役員報酬ゴーン越え“やり手実業家”がラーメン店でバイトする理由

東京・御茶ノ水にある小さなラーメン屋に立つ橋本ひろし氏。アルバイト店長の彼はかつて、13億円の報酬を得ていた“経済界の異端児”だった――

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週に4回は店舗に立っているという橋本氏。ラーメンについて熱く語る彼の姿からは、”経済界の異端児”の片鱗が垣間見えた

「自分で改良するだけでなく、来店してくれたお客さんにも感想を求めるので、1週間単位で見ると、味や見た目がかなり変わることはあります。言わば、“お客さんと一緒に作るラーメン”。材料は、身体にいい生野菜を使用しています」

そう楽し気に「こだわり」を語ってくれたのは、東京・千代田区御茶ノ水にある小さなラーメン店『初代葱寅』でアルバイト店長を務める橋本ひろし氏(68)である。

そんな橋本氏が作るラーメンは、味噌・豚骨・醤油から選べて、濃厚なスープ・ボリューミーな野菜・どでかいチャーシューが乗った豪華な一品だ。特にチャーシューは、トロっとした脂が乗っていて分厚く、1枚でも十分に満足できる。

「今年の正月は家族と過ごすことなく、厨房でずっとラーメンの開発をしていました。“たかがラーメン、されどラーメン”ともいうように、ラーメン一杯のために、とことん考えるのが、楽しいんですよ。

’20年の2月12日のオープン初日は、私自身が、“ここ御茶ノ水にラーメン屋ができました。そこの奥さん、お肌にもいいラーメンができましたよ~”なんて営業していました(笑)。私は今まで自分で商売をしてきましたから、バイトというのは初めて。友達がやっているお店の店長をやらせてもらっています」

ラーメン(味噌・豚骨・醤油から選択/写真は味噌) 800円/自家製のチャーシューはかなりボリューミー! スープは濃厚だが、上に乗ったネギがアクセントとなって、飽きることなく最後まで味わえる

ラーメン店へ務める前の橋本氏は、『キョウデングループ』の元会長。昭和KDE、スーパー長崎屋、大江戸温泉物語など様々な企業を再生に導いてきた“やり手”の実業家なのだ。それと同時に、シンガーソングライターとしての顔も持つ“経済界の異端児”として知られている。

’13年に会長職を退任した際の役員報酬は、なんと13億円。この額は同年の日産自動車会長兼CEOを務めたカルロス・ゴーンを越えて、トップとなった過去も持っている。ちなみに、総資産は数千億円だとか。世間からすると、一生遊んで暮らせるような資産を持っている橋本氏が、御茶ノ水の小さなラーメン屋で働いている理由とは?

「3、4年前からラーメンの研究はしていました。元々好きだったのもありますけど、飲食店の中で一番売り上げがあり、回転率も高いんです。そこで、ビジネスとして興味を持ったのがきっかけでした。

経営に回るよりも現場で手を汚したいと思ったので、今は週4回ぐらい厨房に立つようにしています。マネジメントする側になって30年以上も経つので、早く現場に出たくて、うずうずしていました。キョウデングループの工場で現場にたっても、従業員はすごく気を遣うでしょうし、緊張してしまうだろうなと(笑)。誰にも迷惑がかからないように、自分のラーメン屋という“新たな現場”に立つことにしました」

橋本氏は一人でプラモデルを作ったり、絵を描いたりするなど、「0から1」を作り出すような創造的な趣味を楽しんでいる。ラーメン店にもアルバイトはいるものの、商品開発は基本的に一人で行うことが多く、趣味と共通する部分があるようだ。

大会社の創業を成し遂げた橋本氏のモットーは、哲学者・アランの『人生が退屈なら、舞台に立ちなさい』という言葉。それは、ラーメン店での毎日にも生かされているという。自分でラーメンを作るだけではなく、「挑戦したい人を舞台へ」という熱い野望を抱いていた。

「これからの時代、会社に守ってもらうのではなく、自分でリスクを背負って挑戦することができる人でないと生き残っていけないと思っています。私は、アランの言葉を軸に生きていますので、自分が舞台に立つだけでなく、熱意ある人が舞台に立つための支援をしたいと考えています。

私の目標は、自分が開発したラーメンで1000店舗のチェーン展開をすること。そのためには、私の商品でお店をやってくれる人が必要になるでしょう。将来的には、ラーメン店を出店したい人を募り、“最初の開業資金1000万円はこちらが出すから、舞台に立ってみないか”というふうに、夢を持った人が挑戦できる場を提供しようと考えています。

ちなみに、5月中には、私がオーナーのラーメン屋1号店『はさみや』を五反田にオープンする予定です。『初代葱寅』で開発した味を使用しつつ、少しアレンジも加えています」

敏腕企業家がラーメン業界に新たな革命を起こす日は、そう遠くないのかもしれない。

初代葱寅 御茶ノ水店 JR・御茶ノ水駅より徒歩6分 住所:東京都千代田区神田駿河台3-3-3 K&T.T駿河台ビル1F 電話番号:050-5597-5940 営業時間:11時~15時(ラストオーダー14時45分) 定休日:土・日・祝日
  • 取材・文村嶋章紀

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