新型コロナウイルスが「追い風になる企業」「逆風になる企業」 | FRIDAYデジタル

新型コロナウイルスが「追い風になる企業」「逆風になる企業」

「100年に一度の大変革時代」をどう乗り切るか

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「昨日までちょんまげ頭だったのが、いきなり散切(ざんぎ)り頭になった明治維新以来の大変革期ではないかと驚いています。この20年間、『業務改革』や『働き方改革』と言われても全然変わらなかったサラリーマンの働き方が、コロナ・ショックでテレワークが導入され、激変。コロナ・ショック以前にはオンライン会議システムの『ZOOM(ズーム)』なんて誰も知らなかったのに、いまや『ZOOM飲み会』が流行っているほどです。

ほとんどの企業が大変な思いをしていますが、そのなかでもコロナ・ショックを生き残る企業もあるでしょう。その一つが、テレワーク関連企業や通信会社です。通信量は3割増しになっていますし、スマホを通じたネット利用が不可欠になっているので、通信契約の見直しやスマホの買い替えが順次進むはずです」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)

4月7日、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大するなか、緊急事態宣言が発令された。人々にはさらなる外出自粛が要請され、日本経済は大混乱に陥っている。人間が移動することなく、経済活動を続けるにはどうすればいいか。まさに世界は100年に一度の大変革期を迎えている。当然、変化に適応できる企業だけが生き残る。

経済評論家の加谷珪一氏が言う。

「自宅でのリモートワークが爆発的に普及していますが、慌てて採用した企業も多く、今後はセキュリティの問題が生じるでしょう。大企業ではリモートワークを前提にしたシステムを新たに組むケースも増えるはずで、富士通などシステムインテグレータには追い風です」 

自宅で昼食を食べる時代に

自宅作業となると、昼食も自宅で食べる必要がある。そんなときに、フードデリバリーサービスは心強い味方だ。

「外食産業が軒並み苦境に陥るなか、マクドナルドやカレーハウスCoCo壱番屋はテイクアウトや配達が店内飲食の落ち込みをカバーし、何とか踏ん張っています。一方、配達員が客に代わって店舗から商品を受け取って配達するウーバーイーツや出前館は好調。飲食店の食事を自宅に配達してもらうのが、コロナ・ショック以降の定番となっています」(経済ジャーナリストの長浜淳之介氏)

実際、街中でウーバーイーツの配達員を見かけることが劇的に増えた。さらに買い物もネットで済ませることが格段に増えたのではないだろうか。

「3月前半の『業種別消費指数』のうち、『EC』(電子商取引)は前年と比べて4.1%増え、それ以外はすべて前年割れという結果でした(ナウキャストとJCB調べ)。ECプラットフォームを持つアマゾンや楽天市場は好調でしょう。それぞれ生鮮食品を提供するプライムナウや楽天西友ネットスーパーを持ち、これらが人気なのも容易に想像できます」(ITジャーナリストの久原健司氏)

ネット上での買い物はほとんどがオンラインで決済される。目立たないが、こうしたテクノロジーを提供する企業は、コロナ・ショックでも評価が上がりそうだ。消費経済ジャーナリストの松崎のり子氏が注目企業を挙げる。

「GMOペイメントゲートウェイは、ネット通販などの決済サービスや店舗でのキャッシュレス決済などのインフラ提供を行っています。巣ごもり消費でネットでの買い物が増えたり、感染を避けるためにキャッシュレス化が進んだりすれば、同社には追い風になります」

雇用の受け皿になるか

ネットでいくら買い物をしても、最終的に自宅まで届けるのは、人だ。コロナ流行以前から人手不足が叫ばれていたが、他業種からの参入が期待されている。

「中国ではアリババの配送員が足りなくなって、閉店している飲食店の店員が代わりに配送したケースがありました。観光業が軒並みダメで、バスなどの運転手は仕事がないのですから、いまの時期だけ配送業に参入してもらえたら人手不足も解消でき、雇用も生まれ、消費者のニーズにも応えられる。三方よし、です」(物流ジャーナリストの石橋忠子氏)

前出の磯山氏も今回の経済危機では運送業に雇用の受け皿になってほしいと、ヤマト運輸に期待する。

「アメリカではアマゾンが失業者の受け皿になっています。同じように、物流のラストワンマイル(最終区間)に携わる運送業に期待しています。配送量が増え、人件費が上がり、これまでは人手不足で大変だったのが、状況が変わって人を採用できるようになった。いまのタイミングであれば、配送料が多少値上がりしても文句を言う人は少ないでしょう」

緊急事態宣言が発令されても、近所のスーパーやドラッグストアに生活必需品を買いに行くことは許されている。そのため、リアル店舗はこれまでにないほど人が溢れている。

「スーパーは16ヵ月連続で既存店の売上高が前年比マイナスだったのが、2月になってプラスに転じました。学校が一斉休校になって給食がなくなり、外出も自粛なので、自宅でご飯を作って食べる機会が増えた。巣ごもり消費のおかげです。お米やシリアル、冷凍食品などの買いだめ需要も続いています。

ライフなどの大手スーパーは、内定を取り消された学生を念頭に、追加採用をしています。これは素晴らしい試みだと思います」(前出・石橋氏)

スーパー以上に好調なのが、ドラッグストアだ。マスクやトイレットペーパー、アルコール消毒液を求めて、人が押し寄せた。石橋氏が続ける。

「大手ドラッグストアは既存店の売上高が20%増と、かつてないような伸び率を見せました。もちろん、浅草や大阪・心斎橋にあるようなインバウンド向けの店舗は売上高が激減していますが、それ以外の店では、コロナ関連の商品が入荷した先から飛ぶように売れていく。ウエルシア薬局やスギ薬局はインバウンド対応が遅れていたので、逆によかった。

中期的に見ても、ドラッグストアには追い風が吹きます。ドラッグストアに足を運ばなかった男性が、今回の騒動をきっかけに来店し、薬だけでなく日用品や食品も安く買えることを知った。緊急事態宣言が出ても閉まることはないので、好調はしばらく続くでしょう」

意外な企業も

スーパーやドラッグストアで消費者に大量に購入される食料品のメーカーも、突然の需要増に沸く。

「巣ごもり消費になるのでインスタント食品やレトルト食品、冷凍食品など、自宅で手軽に調理できる食品を提供する会社は好調です」(第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏)

実際、味の素の冷凍食品や日清食品のカップ麺が飛ぶように売れている。では、飲料メーカーはどうか。前出の加谷氏がこう言う。

「家族との食事が増えると、自宅での飲料の消費も多くなります。ただ、企業でばらつきがあり、キリンやアサヒは酒類中心なので、居酒屋などの店舗需要が激減して逆風ですが、一方、個人向け商品のウエイトが高いサントリーには追い風でしょう」

意外なところで、業績が回復しそうなのが、電力会社なのだという。前出の永濱氏が解説する。

「原油安、円高、低金利のトリプルメリットを享受できるからです。外出を控え、自宅にいる以上、必ず電気を使うので、使用料も伸びていきます。電力会社は大幅に業績改善するでしょう」

電力の使用増加に一役買いそうなのが、ゲームだ。学校が休校になっているために、子供たちがゲームに夢中になるのは避けられそうもない。

「任天堂のニンテンドースイッチ用のオンラインシミュレーションゲーム『あつまれ どうぶつの森』は、昨年から発売日が決まっていたものの、ベストなタイミングでの発売となりました。ただ、エクササイズゲーム『リングフィット アドベンチャー』は在宅で楽しく運動ができるのですが、専用コントローラーの生産が追いつかず、品薄に拍車がかかってしまった。せっかくの追い風に乗り切れていない印象も受けます」(ゲームアナリストの平林久和氏)

新たな危機を乗り越えるために、働く人たちの知恵が試されている。

コロナ・ショックで注目が集まる業種。(写真上から)ヤマト運輸、ドラッグストア、ウーバーイーツ、スーパー
コロナ・ショックで注目が集まる業種。(写真上から)ヤマト運輸、ドラッグストア、ウーバーイーツ、スーパー

『FRIDAY』2020年4月24日号より

  • 撮影結束武郎 足立百合 濱﨑慎治写真アフロ 時事

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