下馬評は最悪でも今年のヤクルトに期待できる5つの理由!

今年のヤクルトは、ひょっとして、ひょっとするぞ!

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ヤクルトファンの希望の象徴、村上宗隆。20歳の誕生日に掲げた目標も頼もしいぞ

以下のコラムは3月21日の練習試合前に書いた原稿である。実はこの日の試合で「最重要事案」が発生するのだが、このときはまだそれを知る由もない。それについては、文末で触れたい。まずは、以下のコラムを読んでほしい――。

本来ならば待望の球春到来に胸躍らせながら、神宮球場のライトスタンドに座っているはずだった。春の日の日差しを浴びながら、ほろ酔い気分でビールを呑んでいるはずだった。すべての野球ファンにとって、何とももどかしく、苛立たしい日々が続いている。

昨年、圧倒的な最下位に沈んだチームだって年が明ければすべての借金はチャラになる。野球の神様はすべてのチームにあまねく徳政令を公布してくれるのだ。2019年の東京ヤクルトスワローズは負けに負けた。屈辱の16連敗を経験し、「どうやって勝つんだっけ?」と言いたくなるような、勝利の美酒を忘れた日々が続いた。

しかし、どんな惨状であったにせよ、希望とともに春は訪れる。今年のヤクルトにも希望の光、期待の萌芽はそこかしこにあふれている。人はそれを「妄想」というのかもしれない。しかし、虚勢でもはったりでもなく、今年のヤクルトは大いに期待できるのだ。希望の光は、そこここにあふれている。その理由を挙げれば枚挙にいとまがないが、ここではあえて5つに絞って説明していきたい。

①懸案のセンターラインの強化

強いチームはセンターラインが安定しているものだ。昨年のヤクルトはショートを固定できず、記録に残らないミスによる失点が相次いだ。しかし、「守り勝つ野球」を標榜する高津臣吾新監督の意に添うように、球団は早々にゴールドグラブ賞を獲得した現役メジャーリーガーのエスコバーを獲得。さらに、正捕手・中村悠平のさらなる成長を促すべく、二度のゴールデングラブ賞に輝く、嶋基宏を獲得。若手捕手陣の指南役としての役割も兼ねるベテランの加入で懸案のセンターライン強化を実現したのだ。

②パリコレの充実

ヤクルトファンにはおなじみの「パリコレ」。ご存じない方のために説明すると、「パ・リーグからの移籍選手が大活躍する法則」のことで、現有勢力を見ても近藤一樹(前オリックス)、山田大樹(前ソフトバンク)、太田賢吾(前日本ハム)、坂口智隆(前オリックス)ら、そうそうたる顔ぶれが並んでいる。そして、今年は前述の嶋基宏(前楽天)に加え、期待の新星・長谷川宙輝(前ソフトバンク)、今野龍太(前楽天)が新加入。輝かしいパリコレの系譜に、新たに花を添えることになるのは間違いない。

③課題の投手陣の再建

長年にわたって、「ヤクルトの課題は投手陣」と言われ続けてきた。しかし、今年はついに課題克服の一年として長く語り継がれるシーズンとなるだろう。投手出身監督としては1987~1989年の関根潤三以来となる高津臣吾が満を持して監督に就任。さらに、高津監督同様「メジャーを知る男」として斎藤隆を投手コーチに招聘した。もちろん、またまたここでも名前が挙がる嶋基宏が加入したことも大きい。オープン戦ではベテラン・石川雅規や、覚醒が待たれる期待の左腕・高橋奎二の新たな魅力を引き出した。

④球界の至宝、村上宗隆、奥川恭伸の覚醒

さらにヤクルトには「球界の至宝」と言って差し支えない未来のスーパースターがいる。昨年の大ブレイクが記憶に新しい村上宗隆。そして、今シーズンのナンバーワンルーキー・奥川恭伸だ。いつの世も時代を変革するのは若い力だ。プロ2年目で36本塁打をたたき出した天性のスラッガーはまだまだ成長途上にある。一方の甲子園のスター投手は無限のポテンシャルに満ちている。この両雄がそろって結果を残すのはいつの日だろうか? 長い目で見たいと思う一方、「今年すぐに覚醒するのでは?」という期待もある。いずれにしても、一球団ではなく日本のプロ野球全体のスターの成長過程をつぶさに見守ることができる僥倖を心から喜びたい。

⑤高津臣吾新監督就任!

そして、今年のヤクルトに期待できる最大の要因が高津新監督の就任だ。これまでヤクルト球団には4人の優勝監督が存在する。1978年、チーム創設初優勝を飾ったのは広岡達朗だった。そして、1990年代に黄金時代を築き、4度のリーグ制覇、三度の日本一にチームを導いたのは野村克也だった。また、21世紀最初の美酒を味わったのは2001年の若松勉。そして、記憶に新しい2015年は真中満が宙を舞った。

この4人のうち、広岡野村は外部から招聘された監督だった。一方、若松、真中は球団生え抜きの監督だった。この若松真中には共通点がある。それが、ともに「二軍監督から一軍監督に昇格した優勝監督」という点だ。そう、高津監督もまた二軍監督で研鑽を積み、まさに満を持しての一軍登板となったのである。ヤクルト生え抜き優勝監督の系譜。その正統継承者こそ、高津臣吾監督なのだ。

高津監督は就任会見において、「キーパーソンは僕です」と言った。先日、高津監督にインタビューした際にその真意を問うと、「僕が頑張らなければチームは変わらない」と決然と口にした。その心意気、最高ではないか! 頼れる指揮官の手腕に期待したい。

……いかがだろうか? 「今年のヤクルトに期待できる理由」ならば、まだまだいくらでも挙げることができる。世間には「バレンティンの抜けた穴は大きい」という声もあるという。でも、それは「若きスターの台頭の前兆」であり、同時に「外野守備力強化」という一面もあることを忘れてはいけない。あるいは、「いつまで経っても、石川雅規頼みの投手陣」という揶揄もあるという。しかし、それは「不動の大黒柱は今年も健在」であり、「オレたちにはいつも石川さんがいる」という心のお守りでもあるのだ。そう、すべての物ごとは表裏一体なのだ。表があれば裏がある。逆もまた真なり。

コロナ禍により、暗いムードが蔓延している今だからこそ、野球というスポーツの持つ意義も、野球選手の社会的役割も、例年以上に大きくなることだろう。野球の力は偉大だ。野球選手の力は強大だ。少しでもこの閉塞状況を打破するべく、今年はより一層の全力プレーを期待しつつ、我々ファンもまた全力で応援をしたい。本当の球春の到来が心から待ち遠しい。冬来たりなば、春遠からじ――。

さて、このコラムがみなさんの目に触れている本日は3月26日だ。ご承知の通り、冒頭で紹介した21日の阪神との練習試合において、僕たちの嶋基宏は死球により右手を骨折。しばらくの間の戦線離脱を余儀なくされた。

「嶋基宏が加入したから今年は大丈夫だ」というこのコラムの根拠が大きく揺らいだと思う読者の方も多いことだろう。しかし、僕の考えは微塵も揺るがない。死球を受けてベンチ裏に引っ込む際に、嶋は「ウォーッ!」と叫んだ。やるせない思いを抱えた無念の咆哮をナインも、そして視聴者もハッキリと見た。

ここに、「それでも大丈夫だ」の根拠がある。嶋の無念が、より強固なナインの結束を生むのは間違いないからだ。ヤクルトナインは、「嶋さんが戻るまで頑張ろう」との思いでペナント序盤を戦い抜く。そして、満を持して嶋が戻ってきたときには、「よし、これで全員がそろった!」とさらに勢いが加速する。災い転じて福となす。今はただ、そんな思いで嶋の復帰を待ちたい。

  • 長谷川晶一

    1970年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経てノンフィクションライターに。転身後、野球を中心とした著作を発表している。主な著書に『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『幸運な男 伊藤智仁 悲運のエースの幸福な人生』(インプレス)など多数。文春オンライン内の文春野球ではヤクルト担当として2年連続優勝を飾る。Number Webでコラム「ツバメの観察日記」連載中。

  • 写真時事通信社

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