ゲイの精神科医とエッセイスト対談「いま感じる不安を認めよう」 | FRIDAYデジタル

ゲイの精神科医とエッセイスト対談「いま感じる不安を認めよう」

対談の最終回。新型コロナの影響で結婚相手、パートナーとの生活も変わってしまったという人は多い。どう過ごせばいいのか? 

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ゲイの精神科医・Tomyさん
ゲイの精神科医・Tomyさん

新型コロナウイルス菌の感染を防ぐために変わった生活リズム。既婚者からすると、いくら好きな相手とはいえ、パートナーと一緒に過ごす時間が急増したことにストレスを感じている人も多いはず。この状況を回避するいますぐに自宅でできることは……? 

その答えを、著書も大ヒット中のゲイの精神科医・Tomyさんと、女性の生き方に関する著書が好評のエッセイスト・小林久乃さんが教えてくれる。人を見る視点が特殊な二人の意見をどうぞ。

――突然、家族と一緒に過ごすことは大なり小なりストレスを感じてしまう人が増えています。これにはどういう解消方法がありますか?

小林 友人から大変だとよく愚痴をリモ飲みで聞きますねえ。もうそういうときは、公園でも買い物でもいいから、ひとりになれ! と言っています。本当なら「ウチに来なよ」とでも言いたいけど、今はNG。でもなんとなく自分の中で既婚者の友人の話を総括すると、専業主婦のほうがそもそも家族と過ごす時間が多いので、負担が少ないように見えます。

Tomy でも今、男性ひとりの稼ぎだけで家庭が形成できるパターンは少ないですよね。共働きが前提。それにこの騒動が与える不況は大きいから、二人で稼がないといけなくなるかもしれないし、専業主婦の数は減ることになると思うの。もちろん兼業主婦も収束すれば、また以前の生活が戻ることになるわよね。それに夏季休暇もどうなるかわからないし……だから、今は家族と過ごせる貴重な時間になるかも?

エッセイストの小林久乃さん
エッセイストの小林久乃さん

小林 何事もちょっとした発想の転換は大事です。Tomy先生は今、パートナーと同居されているそうですけど、ストレスはかかっていないですか?

Tomy 職業柄、アテクシはリモートワークというわけにはいかないので、通勤はしていて、生活は変わらないです。でももし二人で過ごすことになっても、負担にはならないかもしれないです。ゲイには結婚制度がないから、生活を共にすることが結婚に近い。

ちなみにアテクシ、その生活を共にする基準がいかに相手の前で、だら〜んとしていられるか? なので、気遣いもしないですね。でも精神科の治療に取り入れているような気分転換は、すでに生活習慣になっているので苦痛もないですし。

――この対談の第1回目でTomy先生は日光浴が精神科の治療にも使われていると言っていましたけど、他に何かお勧めの気分転換方法はありますか?

Tomy そうね、さっき小林さんからもお話のあった、ひとりでできる“散歩”。軽い運動はストレスの溜まった脳を休めてくれる効果があるんです。なるべくなら、人混みのないその辺の原っぱ、河原、海岸、野山……鳥の声や草木を眺めながら、スマホはおうちに置いて歩いてみてはどうかしら。その環境がないなら、公園や少しだけ車で出かけてみるとか。

小林 普段バタバタしていて、脳内フル回転だと、そういうことが癒やしになるという気も回らないんですよね。

Tomy あとは“お料理”ね。作っている間は手先に集中して工夫をしようとするから、嫌なことを忘れます。出来上がるまでの一連の作業すべてが、エンターテイメントなんですよ。

小林 いきなり毎食作ることになって大変なら、テイクアウトにしていいですよね。今、飲食店の人たちは本当に大変な局面を迎えています。私も、馴染みの店がつらそうで……そういうときは出前システムも使って、外食しましょうよ。それに今なら「絶対、普段はテイクアウトなんてしないよね?」という店がどんどんリリースしています。

入りたかった店の味を安価で知ることができるチャンスだなって。自宅で仕事をしていても求められるものは変わらないし、家事で頑張ろうとするのは一旦考えから外しちゃいましょう。

Tomy そう! その美味しい料理を一緒に食べてくれる相手がいたら、なお美味しさが増しますよ♡

――なるほど。気分転換をしながら自分を見つめ直す。でもどんなに好きな人でも一緒に過ごす時間が過剰に増えると、関係性に不安が生じるのでは? と悲観的になってしまうという意見があります。

小林 ちょっとハードな回答かもしれないですけど、パートナーとの関係性にひどく悩むならという前提で、離婚は選択肢のひとつかもしれないと思うんです。東日本大震災の時に、周囲で離婚、移住をした友人たちがいました。今から9年前、若さもあったし有事がほぼ初体験だったので、彼らの決断を理解することができなかった。

「なんで(地震を理由に)一家離散するの?」と何度も説得もしました。でも今なら(離婚、移住をすることが)理解できる。これから長寿社会を生きていくのに、決定的なところで価値観が違うと負担になりますよね。けして悪いことじゃないなって。

Tomy いろいろな選択肢があってもいいんですよ。でもね、相手に過度な期待をしないことを忘れないで。普通の男女に当てはまるかどうかはわからないけれど、アテクシたちゲイのカップルには様々なタイプがあります。交際をするということは、他の人とは付き合わないという約束を交わすこと。でもオープンリレーションシップといって、他の人と体の関係ならOKというパターンもあるんです。結婚制度のように絶対的なものはない。

小林 それ結婚していたら浮気ですから、ちょっとした惨事になりますよ〜。

Tomy だからこそ自分が相手に何を求めるかをきちんと持っているんです。なかなかそういう人に巡り会うのは根気がいるけれど、条件を緩めずに探せば現れるものです。自宅で過ごすのは、そういった条件を見直す貴重な時間、経験だと思いましょう。ちなみにアテクシは今、幸せですよ。

――不安が募る時期です。家族と遠く離れて住んでいると「もし家族が感染したら……会えないかもしれない」。そんな“たられば”が日々増えてしまう。この不安から少しでも脱出するためのメッセージをお願いします。

小林 例えば先ほどお話しをした飲食店さんが始めているテイクアウトでも、SNSを使ってアピールをして「この騒動が終わったら撮影のケータリングをお願いします」と大口注文を受けている店がありました。対するように、サーバーから生ビールを出せば700円稼げる、弁当箱にチマチマ詰めて同じ金額なんてやっていられないと言っていた店も。

もちろん、金銭の価値観はそれぞれですから善悪は問えません。でも私は、不安な状況だからこそ “腐らない”ことを意識してほしい。どんな人だって、いつもいい意味で変身願望と戦っている。今はその綿密な計画を立てる時間ですよ。人生をうまく循環させていくチャンスです。

Tomy この状況は先が誰にも読めないので、不安になることは仕方がないわ。むしろ不安を認めてつき合っていく……というスタイルの方がいいと思います。意外とみんな「自分は大丈夫だ」なんて過信しているけど、それが怖いです。「その時の状況で動けばいいや」と雑に考えること。ケセラセラの精神ですね。

今までと全く同じことはできないけれど、楽しめることは探せばいくらでもあるわ。そうやって毎日をていねいに楽しむことが大切よ。大丈夫、この状況が永遠に続くわけではありません。いつかは必ず終わりがきます。

【プロフィール・Tomy】

Tomy とみー

精神科医

精神科病院勤務を経てクリニックに常勤医として勤務。2019年6月から本格的に投稿を開始したツイッターが話題を呼び、半年ほどでフォロワー13万フォロワー突破。精神科医の知識とオネエキャラをミックスした愛の言葉に励まされる子羊たちが多く、さらに人気急上昇して現在16.6万人が彼のツイを待ちわびている。覆面にてメディアにも出演。近著『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。

【プロフィール・小林】

小林 久乃  こばやしひさの

エッセイスト/ライター/編集者/クリエイティブディレクター

エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 撮影岩瀬有奈

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