「拉致被害者を見捨てるな!」松本京子さんの実兄が官邸対応を批判 | FRIDAYデジタル

「拉致被害者を見捨てるな!」松本京子さんの実兄が官邸対応を批判

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京子さんが拉致されたとみられる、鳥取・米子の海岸に佇む母・三江さんと兄の孟さん

「もう帰るのか!」

4月22日、「拉致被害者家族会」や「救う会」、拉致議連などが開いた『政府に今年中の全被害者救出を再度求める国民大集会』に安倍晋三首相が出席。

「即時帰国に向け北朝鮮への働き掛けを一層強化する」「私が司令塔となって全力で取り組む」と勇ましく言い放った。

そして、そそくさと会場を後にしようとした首相に浴びせられたのが――冒頭のヤジだった。蓮池薫さんの兄・透さんはこうツイートしている。「司令塔? この期に及んで。どうやって?」。

拉致被害者家族たちのホンネだろう。

安倍首相が第2次政権を成立させたのは’12年12月。「この内閣で拉致問題を解決する」と豪語したが、拉致問題は1ミリも進展していない。’14年5月、日朝協議によって「ストックホルム合意」がなされ、北朝鮮側は再調査を約束したが、かねてから「安倍さんは拉致問題を利用して総理大臣になった」と公言している蓮池透さんはこう打ち明けている。

「安倍首相は圧力をかけることも、検証もせず、拉致被害者家族に『再調査なんかしても意味がない』とまで言った」

安倍政権による、あからさまな「拉致利用」が露見したのは今年3月。予算委員会で佐川宣寿・前国税庁長官が証人喚問される直前のことだ。


「突如、『北朝鮮が拉致被害者の田中実さんと金田龍光さんが時期未定ながら北に入国し、平壌(ピョンヤン)で暮らしていると認めた』という情報がリークされたのです。実は北朝鮮が田中さんと金田さんの入国を日本政府に伝えたのはストックホルム合意の直前。こんな重要な情報を安倍政権は4年近くも隠し、政権のピンチにあわせて公開したのです。目くらましになるとでも思ったのか……」(全国紙社会部記者)

’77年10月に「編み物教室へ行く」と言い残して、行方不明になった拉致被害者・松本京子さん(当時29歳)。「彼女の生存情報も、政府はつかんでいながら隠蔽(いんぺい)しているフシがある」と、この記者は言うのである。松本京子さんの実兄・孟(はじめ)さんが打ち明ける。


「京子が政府に拉致認定された’06年だったと記憶していますが、公安当局の方が私を訪ねてきまして、『彼女の筆跡がわかるものはないか』と聞いてきたのです。編み物教室で採寸したときに使った紙や、友人らに年賀状を出す際に使った住所録が残っていたので、その方に渡しました」

孟さんが「進展があったのですか?」と聞くも担当者は何も答えず、バッグに書類をしまうと立ち去り、「それきり、何の音沙汰もなかった」という。

だが、しかし――孟さんが渡した書類は筆跡鑑定に回されていた。


「北朝鮮と取引のある業者から、松本京子さんが書いたとされる注文書や領収書が提供されたようです。もし筆跡が一致すれば、彼女の生存が裏付けられ、どこで働いていたかも判明する。結果は85%の一致だったそうです」(公安関係者)

松本京子さんの地元である米子弁に近いイントネーションで「キョウコ」と名乗る通訳が、北朝鮮の企業で働いているという証言を本誌は複数の貿易業者や脱北者から得ており、公安当局も同様の情報を把握していた。筆跡鑑定に使った書類はこれら貿易業者から得たものと見られる。本誌は’14年、取材の過程で偶然、公安関係者から筆跡鑑定の結果を得たが、今年2月に「拉致問題を考える国民の集い」で会った際に本誌が伝えるまで、孟さんはこの事実を知らなかった。

「85%だったんですか……。一昨年、講演会でお会いした地村保志さんから『京子さんは生きていますよ。平壌ではなく、地方で働いています。元気ですよ』と告げられました。官邸や外務省もこの話を把握しているのでしょうか? 拉致利用なんて、あってはいけないこと。拉致被害者の家族には何でも話してほしい。拉致問題の解決が最重要課題だと言うなら、安倍総理は動くのが遅すぎます」

拉致被害者家族たちの高齢化が進み、残された時間はけっして長くない。国が拉致被害者を見捨てるようなことは、絶対にあってはならないのだ。

’06年、政府に拉致認定されてから12年が経過。母の三江さんは’12年に89歳で亡くなり、孟さんも70を過ぎた

勤務先の縫製工場でリーダー的な存在だった京子さん。脱北者は「北でも編み物をしていた」と証言

北朝鮮で暮らしていることが明らかになった特定失踪者で神戸市の元ラーメン店店員、金田さん

’78年に失踪した田中さんも北への入国が確認された。金田さんは同じ養護施設で育った親友だった

 

撮影:朝井 豊(1枚目写真)

写真: 時事通信社

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