コロナで一転中止 Bリーグに振り回される“選手たちの本音” | FRIDAYデジタル

コロナで一転中止 Bリーグに振り回される“選手たちの本音”

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コート周辺の観客席を設置せず行われた3月15日の京都対名古屋戦
コート周辺の観客席を設置せず行われた3月15日の京都対名古屋戦

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2月28日から3月11日まで計99試合の延期を行っていたBリーグが、無観客試合というかたちで当初の予定通り3月14日からリーグを再開した。

だが14日の川崎ブレイブサンダース対レバンガ北海道戦で、北海道の3選手に発熱が確認され中止になり、15日も千葉ジェッツ対宇都宮ブレックス戦で、レフリーの1人に発熱が見られたため中止に追い込まれる事態になった。

さらに滋賀レイクスターズ対アルバルク東京戦では、滋賀の外国籍選手3人が健康上の不安を理由に出場を控えたい希望を伝え、チームも了承した上で試合会場に姿を見せなかった。

こうした状況を受けBリーグは、当初は4月1日まで計131試合を無観客試合で実施する予定だったものを一端保留。各クラブの実行委員や一般社団法人日本バスケットボール選手会(以下選手会)と協議を行い、次節以降の開催の是非を決定すると方針転換を打ち出し、17日になって無観客試合で実施予定だったすべての試合を中止にすると発表した。

周囲から見れば、今回のBリーグの対応は明らかにちぐはぐ感を拭い去ることはできない。どうしてこんな事態になってしまったのか、現場取材を元に検証してみたい――。

今回14日に大阪エヴェッサ対島根スサノオマジック戦、15日に京都ハンナリーズ対名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦を取材した。そこで実感したのは、出場を取りやめた滋賀の3選手に限らず、選手たちが一様に、無観客試合といえども試合を再開することに不安を感じていたということだ。

無観客試合としてシーズンが再開されることが発表されてから、多くの選手たちから「再開が決まったのだから精一杯プレーする」という声が上がっていたのは紛れもない事実だ。だが改めて無観客試合を戦った上で「不安はないか」と尋ねると、大阪の副キャプテン長谷川智也選手は、以下のように本音を明かした。

「やはり(不安は)ありますね。コンタクトするスポーツなので,マスクをしてプレーなんてできないですし……。最低限の手洗いだとか、うがい、アルコール消毒はやっていましたけど、それでもやっぱり怖いというのが正直な気持ちですよね。

何といったらいいのか、今までこんなことがなかったので……。僕は普通な感じでやっている方だと思いますけど、でも早く帰りたいなという気持ちもあります」

京都でキャプテンを務める内海慎吾選手も、無観客試合といえでも選手を含めた会場に集まる人々の安全性について疑義を呈している。

「各選手がそれぞれ大きな不安を抱えていると思います。うちのフロントスタッフから無観客試合をやりますという説明があり、まず無観客試合がどういうことか分からなかったことと、コロナウイルス感染症に対して無観客試合だけがその対応策かどうかもその時点では分かりませんでした。

昨日(14日)試合をしてみて感じたのは、観客の皆さんがアリーナにいなかったという以外で大きな変わりはなかったです。ただ果たして僕らが試合をして安全なのか、もちろんこの試合をするにあたり観客の皆さんの安全は確保されていると思いますけど、このコートに集まった選手たち、オフィシャルの皆さん、記者の皆さんの安全が確保された上での開催だったのか……。僕はそうではないと思います」

3月11日におきた“ある出来事”が転機

試合後、誰もいない観客席に向かって手を振る長谷川智也(右から2人目)ら大阪の選手たち
試合後、誰もいない観客席に向かって手を振る長谷川智也(右から2人目)ら大阪の選手たち

今回のシーズン再開にあたりBリーグは選手会とも協議を重ねての判断だった。つまり選手たちもある程度納得していたはずだ。だが選手たちの証言からも明らかなように、Bリーグ側は選手たちの不安を取り除くことができていなかった。

それは、シーズン再開を発表した3月11日以降に起こった“ある出来事”のためだと考える選手がいる。選手会初代会長を務め、現在も監事として選手会に携わる岡田優介選手だ。

「(滋賀の外国籍選手が)やらないというのを、突然試合中に聞いたくらいです。経緯とかを含め(選手会の)みんなでやりとりして、今一度各チームで情報を集めてそれをまとめてリーグの方に提出しました。

1週間前にも選手会の幹部ミーティングをしているんです。その時はまだこんな状況じゃなかったというか、各チームともに過剰に心配している選手はいませんでした。あるチームはドクターを呼んでセミナーを開き、(新型コロナウイルスについての)危険性を説明してことで落ち着いたりと、大きなトラブルはなかったんです。

ただその後NBAの選手に(感染者が)出たことであそこから潮目が変わったというか、急に(選手たちに)当事者意識が出たというか。特にNBA経験のある外国人選手もいるし、身近なところで感染者が出て(シーズンが)中断になってしまったというのが大きいと思います」

前述通りBリーグがシーズン再開を発表したのが3月11日。そしてその翌日になって、NBAが所属選手に新型コロナウイルスの陽性反応が出たことで、シーズンを即時中断することを発表した。これが外国籍選手を中心に、一気に不安を募らせる要因になってしまったようだ。

Bリーグの大河正明チェアマンはシーズンを再開する理由として、5月に決勝を行うという日程の中でこれ以上延期して試合を入れ込むことが不可能であることを説明している。それは結果的に選手の心情や健康面が考慮されず、リーグの都合が優先されていたように思われる。

現在は世界各地のスポーツ界が緊急事態に陥っている。それはBリーグも例外ではない。NBAのシーズン中断が発表された時点でリーグとして再度協議していれば、このような事態は免れることができたのではないだろうか。結果的に今回の対応はリーグの信用を損ねかねないし、スポンサー企業などへの印象も悪くなってしまう。

京都の浜口炎ヘッドコーチは2日間の無観客試合を戦う終えた上で、以下のような意見を明かしてくれた。

「試合をやると決めた次の日に、WHOがパンデミック宣言をしたり、NBA選手が感染したりと、状況というのは刻々と変わるもの。一度決めても、いろいろなことを勇気も持って変えていくことが大切だと思います。

NBAのコミッショナーも1時間ごとにプランが変わるといっているくらいなので、画面越しに人々を元気にするということも大切です。でも選手、スタッフを含めて感染者を出さないというのが元々のスタートだったので、アウェイゲームで移動してくるチームがあることを考えれば、これでいいのかというのを考えるべきだとは思います」

大阪の安井直樹代表取締役、京都の高田典彦社長からも話を聞かせてもらい、無観客試合を実施していくことは、無収入のまま経費がかかるだけで、確実にチームの体力を奪っているという実情を知ることができた。

リーグ発足4年目のBリーグが、難しい局面を迎え厳しい状況にあるのは理解できる。だからこそ今はリーグ、チーム、選手が一枚岩になって困難を打開していくべきではないだろうか。

無観客でも安全面を疑問視する京都の内海慎吾選手
無観客でも安全面を疑問視する京都の内海慎吾選手
オーロラビジョンも使用せず最低限の演出だった3月14日の大阪対島根戦
オーロラビジョンも使用せず最低限の演出だった3月14日の大阪対島根戦
  • 取材・文・撮影菊地慶剛

    1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂英雄投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始める。20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技を取材。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、近畿大学で教壇に立ちスポーツについて論じている。

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