死の灰の中で血を吐く人も…ドラマ『チェルノブイリ』ここがスゴイ

今、見るべき海外ドラマ『ナチ・ハンターズ』『ザ・モーニングショー』『ザ・ボーイズ』『セックス・エデュケーション』『チェルノブイリ』

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ドラマ『チェルノブイリ 』 ©2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO®

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならないこの頃。気持ち的にも不安定になりがちな時期だからこそ、“娯楽”に触れる時間を大切にしたい。ということで、本稿では今すぐ観られる配信系の海外ドラマーー中でも地上波ではなかなか観られない「攻めた」作品を選出した。

いずれも見ごたえは十二分のドラマたち。超一級品が放つ「表現の力」にしばし、身をゆだねていただきたい。

『チェルノブイリ』

(Amazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で視聴可能)

ドラマ『チェルノブイリ 』 ©2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO®

1986年に発生した、チェルノブイリ原子力発電所事故。34年前の出来事は「世界で最悪の原子力事故」と言われている通り、甚大な被害をもたらした。そんなタブーともいえる題材に、果敢に挑んだ社会派ドラマが『チェルノブイリ』だ。

本作は、事故から2年後、調査にあたった科学者がカセットテープに“真実”を告白するシーンから始まる。

彼は「ウソの代償とは? 真実を見誤ることじゃない。本当に危険なのは、ウソを聞きすぎて真実を完全に見失うこと。その時どうするか? 真実を知ることを諦め、物語で妥協するしかない」という意味深な言葉を残し、自ら命を絶ってしまう――。いったい彼は何を見て、何を知ったというのか?

そして物語は事故の直後、爆発が起きた瞬間へとなだれ込んでいく。あらかじめ断っておくが、『チェルノブイリ』は観るのに相当な覚悟を要するドラマだ。クオリティが高いのはもちろんだが、描写に全くの妥協がない。

一例を挙げれば、放射能を浴びて顔や全身がただれ、吐血する人、防護服なしで汚染水の中で作業させられる人、何も知らずに死の灰のなかで遊ぶ子どもたちなど、その後の運命を知っている私たちからすると戦慄が走るシーンが連続するのだ。

さらに、「パニックを避けるため」という名目で町を封鎖し、住民の移動を禁止しようとする権力者、現場の人間が危機を訴えても「線量計の不良」と取り合わない上層部、放射線熱傷に対する処置を知らない医療従事者、爆発を見に来て被ばくする野次馬など、人々のエゴや保身、無知を容赦なく突き付けてくる。

奇しくも今、2011年に発生した東日本大震災、それに伴う福島第一原子力発電所事故を描いた日本映画『Fukushima 50』(20年)が、2週連続で興行収入第1位を獲得。多くの人々にとって心を深くえぐられた出来事だけに、賛否両論を巻き起こしている。

このタイミングだからこそ、『ゲーム・オブ・スローンズ』(8シーズン)や『TRUE DETECTIVE』(3シーズン)を手掛けた放送局HBOが本気で作りあげた問題作を観てみるのも、1つの選択肢ではないだろうか。

ドラマ『チェルノブイリ 』 ©2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO®

『ナチ・ハンターズ』

(Amazon Prime Videoにて独占配信中

アカデミー賞に輝く名優アル・パチーノが、ナチスの残党狩りを行う!? 強烈なバイオレンスと息もつかせぬサスペンスが、牙をむく一作。

『ナチ・ハンターズ』 Amazon Prime Videoにて独占配信中

舞台は1970年代のアメリカ。祖母をナチスの残党に殺害されたユダヤ人の青年が、様々な技能を持ったメンバーが揃った秘密結社「ハンターズ」に加入。政府の高官やおもちゃ屋、NASAの職員などあらゆる場所に入り込んだナチスの残党を1人ずつあぶり出し、正義を執行していく。

視聴制限が入るほど過激な描写が畳みかけ、ユダヤ人の捕虜を駒にして戦わせる「人間チェス」や拷問の数々、女子どもが容赦なく射殺されるなど、蛮行の数々が描かれていく。極悪非道な面々に、「毒を以て毒を制す」と言わんばかりにハンターズが制裁を加えていくさまは一周回って「痛快」だ。

『ナチ・ハンターズ』 Amazon Prime Videoにて独占配信中

それだけでなく、戦争の悲惨さや愚かさ、何より「何も終わっていない」と痛感させられるストーリーが心に重く訴えかける。ただのセンセーショナルな作品に終わらず、重厚なドラマの要素も含んでいるのだ。

『イングロリアス・バスターズ』(09年)や『ジャンゴ 繋がれざる者』(12年)など、クエンティン・タランティーノ監督作品が好きな方にはしっかりハマりそうなドラマかもしれない。

『ザ・モーニングショー』

(Apple TV+で配信中)

不倫とセクハラ。ある種、日本でもホットな社会問題だろう。アメリカのニュース番組を舞台に、このテーマに向き合ったスリリングなサスペンスが、この『ザ・モーニングショー』だ。

朝の報道番組の顔だった男性アナウンサーが、女性たちから訴えられて突然失脚。彼と15年もの間コンビを組んできた女性アナウンサーも、一夜にして窮地に立たされる。「合意の上だった。ワインスタインとは違う」と実在のセクハラ・プロデューサーを盛り込むなど時事性を強烈に意識したセリフに象徴されるように、同時代性が色濃く反映された一作だ。

様々な思惑が錯綜する報道番組の裏側も緊迫感たっぷりに描かれ、「現代に報道は必要なのか?」といった鋭い問いも内包。エンタメ性と社会性が完璧な配分で構成されており、本年度の日本アカデミー賞を席巻した『新聞記者』(19年)にも通じる作品といえるだろう。

『フレンズ』のジェニファー・アニストン、オスカー女優リース・ウィザースプーン、『フォックスキャッチャー』(14年)などの演技派スティーブ・カレル、監督は映画『ディープ・インパクト』(98年)やドラマ『ER緊急救命室』のミミ・レダーと豪華なメンバーが集結。出演陣の鬼気迫る「ブチ切れ演技」にもぜひ注目していただきたい。

『ザ・ボーイズ』

(Amazon Prime Videoにて独占配信中

ヒーロー映画隆盛のいま、強烈なアンチテーゼをまとった作品が誕生した。欲望にまみれたスーパーヒーローと一般市民の戦いを描いた『ザ・ボーイズ』だ。

『ザ・ボーイズ』 Amazon Prime Videoにて独占配信中

公務中のスーパーヒーローに恋人を殺されてしまった青年。公的には「過失致死」として片づけられるが、復讐に駆られた青年は独自に調査を開始。ただれにただれたスーパーヒーローの“本性”を知っていく。

主人公の恋人が吹き飛ばされて腕以外は肉片と化す、スーパーヒーローを爆殺して部屋中が真っ赤に染まるなど、グロ度はなかなかのもの。

それだけでなく、新人ヒーローの立場から組織の腐敗も描かれる。メンバーの一員で居続けるために性行為を強要されたりと、こちらの内容もかなりハード。『ザ・モーニングショー』(Apple TV+)でも描かれたように、「MeToo」運動に絡んだこれらの問題は「今、伝えるべき」案件であるのだろう。

作品全体を観ても、従来のヒーロー映画を痛烈に批判する内容は、これまでにはなかった攻め具合だ。素直に面白いと認めざるを得ないストーリーテリングの妙。冒頭15分を観ても才覚がビンビンに伝わってくるから、是非チャレンジしていただきたい。

『ザ・ボーイズ』 Amazon Prime Videoにて独占配信中

『セックス・エデュケーション』

(Netflixで独占配信中)

これまで挙げてきた作品は史実や社会的な問題を物語の中に絡めたものたちだが、最後にちょっと毛色の違う作品を1本。「下ネタ」を“エモ”の領域まで高めた青春ドラマ『セックス・エデュケーション』だ。

セックス・セラピストを母に持つ童貞高校生が、学校一のビッチ(と言われている女子高生)に見初められ、生徒たちの性の悩みに向き合っていくコメディ。

一見すれば眉をひそめる人も出てきそうな下ネタのオンパレードなのだが、見くびるなかれ、ここで描かれているのは他者との距離感がつかめずに戸惑う、青少年の姿そのものだ。

セックスを介して浮き彫りになるのは、他者への理解と自己の孤独、やがて愛に至る慈しみの感情。

LGBTQの描写も違和感なく盛り込まれ、性的マイノリティの人々が傷つきながらも「自分らしい生きざま」を確立していく姿、主人公が過去のトラウマと向き合っていくさま、それぞれが自己嫌悪や家族との不和、周囲の人間との壁、格差を乗り越えていく様子が、笑いあり涙ありでつづられていく。

決して下世話なストーリーにならない部分に、大いなるセンスが感じられる快作だ。

ちなみにNetflixオリジナル作品であれば、『13の理由』もオススメだ。こちらは、自殺した女子高生が遺した「自分が死ぬ13の理由」が明かされていくというミステリーながら、いじめやレイプ、銃社会といった社会問題まで波及した重厚な作品。胸をかきむしられるような鑑賞体験にはなるが、そのぶん記憶に残るはずだ。

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駆け足になったが、各配信プラットフォームで楽しめる「攻めた」ドラマたちを5本紹介させていただいた。もちろん、この他にも鑑賞意欲を満たしてくれる良作・傑作は無数に存在する。本稿を足掛かりに、まだ観ぬ作品たちとの出会いを楽しんでいただければ嬉しい。

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画情報サイトでの勤務を経て、映画ライターに。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント、トークイベント登壇等幅広く手がける。

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