大学の犯罪心理学者が「自慢の妻」を白昼堂々惨殺したワケ
20年以上連れ添い、3人の子をもうけた夫婦に何があったのか
「浅野さんが奥さんを殺害したというニュースを見ても、あまり驚きませんでした。十数年も前ですが、職場が同じだったとき、浅野さんはよく私に話しかけてきました。その大半は奥さんの自慢話。多くの職員の妻が専業主婦かパートだった当時の職場で、『自分の妻は大卒のキャリア官僚』ということを自慢したくてたまらないようでした。ただ、異常なほど奥さんに執着している様子でしたので、何かの拍子に愛情が殺意に変わっても不思議ではありません」(元同僚の女性)
3月16日、文教大学准教授の浅野正(ただし)容疑者(51)が妻の法代(のりよ)さん(53)を殺害したとして逮捕された。浅野容疑者は少年鑑別所などの勤務を経て大学教員に転じた犯罪心理学者で、妻の法代さんはさいたま少年鑑別所の統括専門官だった。
20年以上連れ添い、3児をもうけた夫婦に何が起こったのか。妻を殺(あや)めた浅野容疑者の犯行には、3つの謎が残る。1つ目は心変わりの理由。
「浅野さんは15年ほど前、米国の大学に留学しています。その時は職場に内緒で当時育休中だった奥さんを呼び寄せ、同居するほど仲睦まじい夫婦でした。それなのに、浅野さんにある種の『無理心中』を決意させた奥さんとの『トラブル』とは何だったのでしょうか」(元同僚)
2つ目の謎は6枚の犯行メモの存在だ。そこには法代さんの行動パターンや「首を刺す」という言葉が記されていた。だが、犯行は人目につく、さいたま地裁前で行われている。
「犯行後に『逃げる』という意思はまったくなく、奥さんを確実に殺したかったという強い願望を感じます。妻を抹殺することで、すべてを終わらせたかったのでしょう」(精神科医の片田珠美氏)
浅野容疑者は犯行を認めながらも、動機を黙秘し続けているのが3つ目の謎だ。
「この人物は非常に自己愛が強く、妻の言動でプライドが傷つけられたことが犯行の原因と考えられます。おそらく、そのきっかけは世間から見れば他愛のないこと。犯行を認めれば、動機を話さなくてはなりませんが、そうすると、『なんでそんな些細なことで妻を殺さなくてはいけないのか』と世間に言われることがわかっている。それも自分のプライドが許さないのでしょう」(臨床心理士の矢幡洋氏)
獄中の犯罪心理学者は、自身の心理をどう分析しているのだろうか。
『FRIDAY』2020年4月10日号より
- 写真:蓮尾真司