五輪延期で「2021年WBC」に灯った黄信号

2021年に予定されていた第5回WBCの開催がなぜ危ぶまれるのか?

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2006年に開催された第1回WBCで優勝した日本。トロフィーを掲げるイチローも珍しく笑顔

東京オリンピックの延期が決定した。1年後の7月をめどとして会期が策定されるが、IOC委員の中には、春の開催を主張する人も出てきた。こうした影響をモロに受けそうなのが野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)だ。

野球の世界大会は、IBAF(国際野球連盟)が、2011年までIBAFワールドカップを行っていた。それとは別にMLBと選手会が2006年に第1回WBCを行ったが、MLBがIBAFに経営参加して国際ソフトボール連盟(ISF)とともにWBSC(世界野球ソフトボール連盟)に統合され、IBAFワールドカップは消滅し、WBCが世界最高の野球国際大会になった。

WBCはサッカーで言えばワールドカップに相当する大きな大会だが、今回の東京五輪の延期問題では、ほとんど話題になっていない。野球は世界的にみれば、北中米と東アジアだけで盛んなローカルスポーツであり、国際的にみれば影響力が小さいからだろう。

しかし東京五輪では「野球」が公式競技になっている。WBC同様、こちらもトップチームによる争いになっている。

同じ年に、二つもトップチームによる国際大会を行うことは、通常、考えにくい。トップチームの選手は、日本、アメリカなど野球強豪国ではほとんどがプロ野球選手であり、ペナントレースを戦っている。野手はともかく、投手の負担は非常に大きい。

WBCは、第5回の2021年大会から本選に出場する国が20に拡大された。このうち日本、アメリカ、韓国など16ヵ国は予選を免除されるが、残る4つの出場枠を12ヵ国で争う予選が2020年3月に行われることになっていた。しかし、3月20日に新型コロナウイルスの影響で、予選の無期限延期が決定された。今後、どのタイミングで予選が行われるのかは全く見えない。

東京オリンピックの野球競技は6ヵ国で行われる。このうち主催国の日本と、韓国、イスラエル、メキシコの4ヵ国がすでに出場を決めているが、残る2ヵ国はアメリカ大陸での予選と、台湾での世界最終予選で決めることになっていた。しかし両方の予選ともに新型コロナウイルスのためキャンセルになっている。

2021年の東京オリンピックの開催時期が決まれば、そこから逆算して残る予選の日程も組まれることになるだろう。アメリカ大陸の現在の混乱を考えれば、それは早くても年末になるのではないだろうか。

そういう日程の中で、WBCのスケジュールは後回しになっていくだろう。

おそらくは2021年3月に予定されていたWBC本選も、1年延期になるのではないか。世界陸上が1年延期になったように、WBCも2022年に開催されるのではないか。

それでも開催できるのならまだしもだが、WBCの今後の開催には黄信号がともる可能性がある。

WBCはMLB機構とMLB選手会が共同で運営するワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)が主催する。

もとは、野球の市場拡大を目指してバド・セリグ前コミッショナーが主導してはじめられたが、ロブ・マンフレッド現コミッショナーはWBCの開催にやや消極的だといわれている。またこれまでもMLB30球団の全面的な協力が得られずに、選手の編成に苦労をしてきた。

新型コロナウイルスによる未曽有の事態によって、MLBでは深刻な経営危機に瀕する球団が出てくると考えられる。経営立て直しに奔走する中で、選手をWBCに派遣することが可能かどうか、という議論にもなってくるだろう。

もともとWBCは、アメリカ本国では注目度が低かった。日本、韓国、台湾での人気によって、WBC主催者のMLB、MLB選手会側に興行、広告収入が入るという図式だった。

しかしMLB球団が「WBCどころではない」事態になれば、開催が不透明になる可能性はあるだろう。

その一方で、2017年のWBCでアメリカが初優勝したことで、WBCに出ることを目標にするメジャーリーガーも出てきはじめている。

ニューヨーク・メッツの投手、マーカス・ストローマンがSNSでメジャーリーガーにWBCへの参加を呼び掛けたところ、昨年14勝のウオーカー・ビューラー(ドジャース)や、30セーブのテイラー・ロジャース(ブリュワーズ)、53本塁打のピート・アロンソ(メッツ)、47本塁打のコディ・ベリンジャー(ドジャース)などがそれに呼応したという。彼らは20代で、これから伸び盛りだ。

おそらくNPBの一線級の選手でも歯が立たないような、飛び切りのトップ選手がWBC参加に意欲を示したのだ。

WBCが誕生して以降、日本の野球人の視野は確実に広がっている。日本野球の進化にWBCは大きな影響を与えている。

この機運を維持し、2022年にWBCを開催するために、NPBは、国際化のトレンドを消さないためにも今後、働きかけを強めるべきだろう。

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

  • 写真ロイター/アフロ

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