4500万円横領…!NPO法人秘書の「悪質な手口」
内部監査で横領が発覚するも、犯罪行為を会長は「公表する気はない」
中小企業などの経営でITを活用する方法を助言、支援する「ITコーディネータ」という資格がある。経産省の国家的プロジェクトとして’01年に制度が発足し、全国で6500人が資格を有して活動している。ところが、この資格認定事業を行うNPO法人『ITコーディネータ協会』が不祥事で揺れているのだ。
「昨年、協会のトップである澁谷裕以(しぶやひろゆき)会長の秘書兼経理担当だった女性Aによる横領が発覚したんです。Aは投資詐欺的な商法にひっかかったことから横領に手を染めたらしい。昨年5月の内部監査で発覚するまでに4500万円近い金額を協会の口座から抜いていました。
協会はITコーディネータの認定試験や資格取得に必要な研修受講費などの収入もあり、収支は億単位で動きます。ところが’17年1月に着任した経理課長は経理の経験ゼロの素人だったんです」(ITコーディネータ協会正会員)
本誌が入手した特別内部調査委員会報告書によれば、Aが現金着服行為を始めたのは、’17年3月頃。小口精算のために協会口座の「払い戻し依頼書」を作成し、経理課長の承認を得て口座から下ろした現金を手提げ金庫に保管。そこから他の従業員の目を盗んでカネを持ち帰り、自分の口座に入金するという手口だった。
金庫の確認がされないことから次第に大胆になったAは、’18年には1ヵ月で650万円を超える金額を引き出していたという。横領したカネのうち約3600万円は、Aの口座から投資詐欺口座へと振り込まれ、発覚したときには、彼女の手元にはいくばくのカネも残っていなかった。
「澁谷会長は、協会のスポンサー企業の一つだった東京海上日動出身で、’17年6月に会長に就任しました。ただ、前会長の秘書だったAとは折り合いが悪かった。Aはその後、休みがちになり秘書役を外されたのです」(協会職員)
事件が発覚し、昨年7月に懲戒解雇となったAは、月々5万円を返済すると申し出ていたが、約40万円を返済した後、昨年12月、自己破産申請をしている。
「協会は民間とはいえ、資格認定も行う公的性格の強い団体です。本来ならば、昨年6月の総会時に記者会見を開くなり、HPに経緯を載せるなりして公表して謝罪し、警察にも被害届を出すべきでしょう。それが今になっても取引先や有資格者への報告をしていない。
私たちは研修会を開けば、企業や商工会議所の方々から『先生』『講師』などと呼ばれる存在です。資格認定の大本が横領という犯罪行為を隠蔽しているような状態でいい訳がありません」(前出・正会員)
澁谷会長はこのような声をどう考えているのか。出勤時に取材を申し込むと、以下のような言葉が返ってきた。
「(横領を)知ったのは昨年5月の内部監査で、その翌日に所轄の警察には相談に行きました。ただ、すぐには着手できないので待ってくれと言われたんです。
彼女は主として経理の仕事をしていました。たまにスケジュールの調整とかをしてもらった程度で秘書ではありません」
このような対応は事実の隠蔽では、という声については、
「弁護士とも相談しましたが、協会の内部で起きた問題で、広く公表する類いのものではない、と。報告に行った経産省にも、公表しなくてよいと言われました(経産省は『弊省として、そのような対応をした事実はありません』と回答)」
自己破産したAに、この件について話を聞こうとしたが、
「お話しすることはありません……」
と、小走りに立ち去った。
全国で活動する会員のため、今からでも事件の経緯を明らかにすべきだろう。



『FRIDAY』2020年3月27日・4月3日号より
撮影:濱﨑慎治、足立百合