無観客ライブ負債1000万円超! V系バンドがコロナ自粛で苦悩

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夢だった中野サンプラザホールで無観客ライブを行うthe Raid.(写真提供:the Raid.)

新型コロナウイルスが様々な業界に甚大な影響を与えている。エンタメ界もそのひとつだ。

5人組のヴィジュアル系バンド「the Raid.」(レイド)が3月29日、東京「中野サンプラザホール」での公演を無観客ライブに切り替え、その様子をYouTubeで公開した。

バンド結成時からの9年越しの夢だった中野サンプラザでのライブ。チケットは完売間近だったが、その掴んだ夢を断念し、1000万円の負債を抱えた。the Raid.に、ズバリ「おカネ」の話を聞いた。今、興行系ビジネスが、どんな状況に陥っているのか、そのリアルをお伝えする。

前列左から:星七、テンシ、後列左から:由羽、一陽、bo_ya(写真:竹内みちまろ)

the Raid.は2009年結成。2011年から本格的な活動をスタート。近年は年間100本以上の単独ライブを敢行している。

メンバーは星七(せな・Vo)、bo_ya(Gt)、由羽(ゆうは・Gt)、テンシ(Ba)、一陽(かずひ・Dr)の5人。芸能事務所には所属せず、メンバーたちが代表取締役及び社員となる会社で運営し、マネージャー、音響担当者らをはじめとするスタッフを自分たちで雇っている。現在はメンバーを含めて約10名のチームで活動中(インタビューは、政府の「緊急事態宣言」発令前日の6日に行った)。

負債1000万円から「さらに積み重なっています」

--1000万円の負債が発生したとのことですが、内訳は?

星七:ホールでのライブは、照明や動画撮影用のクレーンなど必要な機材はすべて自分たちでレンタルして会場に搬入します。一番、費用がかかったのは機材費です。

いつもライブでは、銀テープを客席に降らせたり、火柱を上げたりする“特効”(特殊効果)に拘っているのですが、前回のツアーではライブ中に特効を操作するスタッフの人件費などを含めて、1回のライブで特効だけで250万円程かけました。

今回、無観客ライブにした公演でも、その日だけの舞台セットを一から組み上げ、雪を降らせたり、火柱を上げたりする特効を準備していました。特効を操作するスタッフの人件費などでキャンセルできたものも一部にはありました。ですが、用意していたもののほとんどに費用が発生してしまいました。

負債1000万円の内訳は、機材費と特効費を合わせて500万円くらい。残りの500万円はホール使用料や人件費、チケットの払い戻し手数料などです。

また、3月29日の無観客ライブの時点での損失は1000万円と見積もっていましたが、4月の公演も中止しているので、負債額はさらに積み重なっています。

無観客ライブの様子はYouTubeで公開された。(写真提供:the Raid.)

ライブ会場のキャンセルは不可

--4月のライブでは、会場のキャンセルはできた?

星七:僕たちに限って言えば、「中止するのであれば半額は頂きます」、とか「中止ではなく延期にして、必ずこの会場でライブをやってくれるのならキャンセル費は頂きません」というケースが多く、ライブハウスサイドも苦しい状況で、「中止にするなら半分ずつ泣きましょう」というケースがほとんどです。

今は僕たちとライブハウスがいがみ合うときではないので、今後の関係も含めて、いかに折り合いをつけていけるのかがカギです。

無観客ライブに関しては、中野サンプラザの建て替えが決まっていたので、僕たちには“延期”という選択肢がなく、“中止”にせざるを得ませんでした。中野サンプラザホールでのライブが“中止”ではなく“延期”にできていたら負債額が変わっていたかもしれません。

--次回のツアー(5月3日~7月23日)のチケット受け付けがスタートしていますが、6月、7月などのライブ会場をキャンセルすることは可能?

星七:先ほど「(取材は4月6日)明日、政府から緊急事態宣言が発令される見通し」というニュースを見たのですが、現状では“イベントの自粛要請期間”に含まれていない6月や7月のライブを“自粛”するのではあれば、あくまでも主催者の判断による“中止”となります。僕たちは芸能事務所に所属していないので、僕たち自身が主催者となり、負債はすべて僕たちにのしかかってきます。

中野サンプラザホールでは無観客でライブを行うも「お客さんがいるつもりでやった」(写真提供:the Raid.)

次回ツアー 中止でも、開催でも「失うものがある」

--周りのバンドの方々も苦労している?

星七:僕たちのように2000人から3000人規模の会場でライブをやっているバンドは、ほとんどが芸能事務所に所属しています。なので所属事務所には負債が発生しますが、バンドには直接の負債は発生しないと思います。

--芸能事務所に所属せず、独自レーベルで活動している理由は?

星七:自分たちで決めたことを押し通したい、自分たちの考えを芸能事務所を通さずに、ファンの方に直接伝えたいという気持ちがありました。自分たちの判断に責任を負えるのは自分たちしかいないので、芸能事務所に所属するべきではないと決断したんです。

--負債1000万円、さらに積み重なってるとのことですが、返済は?

星七:最新シングルの売り上げもあるのですが、入金は3ヵ月先です。今は銀行からの融資なども検討しています。

--先が見えない状況ですが、今後の活動は?

星七:次回のツアーは、中止したら負債が増えるし、開催しても来場してくれたファンの方に万一のことがあったら……というリスクが発生します。どちらも辛い決断となり、それぞれで失うものがあると思います。

--いわゆる“地下アイドル”なども含めて、芸能事務所には所属せず、独自レーベルで運営しているグループなどは、ライブをやらないと活動を維持できない状況ですね?

星七:“地下アイドル”の方に関しては、ライブをやらないと給料は確実に入ってこないと思います。ただ、出演予定だった対バン(合同ライブ)やイベントが中止になったとしても、主催者ではないので、(ギャラもないけれど)直接の負債までは発生しません。

僕たちがいま苦しい理由は、すべての公演が自らが主催者として行うワンマンライブだったためです。

“無念の無観客ライブ”、反響は?

--「無観客ライブの反響」と「今後の意気込み」も聞かせてください。無観客ライブをYouTubeチャンネルでプレミア公開しました。反響は?

インタビューに応えるthe Raid.:左から、星七、bo_ya(写真:竹内みちまろ)

星七:9年かかってようやく掴んだ初めてのホールライブでした。しかも親世代も名前を知っている中野サンプラザホールだったので実現したかったです。ただ、無観客ライブを配信したことで、僕たちが中野サンプラザホールのステージに立つ姿を観て頂くことができました。

bo_ya:お客さんがいるつもりでやったので、観て下さった方の反応はすごく良くて、「感動した」「早くライブに行きたい」などの声を頂きました。

新型コロナウイルスの影響でライブができないという状況では、“ネットで配信すること”の価値が上がって行くと思います。ただ、バンドマンなので、「いつになったらファンの方の前でパフォーマンスができるのだろう」と不安になります。

テンシ:“たまたま観た”という方や、“昔、好きだったけど最近、離れていた”という方など、観客を入れたライブを行っていたら観ることがなかった方々にも観て頂けました。それはすごくよかったのかなと思います。

一陽:the Raid.を知らない方や、ライブに来ることができない方にもアピールできる機会になったのかなと思います。“悔しい”や“残念”という気持ちはあるのですが、少しでもポジティブに考えていきたいです。

由羽:やってみて気付いたのですが、保護者の方から「危険を伴うから、今はライブに行くのはやめなさい」と言われていたファンの子たちが保護者の方々と一緒に観て下さったケースが多かったです。

「バンドのライブばかり行ってないで勉強しなさい」と怒られていたお母さんから「楽しそうだね」と言ってもらえました……という声を聞けたことが、「やってよかったな」と思えたひとつの理由になりました。

コロナ危機はバンドが「進化するタイミング」

--苦しい状況が続くと思いますが、the Raid.の今後の意気込みをお願いします。

インタビューに応えるthe Raid.:左から、テンシ、一陽、由羽(写真:竹内みちまろ)

星七:ライブを観ることが習慣になっている方にとっては、“ライブがあってこその生活”だと思います。普段は仕事をしていたり、学生だったりするのですが、そういう方々がストレスを発散する場所が僕たちのライブだったのではと思います。

ファンに恩返しをする場所を守りたいと強く思いました。ライブができない苦しい状況でも、まだまだthe Raid.であがきたいです。

bo_ya:ライブハウスでライブができない状況は、逆にバンドというものが進化するタイミングだと思っています。the Raid.は、メンバーはLIVE配信アプリで情報発信したり、それぞれで活動を行っています。この自粛期間中に、音楽とともに、「音楽以外のところでも自分たちができるコンテンツ」を探っていきたいです。コロナが収束したときに、それを一気に音楽に還元していけたらなと思っています。

テンシ:僕たちは配信など色々なことをやっています。ただそれは、最終的にライブに来てもらいたいからです。だから「コロナで半年間、ライブができません」となって、それで、the Raid.が終わってしまうのは嫌です。苦しい状況の中でも続けられる活動を探していくとともに、早くコロナに収束してほしいです。

一陽:僕は、自主活動として、顔を真っ白に塗った姿で街に出て清掃をしていたのですが、「接触、厳禁」のように言われているので、街の清掃をやりたくても、逆に反感を買ってしまう状況です。今は、the Raid.の代表取締役として、the Raid.を存続させるために、いろいろな面で動いています。

由羽:ライブハウスやイベント会場が“クローズドな場所”だとしたら、“オープンな場所”はみんなが持っているスマートフォンだと思います。僕は筋トレの動画も配信しているのですが、5人がスマホを活かして活動していけば、“ライブができない今”だからこそ生まれてくるものがあると思います。僕らは、それも、the Raid.を続けていくためのひとつの道だと思っています。

***

深刻化するばかりの新型コロナウイルスの影響。ライブエンタメ界に限らず、主な収入源を断たれて経済的困難に直面している人々も激増している。

一日でも早くの収束を願うばかりだ。そして、the Raid.にはこの苦しい時期を乗り越えて、みんなが安心して楽しめるライブでいっそうの輝きを放ってほしい。

5人組ヴィジュアル系バンド「the Raid.」(レイド):左から、由羽、テンシ、星七、一陽、bo_ya(写真:竹内みちまろ)
  • 文・撮影竹内みちまろ

    1973年、神奈川県横須賀市生まれ。法政大学文学部史学科卒業。印刷会社勤務後、エンタメ・芸能分野でフリーランスのライターに。編集プロダクション「株式会社ミニシアター通信」代表取締役。第12回長塚節文学賞優秀賞受賞。

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