なぜ松重豊が「猫村さん」に…?プロデューサーが明かす納得の理由

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テレビ東京にて、4月8日(水)深夜0時52分から始まる2分30秒のミニドラマ『きょうの猫村さん』が、世間をざわつかせている。

村田家政婦紹介所の面々。左から、山田さん(市川実日子)、猫村さん(松重豊)、村田さん(石田ひかり) ©︎テレビ東京

主人公は、人の言葉を話す家政婦の猫。エプロンにステテコ姿が愛らしいその“猫村さん”を、ドラマ『孤独のグルメ』『バイプレイヤーズ』などで話題をさらう個性派俳優・松重豊が演じるというのだ。

本作は、2003年にほしよりこ氏がインターネット上で1日1コマ公開した漫画が始まりだった(現在は「猫村.jp」にて連載)。鉛筆の優しいタッチと、ドロドロした愛憎劇をコミカルに描く心あたたまるストーリーが話題を呼び、2005年7月に初の単行本『きょうの猫村さん 1』をマガジンハウスより出版。現在9巻まで刊行し、シリーズ累計340万部を超える超人気コミックとなっている。

『きょうの猫村さん1』©︎ほしよりこ/マガジンハウス

村田家政婦紹介所に住み込み、家政婦として犬神家で働く猫村ねこ(4歳)。整形を繰り返す美しい奥様、勤務先の大学で恋愛サークルの顧問をつとめるご主人、不良少女の娘に、就職活動中の大学生の息子。お金持ちの犬神家で起こるいざこざに揉まれながら、仔猫の頃に拾ってもらい、離ればなれになった飼い主・ぼっちゃんとの再会を胸に仕事に励むーー。

特技はマッサージ、得意料理は“ネコムライス”。みんなの愛すべきキャラクター猫村さんを、なぜ松重さんが!? 誰も想像しなかったであろうこの展開について、テレビ東京の担当プロデューサー・濱谷晃一氏にきいた。

ーー実写化までの経緯を教えてください。

漫画『きょうの猫村さん』は、どの世代からも人気がある魅力的な作品です。健気な猫村さんのやさしさが伝わるような、あたたかい気持ちになれるドラマにできないかなと、5年前くらいから考えていました。社内会議で提案したこともあったのですが、やはり主人公が猫だけに、実写化へのハードルの高さが懸念され、残念ながら良い反応が得られませんでした。

それからしばらく経った2017年に、松重豊さんが出演するドラマ『バイプレイヤーズ』のプロデューサーを担当したんです。ある日、撮影現場で松重さんのマネージャーさんと雑談をしていたら、突然「うちの松重で猫村さんってどう思います?」と聞かれて(笑)。

猫村さんの実写化は諦めていませんでしたが、猫村さんを松重さんが演じるなんて考えもつかなかった。でも、「このあえて“合わせに行かない感じ”こそがゴールだ!」と一気にビジョンが広がって、「3周まわってありですね!」と答えました。

ーー思ってもみないところから、突破口が見つかったんですね。

そうなんですよね。それからすぐに企画書を用意して、作品の版元であるマガジンハウスさんに提案したのですが、いろんな事情があって残念ながら良い返事をいただけず。けれど、自分の中で「これはいける!」という感触があったので、昨年の春頃に、著者であるほしよりこさんに手紙を書いたんです。

内容は、松重豊さんの実直な人柄やたたずまいは、猫村さんに通じるものがあること、料理や家事をこなす本人役を演じたドラマ『バイプレイヤーズ』では、あまりのハマりように“松重ママ”と呼ばれていたこと、松重さんほどエプロンが似合うコワモテ俳優はいないこと、実生活でも猫を飼われていることなどなど。

ーーそんな風に聞くと、確かに松重さんと猫村さんとの共通点が多いように思えますね。

猫耳をつけると身長2m近くになる松重さんと猫の猫村さんは、ルックスはかけ離れているけれど、メンタリティや雰囲気は通じるものがありますよね。

ほしさんにもそう思っていただけたのか、手紙を受け取った翌々日くらいにOKの返事をくださいました。それからようやく実写化に向けて進み始めたのですが、まず悩んだのが「松重さんが着るコスチュームを、どこまで猫村さんに寄せるか」ということ。

ほしさんに相談したところ、「猫耳にステテコでいいんじゃないですか。“似せる”という作業はいらないと思います」と返ってきて、「やっぱり、ありのままの松重さんで良いんだ」と心が軽くなったというか、救われましたね。

ーーただ立っているだけで笑いがこみ上げてくる、あの脱力感がたまりません。

ほしさんからアドバイスをいただいて、いざ衣装を発注するとなったとき、また次の壁にぶちあたって。

例えば、「猫耳をつけた場合、本物の耳はどうする?」「頭を猫の着ぐるみにしたら、素材のボリューム感はどれくらい?」など、言葉で説明してもなかなか相手にうまく伝わらず難航していたんです。そしたら、松本監督が「じゃあ一度描いてみます」と言って、イメージ画を描いてくれたんです。そしたら、それがもう絶妙な脱力感で(笑)!

その瞬間みんなが「僕たちの道標はこれだ!」となり、一気にビジュアルが固まりました。

監督の描いた“松重・猫村さん”のイラストって、よくみると『孤独のグルメ』の井之頭五郎(いのかしら・ ごろう)なんですよね。スーツをエプロンに、ビジネス鞄を買い物かごに持ち替えてるだけというか(笑)。

ーー鉛筆の線画が魅力の作品ですが、登場人物の再現度は?

猫村さん以外の再現度は高いです。バラエティに富んだ濃いメンバーが集まってくれているんですが、ただ“似てる”だけじゃなく、この作品の肝である、猫村さんと犬神家の人たちとの心の交流を、きちんと感じ取っていただけるものになっていると思います。

猫村さんの派遣先である犬神家の不良娘・尾仁子(池田エライザ)とそのツレの強(染谷将太) ©︎テレビ東京

犬神家の奥様役を演じる小雪さんは、あの浮世離れしたオーラ、気品の高さは、漫画からそのまま飛び出してきたようだし、猫村さんの元飼い主であるぼっちゃん役を濱田岳さんが演じているのですが、短パンにベストを着た5歳児を見事に演じきっています。

猫村さんが所属する村田家政婦紹介所の主である村田さん役は、原作をバイブルにされているほど熱狂的なファンである石田ひかりさん。買い物途中にいつも猫村さんと小競り合いを繰り広げる怖がりの奥さん役は、安藤サクラさん。道端で猫村さんに絡んでくる主婦のなんともいえない感じが、本当におもしろい。他の皆さんも魅力的です。

ーー本作の見どころを教えてください。

このドラマには、携帯電話を持っている人は登場しません。あえていつの時代で、舞台は日本のどこかというのははっきりさせず、ひとつのファンタジーとして楽しんでいただけたらうれしいです。

猫村さんに扮した松重さんが、ある日はじめて村田家政婦所の扉を叩いたとき、そこにいた家政婦の山田さんに「あら猫じゃない」と、話しかけられるんですよね。それを周りの人たちが誰も突っ込まずに受け入れて物語が進み出す。そこに「これってこうやって楽しむものだよね」みたいな、みんなの共犯意識のようなものが生まれるのかなと。

嫌なことがあっても、誰のことも否定せず、鼻歌を歌いながら家事をしているうちに、あっという間に立ち直っちゃう猫村さん。SNSをはじめさまざまなコミュニケーションツールが普及する今、希薄になりがちな人との関わりの大切さやぬくもりが、ぎっしりつまっていると思います。

爪を研いだり、「シャーッ!」と威嚇したりと、猫の愛らしい仕草までもが完ぺきなドラマ『きょうの猫村さん』。

なんてことない日常の中で、猫村さんがふと口にする“刺さる言葉”にも注目したい。主題歌「猫村さんの歌」は、作曲を坂本龍一さん、作詞をユザーンさんが手がける豪華っぷり。松重さんの歌声も必聴だ。

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  • 取材・文大森奈奈

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