日本の防疫体制が台湾・韓国に格段に劣るワケ

後手後手の日本政府が学ぶべき韓国と台湾の防疫対策

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日本は「何をしなかった」のか?

台湾桃園市にある不織布マスク製造工場で集合写真の撮影に加わる蔡英文総統(2020年3月30日) 写真:ロイター/アフロ

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、日本政府の後手後手の対応にアジアの周辺国が驚きの声を上げている。

首都封鎖(ロックダウン)していないのは「日本」も「韓国」も「台湾」も同じだ。

それなのに、PCR検査が進まず感染者の急増が止まらない日本に対し、韓国はすでにピークアウト。台湾は4月14日に36日ぶりの感染者ゼロとなった。

<4月19日時点での感染状況>
・日本 感染者10,434人/死者224人
・韓国 感染者10,661人/死者234人
・台湾 感染者398人/死者6人

韓国の感染者数に関するサイト
(上段が全世界で下段が韓国。感染者数、死者、隔離解除、致死率、総検査数、検査中、陰性結果)

台湾の感染者数に関するサイト
(検査数、陰性、感染者数、死亡、隔離解除数で、下段は前日の数字)

韓国や台湾では、その日の感染者数や死亡数がすぐに分かるサイトを国が開設しているが、日本にこうしたサイトはない。厚生労働省のホームページにも新型コロナのコーナーはあるものの更新速度が遅く、リアルな感染者数は報道のほうが早いのだ。

ある台湾人女性は、感染者数の少なさについて、「台湾政府は“国民の命”を最優先し、日本政府は“オリンピックの開催”と“経済”を優先した。単にその違いだと思います」と語る。

日本在住の台湾人男性は「中国に忖度した結果だ」と分析する。

また韓国人女性は、「安倍政権の無能ぶりに韓国のネット上では『韓国ならとっくに弾劾だ!』という声が多いです。こんなひどい政権なのに、何もしない日本人のおとなしい国民性を皆、不思議に思っています」という。

韓国のネット上では緊急事態宣言の発令(4月7日)の遅さについて「首相夫人のご旅行が影響したのでは」という憶測さえあった。

韓国や台湾が懸命に防疫を強化し感染者を減らしていた頃、日本政府は何をして、何をしてこなかったのだろう?

「中国には忖度しない!」先手を打った台湾・蔡英文総裁

日本でも多くのメディアで報じられたように、新型コロナウイルスの防疫や補償で、強いリーダーシップを発揮し、支持率を爆上げさせたのが台湾の蔡英文総統だ。

台湾では1月11日に総統選挙が行われ、女性の蔡英文総統が再選を果たした。
当時、多くのメディアは香港での反中デモが勝因に大きく影響したと分析したが、結果として台湾の国民は幸福な選択をしたことになる。

蔡英文総統が新型コロナウイルスを指定感染症に認定したのは、選挙からわずか4日後。まだ台湾では感染者が1人も出ていないときだった。

1月26日には発生源とされる中国・武漢市のある湖北省居住の中国人の入国を禁止。まさに春節(旧正月)で多くの中国観光客が日本を訪れていた頃、台湾ではすでに厳しい措置を取っていたことになる。

2月7日には中国本土からの入国を事実上禁止。反対に中国本土への渡航中止も勧告し、中国からの帰国者については2週間の自宅隔離を義務付けた。
日本が同じように中国からの入国制限をしたのは、これより1ヵ月も先のことだ。

台湾で暮らす日本人女性は、
「1月の総統選で蔡英文総統が選ばれて本当によかった。正直、1月の時点では少し大げさすぎるのでは? と感じたが、今思うと政府は先手先手を打っていたんだと思う。もしも総統選で親中派の総統が誕生していたら中国に忖度して、ここまで強固な封じ込めはできなかったはず」と話す。

日本、そして韓国も中国人観光客による経済効果に依存し、どちらも中国からの入国を阻止せず、水際対策に失敗した。

「”武漢ウイルス”を輸入した」と批判された文在寅大統領

初期段階で中国からの入国を阻止し、防疫を強化していた台湾と違い、2月の韓国は悲惨だった。

2月中旬、韓国は映画『パラサイト 半地下の家族』の米国アカデミー賞の受賞に沸いていた。新型コロナウイルスの新規感染者も減少傾向にあり、韓国政府は終息宣言を検討していたという。

ところが、2月18日になって大邱(テグ)市で宗教団体「新天地イエス教会」の集団感染が発覚。感染者はついに1万人を突破し、一時は中国に次ぐ感染者数となった。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持層は「新天地」を批判したが、多くの国民は中国人観光客の入国を阻止しなかった政権に対して怒りをぶつけている。
世論は「中国人の入国を阻止しなかった政権が悪い」「すべては宗教団体のせい」と二分した。

こうした状況から韓国では「“終息”ではなく“増殖”か」という声が上がり、インターネット上では下記のような書き込みも目立った。

コロナ原産地:武漢
輸入:文在寅(ムン・ジェイン)
配給:新天地

ソウル市内に住む韓国人女性は
「そもそも1月の時点で政府が中国人観光客の入国を禁止すべきでした。ネット上でも『最初から厳しく対応した台湾がうらやましい』という書き込みが目立ちました」と怒りをあらわにした。

“ウイルスとの戦争”に突入!  徹底的なPCR検査で起死回生の韓国

コロナ禍の中で繰り広げられた「韓国総選挙」。厳重な防疫体制の中、検疫施設では期日前投票が行われた(2020年4月11日) 写真:ロイター/アフロ

国民から批判された韓国政府は「PCR検査数」で起死回生を図った。
ドライブスルー検査やウォーキングスルー検査など、次から次へとPCR検査を行い、感染者と濃厚接触者の「治療」「感染経路の解明」「情報公開」を徹底したのだ。

日本とは比にならないほどのPCR検査を実施し、一方で隔離施設も用意した。
医療崩壊を防ぐため、軽症者は医師や看護師が常駐する「施設」もしくは「自宅」での隔離とし、経過観察を義務付けた。

また韓国政府は感染者の動線を調べ、国民に細かく知らせている。

日本よりキャッシュレス化の進む韓国では、感染者が出れば街中にあるカメラの映像解析とクレジットカードの利用状況で感染経路や濃厚接触者を割り出しやすい。政府や保健局が把握した状況はSNSやアプリで国民に開示する。

こうした防疫対策が功を奏し、今では新型コロナウイルスの新規感染を封じ込めつつある。文在寅大統領の支持率も上昇し、4月15日の総選挙でも与党が圧勝した。

一方、日本は安倍首相が4月6日に「一日あたりのPCR検査数を2万件まで増やす」と表明したものの、これまで検査数の大幅増を実現できず、日本全国で感染拡大が止まらない。もはや人災との声も高まっている。

台湾と韓国に共通するウイルスへの恐怖

台湾には2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)で70人以上の死者を出した教訓がある。「法改正」や「ウイルス対策」に取り掛かっていたので、準備は整っていたという。

中国に対して早くから厳しい態度を見せた台湾だが、現地に住む日本人女性は台湾の国民の徹底した防疫ぶりを目の当たりにし、驚いたそうだ。

「台湾は外食文化が日常化しているので飲食店は普通に営業しています。ただし1月末には入店時の“検温”と“消毒”は徹底されていました」

防疫を強化したのは飲食店だけではない。マンションや商業ビルの入口に消毒液も置かれるようになった。

「1月末には使い捨てのビニール手袋をして、エレベーターのボタンを押したり電車のつり革を持つ人を目にしました。“マスクを着用していない人は入れません”と記載されている建物も多いです」

飲食業への営業自粛を行わなくとも、台湾は国民の危機意識が高く、次第に客足は減っていった。野外の「夜市」でさえも閑散とした。

「最近ではバスや電車もマスクなしでは乗車できなくなりました。マンションもUber Eats(ウーバーイーツ)や宅急便は管理人室に届けてもらい、入居者は管理人室に取りに行かなくてはいけません。面倒ですが、部外者をシャットアウトしているので仮に感染者が出ても感染経路をたどりやすくなります」

台湾では1月の時点ですでに政府が先手を打っていたこともあるが、人々の記憶に残るSARSウイルスへの恐怖も防疫に一役買ったといえるだろう。

韓国も2015年にMARS(中東呼吸器症候群)が感染拡大し、当時の朴槿惠(パク・クネ)大統領が批判を浴びた過去がある。

そのため、2月に大邱市で新型コロナウイルスの感染が拡大したときの政府の取り組みは早かった。大都市ソウルでもリモートワークが主流となり、多くの人は自ら外出を自粛するようになった。

同じ頃、日本人が同様の危機意識を持っていたかどうかは疑問だ。

当初「正しく恐れる」という言葉が一人歩きし、「新型コロナウイルスもインフルエンザとさほど変わらない」という間違えた認識を植えつけたのではないか。
多くの日本人は危機意識を持たないまま繁華街へと繰り出した。

このウイルスの恐ろしさを多くの日本人が認識したのは、それこそタレントの志村けんさんが亡くなったときだろう。これほど恐ろしいウイルスだということを政府はもっと早く国民に知らせるべきだった。「正しく恐れる」前に「正しく知らせる」べきだったのだ。

マスク品薄からの回復がスゴい 台湾と韓国

マスクが品薄になったのは台湾も韓国も同じだ。
台湾は1月末にはマスクの輸出を禁止し、政府による買上げを始めた。

台湾在住の女性によれば、
「2月6日にはマスクの購入が実名制になり、国民は保険証を持って指定薬局に行き、週2枚までしか購入できなくなりました。保険証の最後の数字が奇数か偶数かで購入できる曜日を分けたんです。4月以降は大人は2週間で9枚、子供は10枚になりました」

こうした配給制により、マスクの買い占め行為や転売は不可能となった。

システムを構築したのはIQ180という38歳のデジタル大臣、唐鳳氏で、台湾国内の薬局にあるマスクの在庫が一目で確認できる地図アプリを開発して公開し、国民に理解を求めた。

3月になると台湾ではマスクを事前に予約購入できるようになり、4月以降はほぼ安定供給されている。4月19日にはマスクの配布は終了し、オンラインで購入できるようになる。

韓国のマスク不足も深刻だった。

韓国政府は2月26日にマスクの国外輸出を禁止する措置を取り、買い占めを取り締まった。

その後、台湾と同様にマスクの配給を開始する。やはり住民登録制度を利用し、生まれた年の末尾の数字でマスクを購入できる日を指定したのだ。

おかげで週に2枚は確実にマスクを購入でき、4月に入るとドラッグストアでも普通に買えるようになった。

韓国在住の日本人女性は、
「マスクの供給は安定しました。今は外国にも月に8枚までなら送ることができます。あくまでも韓国人から韓国人に送ることが条件ですが」と、今ではマスク不足がすっかり解消されている。

そんな台湾や韓国と違い、日本政府は2月にマスクの増産を表明したにもかかわらず、国内ではいまだマスクが入手困難な状況が続いている。
2ヵ月も国民を待たせた末に出てきた日本政府の「布マスク2枚配布」は、世界中の失笑を買ったに過ぎない。

ルールを守らない国民には厳しい罰則 台湾と韓国

いまだ感染者数が少ない台湾だが、感染症防止法に違反した者へは容赦ない。
1月25日には中国・武漢から来たことを隠蔽していた感染者に対して30万台湾ドル(約110万円)の罰金を課した。

トイレットペーパーやティッシュペーパーの買い占め騒ぎを引き起こすデマを拡散した国民も法務部が特定し、社会秩序保護法違反の疑いで捜査している。

台湾では3月19日には日本への渡航警戒レベルを最大のレベル3に引き上げている。日本からの入国者も2週間の隔離(外出禁止)と毎日の検温が義務付けられ、違反すれば最大で100万元(約350万円)の罰金を科すと発表。親日国家といえど、その点は容赦ないのだ。

台湾在住の日本人女性によると、
「隔離中の人はGPSで監視され、毎朝晩の検温は当たり前。食事や消毒用品、マスクは配達してもらえます。隔離の為にホテルを利用する際には補助金も出ます。

ただし隔離中に外に出たら罰金と実名報道。先日も隔離中にクラブで遊んでいた人が罰金刑に処されたと報道されたばかり」と、実に厳しい措置を取っていることが伺える。

一方、韓国でも感染を拡大させるような行為には恐ろしいペナルティーが待っている。感染を自覚しながら済州島を旅行した米国留学中の韓国人の親子は損害賠償請求訴訟を起こされた。

韓国では4月1日以降はすべての入国者に対して「2週間の施設での隔離」と「その費用140万ウォン(約12万4千円)の納付」「自己診断アプリのダウンロード」を義務付けている。

施設への入所を拒否した台湾人女性は国外退去となり、隔離に違反したベトナム人も国外追放が検討されている。

韓国人であっても違反すれば1年以下の懲役または1千万ウォン(約89万円)以下の罰金が課せられるのだ。

台湾や韓国で行われている措置は日本政府の「要請」とはまったく違うもので「これ以上の感染拡大は許さない」という強い意志が感じられる。

*****
台湾や韓国が防疫を強化していた頃、日本政府は「特定世帯への30万円給付」や「安倍首相と星野源とのコラボ動画」「布マスク2枚配布」など、迷走を続けてきた。

布マスクの配布については466億円もの経費がかかり、これには海外からも呆れる声が聞かれたが、その一方で高く評価されている人もいる。

「日本は政府が無能でも、北海道の鈴木知事や大阪の吉村知事たちがリーダーシップを発揮しているのが唯一の救い」という声もあった。

感染拡大が続く日本は周辺国からも注目されている。

ウイルスの脅威を過小評価し、全国に感染が拡大するまで緊急事態宣言を出せなかった日本政府。もうこれ以上の迷走と後手後手の対応は許されない。

  • 取材・文児玉愛子

    (こだまあいこ)ライター。韓流エンタメ誌、ガイドブック等の企画、取材、執筆を行う韓国ウォッチャー。
    新聞や韓国旅行サイトで韓国映画を紹介するほか、日韓関係についてのコラムも寄稿。

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