『恋つづ』『BG』…コロナ禍の再放送で成功するドラマの法則

~コロナ禍を乗り切るTV局戦略とは?~

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コロナ禍でテレビ各局のドラマのロケ・収録が止まっている。

このため春ドラマの初回は次々に延期され、過去作の再放送がスタートした。
まだ始まったばかりだが、視聴率で健闘している作品が少なくない。

未曾有の国難に際し、テレビ局も苦しい状況にある。
そんな中での再放送は、どの程度成功しそうなのかを考えてみた。

『BG~身辺警護人~』の続編で主演を務める木村拓哉 写真:等々力 純生

意外に高視聴率?

GP帯(夜7~11時)のドラマ再放送は、既に8作品に及んでいる。
これまでの実績は以下の通り。

4/9 『グッド・ドクター』5.4%(前4週平均5.9%)
4/10『コウノドリ傑作選』8.6%(12.1%)
4/11『野ブタ。をプロデュース・特別編』11.0%(13.0%)
4/12『下町ロケット総集編』9.4%(12.9%)
4/14『恋はつづくよどこまでも胸キュン!ダイジェスト』10.6%(9.4%)
4/14『素敵な選TAXI』5.7%(5.8%)
4/15『春子の物語ハケンの品格2007特別編第一夜』10.5%(11.2%)
4/16『まもなく新シリーズ!・BG・身辺警護人・傑作選』11.6%(10.5%)

世帯視聴率で10%超が4作品もある。
去年の春ドラマでは、平均が二桁だった作品は3つしかなかった。それを既に上回っているので、良いドラマは再放送でも、十分数字を稼ぐように見える。

中でも『恋つづ』『BG』は、前4週の平均視聴率も上回っている。
新作を制作する場合と比べると、再放送は出演者などの権利処理だけで済む。そのコストを新作制作費の2~3割と仮定すると、二桁をとる再放送は利益率が極めて高くなると言えそうだ。

新型コロナウイルスの感染拡大が続き未曾有の国難ではあるものの、テレビ局にとっては不幸中の幸いとなるかも知れない。

金脈は他にもある!?

テレビ・雑誌向けのアンケートを多数実施しているパイルアップ社は、3月下旬に「シリーズ化されていないテレビドラマの中で、もう一度見たいと思うドラマ」を、1日に1~2時間程度以上テレビ番組を見る全国15~69歳男女1200人に聞いた。

その結果、『恋つづ』が37票を集めトップとなった。

「キュンキュンする」女性17歳
「見応えがあったから」女性30歳
「出演者が素敵な方ばかりだから」女性15歳
「夢中だった」女性23歳

同ドラマはクール平均が11.6%。
再放送は初放送とそん色のない数字となった。若年女性の熱狂的な支持あっての結果だろう。14日の再放送でも、アンケートの支持通り、TBS火曜10時枠として大成功となった。

ちなみにベスト10のうち6作品がこの5年以内の放送となっている。
しかも大量に得票したドラマの大半は5年以内の放送で、若年層の支持が目立つ。ドラマは視聴者の感情を動かす表現だ。特に若年層の心に刺さった作品は、再放送をしても高いポテンシャルを持ちそうだ。

高得票ドラマの選考理由は以下の通り。

『逃げ恥』31票
「録画したものを何回も見返すほど好きなドラマだから」女性22歳
「初めてはまったドラマだから」男性20歳
「2人のその後の生活を観たい」女性30歳

『あなたの番です』30票
「展開が読めないところや、みんなで推理するのが楽しかったから」女性18歳
「ドキドキしながらみた」女性27歳
「1番ハマったから」男性15歳

『アンナチュラル』22票
「内容も役者も楽曲も全てが最高なドラマだったから」女性23歳
「すごいおもしろかったので」男性32歳
「興味深い内容だった」女性28歳

アンケートは選択肢を例示せず、回答者が思い浮かぶドラマを自由に挙げてもらう方式だった。
調査を実施したパイルアップ社の高木章圭メディア研究員は、結果を次のように分析している。

「近年の人気ドラマが多くランクインする結果でした。直近の記憶にある面白かったものを思い返したのでしょうか。一方『やまとなでしこ(2000年)』や『ロングバケーション(1996年)』など、20年以上前のドラマで上位に入っているものもあります。これらには女性の根強い支持がありました。

また、松嶋菜々子さんや木村拓哉さんなど出演者への声も多くあり、また見たいと思われる要素となっていそうです」

つまり再放送すれば一定程度みられるドラマは、古いものでもある程度ありそうだ。ドラマやバラエティで、しばらくロケ・収録が出来ないのなら、過去ドラマに金脈を求める手がありそうだ。

視聴者ニーズにみるテレビ局の興亡

では「もう一度見たいドラマ」の結果を、局別・視聴率別・年代別・得票数別にグラフ化してみよう。

こうして一覧化すると、いつ頃どの局のドラマ制作に勢いがあったのか、そして再放送の可能性はどの局にあるのかが浮かび上がる。

まず90年代から2000年代前半は、フジテレビが圧倒的だった。

『東京ラブストーリー』『ひとつ屋根の下』『ラブジェネレーション』『やまとなでしこ』など、高視聴率で「もう一度みたい」とも思われている。

ところが2010年頃から勢力図が変わり始める。フジが失速し、日本テレビとTBSが台頭してくる。

日テレでは、再放送が始まっている『野ブタ。をプロデュース』や『家政婦のミタ』などが気を吐き、近年では『今日から俺は!!』『3年A組-今から皆さんは、人質です-』『俺の話は長い』『あなたの番です』などが目白押しだ。

そしてこの10年で、トップを行くのがTBSだ。80年代から2000年代まで、名作を世に送り出してきた“ドラマのTBS”だが、この10年の勢いは凄い。

最終回が一般ドラマ歴代2位の視聴率だった『半沢直樹』をはじめ、『JIN-仁-』『下町ロケット』などが10年代前半にある。そして近年は、『逃げ恥』『アンナチュラル』『義母と娘のブルース』『凪のお暇』『グランメゾン東京』『テセウスの船』『恋つづ』など、ゴールドラッシュの様相を呈している。

『恋はつづくよどこまでも』。1月19日昼ごろ、 東京郊外の病院で撮影されていた鬼気迫る緊急搬送のシーン。  撮影:近藤裕介

再放送ドラマ 成功の秘訣

今回の調査で「もう一度みたい」と答えた理由を見ていると、再放送のきっかけとなるヒントがある。

「コロナが流行ってるから(『アンナチュラル』)」男性38歳
「見ていると幸せな気持ちになれるから(『恋つづ』)」女性15歳
「見ていてやる気がわく(『下町ロケット』)」男性43歳
「今だからこそ、家族の在り方を考えたい(『ひとつ屋根の下』)女性69歳

(今回の再放送には)調査でも票を得ているものがあり、SNSなどでも話題となっています。視聴者の見たい気持ちに即したドラマが放送された結果だと思われます。生活の中で制限されることが多くなり気持ちが沈みやすい時期ですが、上位に入っているドラマが再放送されれば、在宅の時間を少し楽しめるきっかけとなりそうです」(高木研究員)

こんな時代だからこそ、ドラマの再放送には意味がありそうだ。

なぜ今か、を厳選すれば、再放送でも価値が生まれ、難局に直面するテレビ局の助けになりそうだ。

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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