猫も「コロナウイルス」の突然変異に襲われ苦しむ可能性

飼い主は十分にご用心を

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致死率が約100%の難病“FIP”! 変異しやすい「コロナウイルス」は、猫も苦しめていた

新型コロナウイルス・COVID-19の猛威が収まらず、混迷を極めている現在。収束する気配もなく、まだまだ混乱は続きそうだが、突然変異したコロナウイルスに苦しめられているのは、実は人間だけではなかった。 

猫の間でも突然変異したコロナウイルスによる難病があり、多くの猫とその飼い主を苦しめている。それは、猫腸コロナウイルスの突然変異によって発症する猫伝染性腹膜炎(以下FIP)と呼ばれる難病だ。 

FIPは有効な治療方法が確立されておらず“不治の病”とされ、致死率はほぼ100%とも言われている恐ろしい病気だ。発症してから数日で死亡してしまうケースも多く(※平均生存期間9日、1年生存率5%未満)、どんなに早期発見できたとしても手の施しようがないというのも、この病気の怖いところ。

もしFIPにかかった場合、猫と飼い主はどうするべきか――。FIPの症状や対処法の現状について、東京・世田谷区にある「にこたま動物病院」の院長・林野淳獣医師に聞いた。

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判断が難しい! ほかの病気と共通するFIPの症状

FIPの原因となる猫コロナウイルスだが、実は多くの猫が保有していて、通常であれば健康面にはまったく影響はない。やっかいなのは突然変異を起こした場合にFIPウイルスとなり、全身のどこかの器官に感染して致死性の高い症状を引き起こすという点だ。では、FIPを発症するとどんな症状が現れるのだろうか。

「FIPには独自の症状はなく、ほかの疾患でも見られるような発熱や食欲不振、体重減少、貧血、下痢などの症状がみられます。こういった症状や検査などから複合的に判断してFIPの診断が下されます」(林野獣医師 以下同)

こんな症状があったら要注意!

FIPの原因となる猫コロナウイルス自体を保有しているかどうかは、血液で抗体検査が行える。また、人間の新型コロナウイルス検査と同じく、PCR検査でわかるので、気になる場合は検査してみるのもいいだろう。ただし、猫コロナウイルスとFIPウイルスの区別はつかず、このことがFIPの診断を難しくしている点だ。

「前述のような症状と各種検査によってFIPの診断が下されます。ウェット型の場合であれば、腹水や胸水を検査し、その中に猫コロナウイルスが検出されるとFIPの可能性が高いというような診断をします」

FIPのより確定的な診断を望む場合は、臓器の一部を切り取って検査し、その中にFIPウイルスの有無を調べるのが確度が高いとされているが、検査結果が出るまでに1週間ほどを要するため、その間に死亡してしまうことも。また、外科手術をすることで猫の体力を奪うことにもなるので、確度が高いとはいえ現実的に有効な検査とはいい難いのが現状だという。

純血種はかかりやすい! 多頭飼いによる影響も

FIPにかかるのはやや純血種が多く、年齢で言えば5歳以下と10歳以上の割合が多いという。オス・メスでの違いは見られないという報告があり、ミックスの猫や、どの年齢の猫でも発症する可能性はある。

「多頭飼いをしている場合、発症した猫とのトイレ共用による排泄物からの感染、食器の共用やグルーミングによる唾液からの感染が考えられるため、ほかの猫からの隔離が必要となります。そしてFIPはストレスが発症のリスク因子のひとつとして考えられており、多頭飼いによるストレスにも気を配った方がよいでしょう」

多頭飼いをしている場合、ほかの猫と仲よくできなかったり、猫が多い環境自体がストレスなる個体も多い。そういった場合は、生活する空間やエサ、トイレを分けることでストレスを緩和し、発症の予防となる環境を作ることができる。

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愛猫がFIPを発症したときの対処法は……?

もし、愛猫がFIPと診断された場合、飼い主はどのような治療を選択できるのだろうか。林野医師によると、現状では完治させるのは難しいという。

「現在、認可されている薬で有効な治療法はなく、FIPを発症した場合は対症療法しかないのが現状です。抗炎症薬を投与して症状を緩和、ウイルスの増殖を抑えるなどして、残された時間を少しでも楽に過ごしてもらうお手伝いをするというのが当院はじめ一般的な動物病院での処置です」

症状を緩和させることしかなく、FIPにかかった猫の飼い主も目いっぱい治療をすることを希望する人もいれば、投薬など猫に負担がかかるようなことはせずに自然に任せる人も多いという。これはどちらにとっても飼い主にとっては難しく、辛い判断を強いられることになる。その一方で、将来的な話になるが猫と飼い主にとっての希望となりそうな報告も。

未認可の新薬に効果!?

上記で林野医師が“認可されている薬では有効な治療法がない”といったが、実は日本では認可されていない薬がFIPに対して効果を表しているという報告もあるのだ。 

「ある論文によると、FIPを発症した猫に新薬を投与した場合、1年の生存率が7~8割にのぼるという報告があります。平均生存期間が発症から9日といわれているFIPにおいて、事実であれば画期的な効果といえるでしょう」

ただし、これは海外で開発された薬で日本では未認可のため、猫に投与するためには個人輸入で入手しなければならない。そのため、発症してから取り寄せようとしても数日~数週間の時間がかかってしまい、その間に猫が死んでしまうこともある。さらに、そもそも“本物の薬”が届くかどうか分からないというリスクもはらんでいる。

また、発症前に輸入してストックしておこうとしても、薬自体が非常に高価で、治療にかかる費用は100万円にものぼることも。よほど経済的に豊かでなければ現実的ではない……。

林野医師によれば、この薬に限らず新薬は臨床試験などに最低でも1年はかかり、効果や安全性が実証されて認可されるまでさらに数年かかるのが通例だという。人間界でも新型コロナウイルスの特効薬がまだ開発されてはいないが、猫のコロナウイルスの突然変異にも特効薬が開発され、すぐに処方されるようにならんことを願うばかりである。

もし、愛猫がFIPを発症したら……? 突然のことにパニックなる前に、事前に家族と話し合うなどして、万が一の際の対処方法を相談しておいた方がよいのではないだろうか。

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新型コロナウイルスは猫に感染する?

ベルギーで「新型コロナウイルスが猫に感染した」というニュースが話題になった。飼い主が発症後、猫にも嘔吐などの症状がみられ、便から新型コロナウイルスが検出されたという。猫と人との間に感染はあるのだろうか?

「一部の例外はありますが、大前提として種から種へ、例えば犬から猫、人間から猫などように種別を越えてウイルスが伝染することは無いと考えられています。ペットに感染したかは不明ですが、少なくともウイルスは『付着』します。それがペットによって人へ『運搬』されることもあるので、引き続き新情報に注意しつつ、予防を心掛けましょう」

林野 淳(りんの・じゅん) 東京農工大学獣医学科卒業後、都内の動物病院勤務、東京大学動物医療センターの研修医などを経て、2015年2月に「にこたま動物病院」を開業。

「にこたま動物病院」の情報はコチラ

  • 取材・文高橋ダイスケ写真アフロ

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