コロナ感染リスクで「タワマン人気」が一気に崩落の可能性

不動産のプロが解説

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日本のタワーマンションは1300棟以上あり、その内、東京都だけで400棟以上が林立している。数多くの魅力と共に特有の課題も抱えている  撮影:平行男

感染症リスクが顕在化したタワーマンション

新型コロナウイルスの感染リスクは、3密(密閉、密集、密接)の環境で高まる。

では、一つの建物に多くの人が住むタワーマンション(タワマン)はどうだろうか? 不動産事業プロデューサーで、『不動産で知る日本のこれから』など多くの不動産関連の著書がある牧野知弘氏はこう語る。

「たとえばタワーマンションでは、総戸数1000戸を超え、数千人の居住者が暮らしているケースもあります。自宅待機が叫ばれる現在でも、エントランスを出入りする人は多いですし、朝の通勤時間帯には、エレベーターが一時的に密な状態になることもあります。感染する可能性は高い場所といえるでしょう」(牧野氏)

感染者が1人でも出れば、建物内での集団感染につながる可能性は高い。実際に、2003年にSARS(重症性呼吸器症候群)が流行した際には、香港のマンションで大規模な集団感染が報告されている。

充実の共用部が有事には「重荷」に

さらに牧野氏は、タワマンの構造や設備にも注意を促す。

「タワマンや高級マンションでよく見かける内廊下には、ホテルのような高級感がありますが、外廊下のマンションに比べれば、換気されにくいという欠点があります。さらに、タワマンにつきものの充実した共用部も、感染の機会を高める場となってしまいます」(牧野氏)

ゲストルーム、キッズルーム、自習スペースなど、共用部の充実を謳っているタワマンは多い。なかにはスパ&フィットネスやバーラウンジ、セラピールームを備えた物件もある。

これらの共用部と、コンシェルジュなどのサービスとも合わせて利用すれば、自宅に居ながらにしてホテル暮らしのような快適さを味わえてしまう。

しかしそのような便利な設備は、「3密」の最たるもの。パンデミックの時には、感染を広げる場と化してしまう。そのため多くのマンションでは、共用部の運用を停止しているようだ。

マンションの購入価格のうち、共用部分に支払っている金額がいくらになるかは、物件にもよる。高級マンションであれば、共有部分の費用だけで、1戸あたり数百万円を負担していることもある。

その共用部が「無用の長物」と化している現状に、所有者はどのような思いを抱いているだろうか。

管理会社には多くの対応は望めない

では、マンションを管理する管理会社はどんな対策を取っているのか。たとえばある大手管理会社は、マンションの居住者で構成される管理組合に対して、理事会・総会の延期や共用部の運用停止を「提案」している。

「提案」となっているのは、対応を決定するのは管理会社ではなく、あくまでも住民によって構成・運営される管理組合だからだ。管理会社は、管理組合との業務委託契約に従ってサービスを提供する役割であり、感染症対策の主役とはなり得ない。

それに管理会社だって従業員を守らなければならない。政府による緊急事態宣言発令後は、コンシェルジュや管理員の常駐をやめるなど、管理業務を一部停止している管理会社が多い。

したがってマンションの感染症対策は、管理組合の代表である理事会が中心となって実施していく必要がある。

しかし、たとえば「エレベーターのボタンを毎日消毒しよう」と決定したところで、その作業を担うのは自分たちでしかない。

細かい場所のこまめな清掃は意外と神経を使い、かつ重労働だ。作業を任された住民にとっては大きな負担となることが予想できる。

不動産の下落でタワマン人気も曲がり角に

つまり、タワマンや大規模な高級マンションの売りである「便利で豪華な共用部」「ホテルライクなサービス」が、まるで機能していないのが現在の状況だ。しかし、パンデミックが収まれば、これらの機能は元に戻る。

所有者が気になるのは、その後だ。今後、タワマンの価格はどうなるのだろうか。

「世界同時不況が叫ばれるなか、消費者のマインドは大幅に低迷しています。このような時期に不動産を買いたいと思う人は少なくなるので、不動産会社の販売は低迷することでしょう。不動産市場の象徴的な存在であるタワマンの価格も、無事ではいられないと思います」(牧野氏)

2019年の台風19号では、タワマンの災害リスクが露呈したが、今回の新型コロナ騒動で感染症リスクもあることが顕在化した。

もともと指摘されている維持管理コストの高さも、見えにくいが大きなリスクの一つといえる。数あるリスクに見合うだけの価値がタワマンにあるのかどうか。

新型コロナのパンデミックによって、今や社会は強制的なテレワーク化を強いられ始めた。これが浸透すれば、そもそも都心に住む必要性が薄れ、こうした面からも都心のタワマンの存在価値は揺らぐ。タワマンの居住者、そしてタワマンの購入を考えている人にとっては、非常に頭を悩ませる事態が発生していると言えるだろう。

◆牧野知弘(まきの ともひろ)

東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、1989年に三井不動産入社。不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任し、J-REIT市場に上場。2009年、オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任する。著書に『空き家問題』(祥伝社新書)、『2020年マンション大崩壊』(文春新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)などがある。

◆取材・文:平 行男(たいら ゆきお)

フリーライター。社内報などの企画制作会社を経て2005年からフリーランスに。企業の広報・販促コンテンツの制作を支援するほか、各種メディアでビジネス、IT、マネー分野の記事を執筆している。ブックライティングも多数。

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