年収160万円…日本語教師が頭を痛める「あまりにヒドい待遇」 | FRIDAYデジタル

年収160万円…日本語教師が頭を痛める「あまりにヒドい待遇」

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4月以降の給与が不安で仕方ない

新型コロナウイルスの感染拡大によって、収入がゼロになっている業種の一つに「日本語教師」がある。全国の日本語学校で3月は休講措置が取られたため、教員の約7割を占める非常勤講師は、給与が保障されるのか不透明な状況だという。

さらに、4月以降もいつ授業が再開されるのか見通しが立たない。そのまま雇い止めされるのではないかという不安を抱えている講師は数知れない。ある講師は筆者の取材にこう不安を口にする。

「学校からは『3月は休校にします』と言われただけで、給与についての説明はありませんでした。4月以降の授業をどうするのかも、4月に入った現在も連絡がありません。この先も働き続けることができるのかどうかもわからない状況です」(都内の日本語学校で働く非常勤講師)

新型コロナの影響で休業を余儀なくされた日本語教師への補償の問題は、3月6日の衆議院文部科学委員会でも取り上げられた。

社民党の吉川元議員の質問に対し、厚生労働省側は「賃金は労働基準法26条を適用して、学校側が60%以上の休業手当を支払うべき」と答弁した。

ところが、まったく安心できない。この答弁通りにはいかない可能性があるからだ。というのも、そもそも日本語学校の労働環境は劣悪で、従来から日本語教師に対して、労働時間に見合った給与が支払われていなかったのだ。

この源泉徴収票は、大手の日本語学校で働く非常勤講師のもの。この講師は、1コマ45分の授業を週に20コマから24コマ担当している。授業そのものだけでなく、授業の準備、テストの採点などに割く時間が必要なうえ、クラスの担任業務も行っている。

平日はほぼフルタイムで勤務して、さらに自宅に持ち帰る仕事もあるのに、年収はわずか164万円。支払われているのは「授業のコマ数分の賃金」だけである。学校側は授業以外の業務も「授業給」に含むと主張し、これ以上の支払いを拒んできたという。

しかも、毎年実施される遠足や社会科見学などで学生を引率する際にも、3000円程度の手当しか支払われない。

「これも日本語学校の昔からの慣行だそうです。6時間以上拘束されて、支払われるのが3000円だけ。とても暮らしていけません」(同前)

日本語学校のこうした劣悪な実態を前に、ようやく行政も重い腰を上げた。今年1月、新宿労働基準監督署は、国内大手の「千駄ヶ谷日本語教育研究所付属日本語学校」を運営する株式会社ベスト・コミュニケーションズに対し、臨時検査を実施。授業給に「付帯業務」(担任業務など)が含まれるとして時間給を明示しないのは労働基準法に違反することなど、3点について是正勧告した。

さらに社会見学等に対して低い手当しか払わないことについて、その額が不適当ではないか実態調査をすることなどを指導した。

この指導を受け、現在ベスト・コミュニケーションズは3月に入って従業員の過半数代表者を決める選挙を実施。勤務していた講師らと待遇改善に向けた交渉をこれから始めるという。

ただ、勧告や指導を受けていない他の日本語学校では、同じような労働実態がまかり通っているという。

もう一人の講師は週6〜10コマ働いて1年間の給与は81万円
もう一人の講師は週6〜10コマ働いて1年間の給与は81万円

そもそも、日本語学校はほかの学校業態に比べて非常勤講師の割合が多い。文化庁が2018年に708の日本語教育機関を対象に実施した調査で、回答があった506機関に1万人以上の日本語教師が勤務しており、そのうち専任は約3割で、7割が非常勤講師であることが明らかにされた。

さらに、業務委託契約の人や、契約書を結ばずに勤務している人も多いという。彼らの多くは、そもそもの待遇に強い不満を抱きながら働いている。

そこに加えて、コロナウイルスの影響によって「いつ解雇されるか……」という不安におびえているのだ。二重の苦しみに苛まれる彼らに、今後救いの手は差し伸べられるのだろうか。

  • 取材・文田中圭太郎

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