大谷翔平「ベンチの会話」をスッパ抜く これで観戦が面白くなる
エンゼルスの大谷翔平(23)が、アスレチックス打線を7回1安打に抑え2勝目をあげた4月9日。大谷は捕手のサインに対し、何度も首を振った。オープン戦では捕手に頼りきりで、痛打をくらった反省からだ。開幕直後のベンチでは監督や通訳をまじえ、ナギー投手コーチとこんなやり取りがあったという。
大谷
捕手に任せていると、どうしても投球の組み立てが単調になってしまいます。速球の後はスライダーと……。
ナギー
捕手が信頼できない?
大谷
そうではありません。ただ、要所ではボクの意思で投げさせてください。
メジャーリーグに詳しい、スポーツジャーナリストの友成那智氏が話す。
「大谷は打者の心理を読むのが上手い投手です。打ち気だと判断すればスプリットなどの落ちる球で空振りを奪い、そうでなければストレートでカウントを稼ぐ。日本では基本的に捕手がリードしますが、メジャーでは投手の投げたい球を投げさせる傾向があります。エンゼルスでも大谷の意思を尊重し、開幕後は投手主体の配球に変わったんです」
決め球にスプリットを使えるようになったのは、女房役のマルドナードの影響が大きい。「スプリットを振らせるには、速球を高目の狙った場所に投げられるようにすべき。速球が決まれば、打者は低目のスプリットも振らなければというプレッシャーが強くなる」と話したのだ。
エンゼルスなどで活躍した、元メジャーリーガーの長谷川滋利氏が語る。
「大谷はメジャーの滑るボールに、まだ完全には対応していません。スライダーなどは、抜けることが多い。ただ速球とスプリットの精度は、確実に上がっています。高目に決まる速球とスプリットの高低差が、うまくハマっているんです」
打撃では開幕直前にすり足に変え成功したのは有名な話だが、このフォーム変更も実はベンチでの会話から生まれた。
「ヒンスキー打撃コーチが『レッグキック(足を上げる打法)では、ムービングファストボール(ツーシームのような動く速球)をミートできない』と忠告したんです。イチローも日本で取り入れていた振り子打法を止め、すり足にしました。足を高く上げていては、テンポよく投げ込むメジャーの投手に対応できませんから」(前出・友成氏)
大谷はベンチの会話一つも成長の糧とし、快進撃を続けているのだ。
写真:ロイター/アフロ Getty Images