最速153キロ…!準硬式に突如現れた「ドラフトの隠し球」 | FRIDAYデジタル

最速153キロ…!準硬式に突如現れた「ドラフトの隠し球」

福岡大の大曲錬、野球ファンはぜひこの名前を覚えておこう!

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福岡大準硬式野球部の大曲錬投手。これからドラフト戦線を賑わすこと間違いなしだ
福岡大準硬式野球部の大曲錬投手。これからドラフト戦線を賑わすこと間違いなしだ

野球をボールの種類で分けると、プロで使用される硬式、少年野球や中学校の部活動で使われる軟式がよく知られているが、その中間とも言える『準硬式』も存在している。ボールの中身と重さは硬式と同じだが、表面だけがゴムというものだ。その歴史は意外と古く、かつては国体競技としても採用されていたという。

実はそんな準硬式からもプロ野球選手は輩出されており、1999年にドラフト6位で西武に入団しプロ通算210試合に登板した青木勇人投手は同志社大学の準硬式野球部出身である。また最近でも鶴田圭祐投手(帝京大→2016年楽天6位)、坂本工宜投手(関西学院大→2016年巨人育成4位)が準硬式野球部からプロ入りを果たしている。

そしてそんな準硬式で今年、にわかに注目を集め始めている存在がいる。福岡大準硬式野球部に所属している大曲錬投手だ。高校時代は福岡の強豪、西日本短大付の硬式野球部でプレーしており、3年春には九州大会でもマウンドに立っている。しかし当時は控え投手であり、注目を集めるような存在ではなかった。ところが福岡大の準硬式野球部に入ると徐々に才能が開花。昨年夏には最速153キロをマークし、一躍プロも注目する存在となっている。そんな大曲の実力を確かめに21日に行われた春季リーグ戦を取材した。

シーズン開幕となった15日には7球団のスカウトが訪れたと報じられたが、この日はそれを上回る9球団がスタンドに集結。部長クラスが足を運ぶ球団も少なくなかった。多くの注目が集まる中、先発のマウンドに立った大曲だが、1回表に簡単にツーアウトをとった後に西南学院大の3番、法村颯太(3年・香住丘)に甘く入ったストレートをレフトスタンドに運ばれて1点を失う。試合後、本人も

「ブルペンからボールが走っていなかったのでコースを突こうと思ったんですけど甘く入ってしまいました」

とコメントしているように、確かに不用意な一球だった。しかしそこからズルズルいかないのが大曲の良さである。続く2回はライト前ヒット、3回には味方のエラーでいずれも先頭打者の出塁を許しながらも落ち着いて後続を打ち取ると、4回と5回は三者凡退。試合も味方打線が爆発し、11対1で5回コールド勝ちをおさめた。

179cm、75kgと大学生にしては少し細身の体型だが、右足一本できれいに立ち、ゆったりとしたフォームで楽に腕を振って速いボールを投げられるのが最大の長所だ。ストレートが走っていなかったと言いながらも、初回からコンスタントに140km台中盤のスピードを記録し、4回にはこの日最速となる148㎞もマークした。

ちなみにこの日行われたリーグ戦2試合で大曲以外に7人の投手がマウンドに上がっているが、その中で最も速い数字は124㎞だった。いかに大曲の存在が飛び抜けたものかがよく分かるだろう。また春先のこの時期に不調と言いながら140㎞台後半を投げられる投手は硬式でもそうそういるものではない。変化球もカーブ、チェンジアップの緩いボールで緩急をつけることができ、120㎞台中盤のスライダー130㎞台のスプリットを操る。特にスプリットはストレートの軌道から鋭く落ちるボールで、この日も決め球として威力を発揮していた。

ちなみに準硬式のボールは冒頭でも触れたように表面がゴムでできているため、硬式のボールよりもスピードが出づらいと言われている。そのあたりの影響を本人に聞くと

最初の頃はなかなか指にかからなくて、引っかかってしまうボールが多かったです。硬式の時と比べてもボールが伸びなかったですね」

と話していた。しかし学年を経るごとに指先の感覚を身につけ、今ではしっかりとボールを操ることができているという。この日も5回を投げて与えた四死球は0で、追い込んでからファウルで執拗に粘りを見せる打者に対しても冷静に対応していた。
最近の大学球界では150㎞以上のストレートを投げる投手は珍しくなくなっているが、ここまでまとめたように大曲は決してスピードだけの投手ではない。チームを指導する藤野等監督も

「自分で考えてしっかり取り組める選手ですね」

と大曲を評しているように、そのピッチングからは自らの努力で作り上げてきた強さが感じられた。本人に将来のことを聞くと

「行けるものならプロの世界に挑戦したいです」

と即答してくれたが、現在の実力から考えてもその可能性は決して小さいものではないだろう。

福岡大準硬式野球部の大曲錬。秋のドラフト会議に向けて、野球ファンには是非ともその名を覚えておいてもらいたい。

  • 取材・文・撮影西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究(PABBlab)」主任研究員。

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