女子アナが自ら遭遇した「マルチ商法」の危ない実態

彼らはこうしてあなたに近づいてくる

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地方から上京し、新生活をスタートさせる若者が街にあふれ始める季節。今年は新型コロナウイルスの影響もあり、入社式はもとより新人研修を中止する会社も多い。社員から感染者を出すリスクを恐れ「入社早々リモートワーク」という決断を下す企業も出てきている。

近くに相談する相手もいない中、右も左もわからない若者たちが生きていくには、いくつもの危険を回避しなければならない。ある種の危険は「親切」の形で近づいてくるものだからだ。

そこで、地方のケーブルテレビ局勤務を経て上京し、現在はフリーアナとして活躍する花崎阿弓氏に、自身が遭遇した「マルチ商法」の数々について、レポートしてもらった。

マルチ商法、ネットワークビジネスの多くは、合法とはいえ既存会員が血眼になって新規会員を誘う過程で、悪徳商法まがいの行為も多発する 写真:アフロ

大学を卒業して地方のテレビ局やラジオ局に就職してから、2014年に上京してきたのですが、これまで7年の間に、9件のマルチ商法に勧誘されました。

マルチ商法は、ある団体で会員が新規会員を誘い入会させ、入会した会員がまた新たな新規会員を誘うという連鎖販売取引全般のことを言います。法律的には合法でも、既存会員が血眼になって新規会員を誘う過程では、悪徳商法まがいの行為も多くみられます。

そこでここでは、私が遭遇してきた9件のマルチ商法が、どのように近づいてきたのかをお伝えしたいと思います。

1 タワマン在住の謎の外国人「金持ち父さん」に会わされ…

東京にきてすぐに勧誘されたのはNというマルチ商法でした。

始めは、婚活パーティ的な食事会があると誘われて20人くらいのパーティに参加しましたが、結構カッコいい男女が集っていて、みんなある商品で美容のケアをしているとのことでした。

その後、そこで出会った1人の料理人の男性と食事に行きました。「阿弓ちゃんはアナウンサーという仕事をしているのに巨万の富を得ようとしないなんてもったいないよ。君の人脈を生かしてある商品を紹介してまわったら巨万の富を得られる」と胡散臭い話をしだし、私が怪訝そうな顔をすると「ボスのところに連れていく」と急に品川のタワーマンションに連れていかれました。

中から出てきたのは、日本語のしゃべれる謎の外国人男性。

『金持ち父さんと貧乏父さん』という本を買わされ、「貧乏人はなぜ貧乏か知ってるかい? ネットワークをもっていないからだよ。君もすぐに億万長者になれるから今の仕事をやめて毎日ここのネットワークコミュニティに通いなさい」と言われました。「いい商品を友人に勧めるだけで巨万の富を得られるなんてすごいだろ!」とも。

その団体は、商品のCMを一切せず仲間を増やして商品を売る方式をとっているから広告費がいらなくて良いものを安く提供できるのだと説明。

コミュニティに入るのであれば、ネットワーク勧誘に多くの時間を割くという約束をしなければならないため、それ以外の仕事を継続することは困難。自分自身が生活で使っている商品もすべてNの物に変えなければいけないというものでした。

のちにSNSでその勧誘をしてきた料理人のことを調べたら、同い年の既婚・子持ち。商品的には悪いものばかりではないかもしれませんが、Nの名前を出すことなく、素姓を隠して婚活パーティで勧誘をしてきた事実が許せませんでした。

2 同郷の仲良くはなかった女友達から突然連絡があり…

しばらくたってから勧誘されたのが、渋谷に大きな社屋をもっているAです。

まず、上京した同郷仲間から10年ぶりくらいに連絡がありました。もともとあまり仲良くなかった相手なので、なぜ連絡がきたのか不思議に思って会いに行くと、Aを勧められたのです。

私が別の話をしても、Aを始めてからかなり富を得たという話をし続け、その後も何度か会いましたが、勧誘してくるだけ。これで最後にしようと会ったときに、あまりにもしつこかったので1万円を支払い、彼女名義で鍋を買ってもらうことにしました。

その後メールで、二度と会わないし入会はしないから鍋だけ送ってとお願いしましたが、音信不通になって連絡がくることはありませんでした。

3 エステティシャンに科学的根拠のない情報で脅され…

その後、信頼できるエステがないかと探していて見つけたお店で勧誘されたのがNSです。担当してくれたエステティシャンが、急速に距離を縮めてくるような人で、おもむろに「大手の化粧品会社の商品を使っていたらガンになるよ!」と話し出しました。

彼女の説明では、大手化粧品会社の商品には「経皮毒」という毒があって、妊娠中に使うと子供にまで悪影響が出るということでした。「その点、NSの商品はオーガニックの原材料で作られていて、そういった心配がないので入会して一緒に友人に広めていかないか?」と。

すぐにインターネットで「経皮毒」と調べたところ、全く否定されているわけではありませんが、科学的根拠がないということでした。その会社のことも調べましたが、ねずみ講に近いマルチ商法なのではないかという情報がたくさん出てきたので距離をとりました。

4 婚活パーティで出会った女性にお茶に誘われ…

次に勧誘されたのは、婚活パーティで出会った女性から勧誘された旅行ネットワークビジネスRです。パーティ後に「お茶しないか」と誘われ、急に「一緒に旅行に行きたい」と。その日はその程度の話で終わったのですが、2回目に約束をして会ったときに「旅行の会員権を買わないか」と勧誘されました。

入会金は15万円を超えていましたが、新しい会員を勧誘できるとどんどん懐が潤っていくビジネスでもあると説明されました。「明らかに怪しいし、おかしい」と話すと、お茶代も払わずにその店から逃げていきました。

5 経営者異業種交流会でいきなり出資の契約書を出され…

次は、経営者異業種交流会という、普段あまり関わりのないところに行った時にHという栄養補助食品会社の勧誘に遭いました。在庫を抱えて売るサービスということで、「いくらまでお金を出せる?」と聞かれました。

貯金額を言ったら貯金額ギリギリのところまでお金を出す契約で契約書を書かそれそうになり、あまりにしつこいので契約書を書くふりをして「ハンコがないから持ち帰る」と話したら、先方が「ハンコはどこかで買って捺しておくよ!」と言われたのでさすがに驚きました。

「いろいろと見直したいから」と契約書をもって逃げるように帰りましたが、そのあと何度も電話やメールがきました。すべて無視することで回避しましたが、この商品も有名サッカー選手とスポンサー契約を結ぶほど商品自体はいいもののようですが、とにかく勧誘の仕方がひど過ぎました。

6 湾岸のタワマンで同じフロアの部屋に誘われ…

あるきっかけで、湾岸のタワーマンションに引っ越しをしました。二つ隣の部屋の方は、よく友達を連れてきていて靴置き場に入りきれないのか、マンション共用スペースの廊下にまで人の靴が並んでいました。あるとき「うちに遊びに来ないか」と言われ、お邪魔することに。

家の中を見ると10人くらい人がいて、みんな部屋着を着ていました。よく聞いてみると、シェアハウスをしているそうでした。師匠と呼ばれる人がいて、その人の「お言葉」が聞けるように近くに住んでいるとのこと。師匠に呼ばれたらいつでも行けるように転職して明け方から働き、14時までに終わる仕事をしつつ無店舗型ビジネスをしているWという団体でサプリなどを販売しているようでした。

7 一度回避したネットワークビジネスが、名前を変えて…

その後、Mという会社のマルチ商法に勧誘されましたが、これは前述のNが名前を変えて活動しているもので、勧誘の手段が全く一緒でした。

8 SDG’sの波に乗って「電力自由化」の名の下に…

また、最近流行っているのが電力自由化です。AジャパンやAエナジーという会社がマルチ商法で販売をしているようです。「これから流行っていく事業だから」とゴリ押しで勧められたのを覚えています。

これも、実態はそう悪くないかもしれませんがマルチ商法の勧誘の仕方を間違えると、相手に恐怖を与えてしまいます。

9 仮想通貨で「億り人」になれると言われ…

最後に、Uというビットコインを売る会社の経営者に「ビットコインを持つことで億万長者になれる」と説明されました。「僕はこんなマンションを持っているのだ」と説明されて見せられたマンションが、調べてみるとそんなに高くなく、私でも買えそうな物件だったので信じきれず、その商品は買いませんでした。

この人は、絶対に儲からない悪徳商品を売りつけていたとして現在22人、合計2600万円近くの被害者の訴えで訴訟協議に入っています。

 

マルチ商法自体は怪しいイメージがありますが、紹介された商品の中には、研究を重ねてよくできている物もあります。相手が不快になるような、その商品を傷つけるような売り方をする人がいることで、詐欺のようなイメージで語られがちなのも事実。マルチ商法の勧誘が身近に迫ってきたら、情報をしっかり検索して周りの人にも相談するようにしましょう。

人によっては何百万の借金と在庫を抱えて自殺を考える人もいる世界です。春になり、多くの機会が訪れる新しい出会いの近くには、そんなマルチ商法の「闇」も存在していることに、充分注意したいですね。

  • 取材・文花崎阿弓

    大学卒業後の2011年4月にケーブルネット鈴鹿に入社。その後、2012年4月に静岡エフエム放送へ転職。2013年4月に退社する。フリーとしてエフエム栃木、スカパーが運営している局を経て再びフリーアナウンサーとして活動している。

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