって生活の場である自宅が、職場も兼ねるようになったのだ。

「今回のことでテレワークを経験した事務系ワーカーのなかには、『自分の仕事は在宅でも十分にできる』『わざわざ満員電車を我慢して通勤するのはバカらしい』と改めて気づかされた人も多いのではないでしょうか」(前述の牧野氏)

やってみれば意外とできるテレワーク

たとえばIT大手のGMOグループでは、この1月からすべての従業員を在宅で勤務させている。その後、3月半ばに行ったアンケートでは、「効率性が向上した」「通勤ストレスが低下した」「自由時間が増えた」などの声が上がったという。

もちろんテレワークにスムーズに移行できている企業ばかりではない。「子どもがいて仕事に集中できない」「ネットワークが遅い」などのストレス、他の従業員とのコミュニケーションの難しさ、セキュリティの懸念など、課題はたくさんある。テレワークは生産性が低いという意見も根強い。

とはいえ、企業として従業員を守るために、テレワークを導入せざるを得ない状況に置かれていることも確かだ。

試行錯誤するうちに、やがて新しい働き方にも慣れるのではないか。テレワーク中心の働き方をする人が増えれば、住まいに対する認識も変わる。

「普段はテレワークで仕事をして、たまに出勤するというやり方でも、十分に仕事を回せる職種は多いはずです。そうなると、7、8千万円も出して、わざわざ都心のタワーマンションに住む必要はない。その半額程度で買える、郊外の広々とした住宅を選ぶ人も増えるのではと思います」(牧野氏)

写真:Natsuki Sakai/アフロ

「働き方」「住まい方」に対する意識改革が進む

実際に、テレワークを経験したことで住まいへの意識が変化したという調査もある。リクルート住まいカンパニーが2月時点で発表した調査では、テレワークをきっかけに「引っ越しを実施した」「引っ越しを検討し始めている」「引っ越してみたい」と考えた人の割合は53%に上るという。

「テレワークが広がれば、働き方・住まい方はもっと多様化するでしょう。たとえば、普段は地方に住んで、自然環境を満喫した生活をしながら、週1回くらいは東京のオフィスに出勤するというのもありでしょう。

仕事だって一つに絞らず、地元で副業を探してダブルワークするのもいい。そんなデュアルライフ、トリプルライフを実行する人が増えてくると予測します」(牧野氏)

自宅が仕事場になるという前提に立つと、住宅にも工夫が必要だ。共働きならば夫婦それぞれに、ある程度の広さの書斎や仕事用スペースを確保することが必須となるだろう。仕事用の資料やパソコン置き場も必要だ。マンションなら、共用部のワークスペースを充実させることが求められる。

不動産・住宅関係の企業にとっては、「快適なテレワーク環境を整えた住宅」を提案することが、ビジネスチャンスとなるだろう。

もとより政府は「働き方改革」の一環で、テレワークや副業・兼業を推進してきた。それが図らずも、新型コロナの影響で一気に加速するかもしれない。そうなった時、不動産・住宅市場も変わらざるを得ない。

この2020年が、不動産・住宅市場にとって大きな転換点となるのではないだろうか。

 

◆牧野知弘(まきの ともひろ)

東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、1989年に三井不動産入社。不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任し、J-REIT市場に上場。2009年、オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任する。著書に『空き家問題』(祥伝社新書)、『2020年マンション大崩壊』(文春新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)などがある。

◆取材・文:平 行男(たいら ゆきお)

フリーライター。社内報などの企画制作会社を経て2005年からフリーランスに。企業の広報・販促コンテンツの制作を支援するほか、各種メディアでビジネス、IT、マネー分野の記事を執筆している。ブックライティングも多数。

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