ネトフリで11年続く『ル・ポールのドラァグ・レース』人気の秘密 | FRIDAYデジタル

ネトフリで11年続く『ル・ポールのドラァグ・レース』人気の秘密

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人気の映画やドラマだけでなく、ハリウッド顔負けのオリジナル作品を次々と生み出し、業界トップのシェアを誇る動画配信サービス「Netflix」ーー。

世界で約1億6700万人という会員数は、新型コロナによる外出自粛要請の影響で右肩上がりだ。ドキュメンタリー、恋愛ドラマ、時代劇など、ジャンル問わず無数にあるコンテンツ中に、2009年の初回放送から11年かけて、今や世界中に熱狂的ファンを持つ超有名番組へと急成長を遂げた番組がある。

シーズン1に出演した初代クイーンとル・ポール。『ドラァグレース』の歴史を語るには外せない伝説のクイーンも 写真:AFLO

「ドラァグクイーン界のゴッドマザー」ことル・ポールがホストを務める『ル・ポールのドラァグ・レース』は、超ド派手なヘアメイクと奇抜かつゴージャスなコスチュームをまとったドラァグクイーンたちが、“アメリカズ・ネクスト・ドラァグ・スーパースター”の称号をかけて熾烈なバトルを繰り広げるアメリカのリアリティーショーだ。(ドラァグクイーンとは、きらびやかなコスチュームを着てパフォーマンスを行う女装家のことで、1980年頃にゲイクラブから生まれたサブカルチャー。必ずしもゲイである決まりはなく、バイセクシュアル、トランスジェンダーはもちろん、最近では女性のクイーンも存在する)

毎週異なるテーマに沿ったコスチュームをまとうクイーンたち。作業部屋にあるミシンを使ってコスチュームを創作するチャレンジも 写真:Netflix

ドラァグクイーンの存在を世界中に知らしめた同作の日本語版は、数年のタイムラグを経て2015年に配信がスタート。ファンは圧倒的に女性が多く、その人気ぶりはここ1〜2年で一気に加速。

SNSは“推しクイーン”を賞賛する声であふれ、出演クイーン6人が来日したワールドツアーのチケットは、発売と同時に完売。会場となった『Zepp DiverCity tokyo』を、多くのファンで埋め尽くした。また、大人気のクイーン『ヴァイオレット・チャチキ』をゲスト招致した都内のクラブイベントは、予想をうわまわる来場者の数に、入場規制がかかったほどの勢いだ。

 

シーズン7に出演して以来、瞬く間に世界中を飛びまわるトップオブクイーンとなった『ヴァイオレット・チャチキ』。日本でも最も知名度の高いクイーン 写真:AFLO

人生をかけたチャレンジで、米国No.1クイーンを目指す

レースの内容をざっくりまとめると、オーディションによりアメリカ各地から集められたクイーンたちに毎週チャレンジが課され、ル・ポールを筆頭にした審査員たちがジャッジし、脱落者を決めるというもの。最終的に残ったひとりが“アメリカズ・ネクスト・ドラァグ・スーパースター”の称号と賞金10万ドルを手にすることができる。

審査の基準は『カリスマ性、ユニークさ、度胸、才能』。このすべてが勝っていないとトップオブクイーンにはなれない。課題はどれも並大抵の努力では乗り越えれないほど難度が高く、夜通し猛特訓した迫真のダンスとリップシンク(口パク)で周囲を圧倒したり、コメディアン顔負けのキレのあるトークで会場を笑いの渦に巻き込んだり……。

胸を張り、個性際立つコスチュームでランウェイを闊歩する姿からは想像しがたいが、彼女たちもみな、私たちと同じように悩み、コンプレックスを抱えて生きている。ときおり見せる心の弱さに触れるたび、別世界を生きているように見える彼女らとの距離が一気に縮まる。はじめは何をやっても脱落ギリギリだったのに、自分を信じ、個性を磨き、回を重ねるごとにキラキラと輝きが増していくクイーンも多い。息をのむようなその変貌ぶりに『自分を信じることで、こんなにも人は変われるんだ』と、心を打たれる。

名言の宝庫。偏見や差別による辛い経験から生まれた言葉たち

審査員の辛辣な評価に自分を責めたり、悔し涙を流したり……中には失敗を他人のせいにする人も。ハードな戦いの最中、自信を失い、自分を見失うクイーンに対しル・ポールは、核心をつく厳しい言葉を放ちながらも、「あなたは美しい」「私はあなたが誇らしい」と、やさしく包み込む。そして、どんな結果が訪れようが、番組ラストはル・ポールの「If you can’t love yourself, how in the hell you gonna love somebody else? 」(自分を愛せなかったら、一体どうやって他人を愛するというの?)という決め台詞に、みんなが「アーメン!」と唱え、笑顔で踊りながらランウェイから去っていく。

絢爛なドレスをまとってしなやかにランウェイを歩くル・ポール。ドラァグクイーン界のトップならではの唯一無二の美しさとオーラを放つ 写真:Netflix

ドラァグクイーンは、偏見やセクシュアリティ差別による辛い過去を持つ人が多く、ル・ポールもそのひとり。困難を乗り越えてきたからこそ重みのある言葉は、他人に否定されても、自分を信じ抜くことの大切さを教えてくれる。

また、課されたチャレンジを披露するまでの数日間、挑戦者はすっぴん+普段着、つまり男性の姿で準備を進めるのだが、ステージに立ったときの“化けっぷり”も見どころのひとつ。あまりの変わりように、人数が多いはじめのうちは見分けがつかず混乱することも。ドラァグクイーンへと華々しく生まれ変わった彼女らの、頭の先から足の先まで美意識が行き届いた妖艶な佇まいは、女性として学ぶところも多い。

セクシャルマイノリティであるドラァグクイーンの生き様からは、『私は私のままでいい』そんなメッセージが受け取れる。自粛続きで沈みがちな心にも効くはずだ。

*Netflixオリジナルシリーズ「ル・ポールのドラァグ・レース」シーズン1~11独占配信中

華やかなドラァグクイーンたちの姿はコチラ↓

  • 取材・文大森奈奈写真Netflix、AFLO

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