キンプリ・平野紫耀を「特別扱い」する日テレの深すぎる思惑 | FRIDAYデジタル

キンプリ・平野紫耀を「特別扱い」する日テレの深すぎる思惑

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Sexy Zoneの中島健人とともに日テレのドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』に出演する平野紫耀
Sexy Zoneの中島健人とともに日テレのドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』に出演する平野紫耀

今春、視聴率の調査方法が変わる

3月下旬、日本テレビの番組に最も出演しているのは、平野紫耀で間違いないだろう。

平野と言えば、ジャニーズ事務所のアイドルグループ・King & Princeのエース的存在である一方、まだ23歳の若手タレントに過ぎず、知名度としては発展途上の段階。だからこそ、現在の出演ラッシュには驚かされる。

3月下旬の主な出演番組を挙げていくと、21日の『有吉大反省会』『有吉反省会』『Premium Music2020』を楽しもう!音楽(秘)大年表発表SP』、23日の『しゃべくり007』、24日の『ウチのガヤがすみません!春の2時間スペシャル』『ウチのガヤがすみません!』、25日の『Premium Music2020』、28日の『ニノさんSP 〇〇を知らない人』。さらに4月にも、『笑ってコラえて!2時間SP』『ぐるナイ2時間SP』『火曜サプライズ2時間SP』などへの出演がすでに明かされている。

これらは4月11日スタートの主演ドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』の番宣絡みであることは一目瞭然だが、特筆すべきはその特別扱い。

『有吉大反省会』にはバカリズム、博多大吉、友近、指原莉乃に挟まれて“見届け人”のポジションで出演し、『ウチのガヤがすみません!』は「平野紫耀が初のドッキリ仕掛け人に挑戦」という冠企画であり、『Premium Music2020』では4時間大型特番のMCを務めるほかドラマ主題歌をテレビ初披露する。

毎朝の『ZIP!』でKing & Princeが「MEDAL RUSH」というレギュラーコーナーを任されていることも含めて、出演番組の大半が日本テレビなのだ。日本テレビから見たその理由は、「ジャニーズ事務所のアイドルだから」という安易なものでも、ましてや忖度でもなく、確かな勝算があるからだろう。

しかし、同時に拭い去れない不安もあり、だからこそ出演ラッシュにつながっている。

日テレにとって平野紫耀と横浜流星はシンボル

日本テレビの勝算は、今春にリニューアルされる視聴率調査と、若年層に対する平野の人気。

来たる3月30日、ビデオリサーチが行う視聴率調査がリニューアルされ、これまでの世帯視聴率ではなく、個人視聴率の全国展開がはじまる。

世帯視聴率は「高年層の動向が影響を及ぼしすぎる」などの理由から、時代に合わない広告指標となっていた。多くの広告主は若年層を含む現役世代に商品をリーチしたいため、性別や年代別の視聴動向が分かる個人視聴率へのシフトが確実視されている。

しかも日本テレビは世帯視聴率でトップを快走し続けているにも関わらず、昨年から評価基準を個人視聴率にシフトしていた。

他局のように目先の世帯視聴率を欲しがって高年層にウケそうな番組を手がけるのではなく、若年層を含む現役世代をターゲット層に設定。その姿勢は、『3年A組 −今から皆さんは、人質です−』『俺のスカート、どこ行った?』など、他局が避ける学園ドラマを制作していることからもわかるのではないか。

近年スタートしたバラエティに目を向けても、『THE突破ファイル』『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』などの視聴者層は、他局の裏番組よりも明らかに若い。今春レギュラー化される『有吉の壁』もしかりで、編成サイドも「若年層に見てもらいたい」と明言している。

ジャニーズ事務所のタレントを起用する頻度が高いのも、そのためであり、ビジネスである以上、多少の忖度はあれど、あくまで利益のために起用しているのだ。今年いっぱいで嵐の活動が終われば、必然的に日本テレビの『嵐にしやがれ』も終了する。すでに後継番組を考えているはずだが、この一年でKing & Princeの人気が上がれば、そのポジションを担うことだってありうるだろう。

過去を振り返れば1990年代、フジテレビは『SMAP×SMAP』と主演ドラマの相乗効果で、SMAPのスケールアップとともに成功を勝ち取った。2020年代は日本テレビがKing & Princeのスケールアップとともに成功を勝ち取ろうとしても不思議ではない。

日本テレビがメンバーの中で最も知名度が高く、そのキャラクターが浸透しはじめている平野をフィーチャーするのは当然の流れ。昨秋公開の主演作『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』が若年層向け映画としては断トツの興行成績を収めたことも記憶に新しい。

平野は、昨夏の『あなたの番です』、今冬の『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』、さらに今夏放送予定の『私たちはどうかしている』と、日本テレビ系ドラマに出演を重ねる横浜流星と同学年。平野と横浜は、日本テレビの若年層対策におけるシンボルなのだ。

日テレ『未満警察 ミッドナイトランナー』webサイトより
日テレ『未満警察 ミッドナイトランナー』webサイトより

一方で「ゴリ押し」「忖度」の批判は必至

しかし、「不安がないか」と聞かれれば、素直にうなずけないだろう。ジャニーズ事務所のアイドルを「ドラマ主演に抜てき」「バラエティで特別扱い」と聞けば、それだけで「ゴリ押し」「忖度」という批判が飛び交い、アンチが増えてしまうからだ。

しかも『未満警察 ミッドナイトランナー』は、Sexy Zone・中島健人とのダブル主演であり、コケたときのリスクが減る反面、「ゴリ押し」「忖度」と言われるリスクが増える。ただ、若年層の視聴が見込める平野の主演作は、個人視聴率の本格導入で「低視聴率」とこき下ろされる危険性は低いだけに、批判は熱演ではね返せるかもしれない。

一方、特別扱いを受けるバラエティは、トーク巧者のタレントたちに混じることで、「浮いている」「悪目立ち」と言われてしまうリスクがある。平野は「イケメンなのに極度の天然ボケ」というキャラクターを前面に出しているが、今後幅広い世代から愛されるかどうかは、MCのフリやツッコミと共演者のフォロー次第だろう。

その意味で平野にとって今春は、「出演を重ねながら、どこまで先輩タレントたちとの連携を磨いていけるか」の試金石となっている。

また、基本的に日本テレビのバラエティは、「事前に台本を作り込み、収録後の細かい編集で、笑いの手数を増やす」というスタイルだけに、スタッフの仕事も重要。どこまで平野をサポートし、国民的アイドルになる足がかりをつかませられるか? スタッフの技量も問われているのだ。

平野自身の持つ華やポテンシャルに疑いはないが、世間の人々は「戦略的に誘導されることを嫌う」という傾向が強い。同じ目線の人がレコメンドした人やコンテンツは見たがるが、テレビ局のような巨大組織がプッシュした人やコンテンツからは目を背けてしまう。それだけに、今春の連ドラ主演抜てきとバラエティへの出演ラッシュは、どんなに勝算があったとしても、不安を拭い去れないのではないか。

  • 木村隆志
  • 写真近藤裕介

木村 隆志

コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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