わずか3分で終了! 富山発・ドライブスルー式PCR検査の利点
飛沫感染のリスクを抑えられ、防護服も無駄にしない。積極的に動かない政府を他所に、 自治体が独自で踏み切った
これが世間の正直な反応だろう。
4月11日に富山市民病院でドライブスルー方式のPCR検査が行われると聞いて現地へ向かうと、すでに数十台の車が並んでいた。先頭の車のハンドルを握っていたのは20代と思(おぼ)しき若い女性。
防護服に身を包んだ看護師が運転席側の窓を下ろすようにジェスチャーで指示する。窓が開くと、最初に氏名などの情報を確認。その後、顔を上に向かせるよう促し、女性の鼻に綿棒を挿入した。
時間にして3分程度。女性が乗っていた軽自動車が発進し、次の車が看護師の前に停まった。ファーストフードのドライブスルーより圧倒的に速い。
「富山で最初の感染者が確認されたのが3月30日。クラスターとなった京都産業大の卒業祝賀会に参加した女性でした。それでも感染の広がりは当該女性の周囲に抑えられていた。
コロナに罹(かか)るのは東京などの大都市に住む人だと、どこか他人事でしたが、4月9日に県立中央病院の医師の感染が判明したことで県内の空気が一変。そのすぐ後に市民病院の医師と患者ら16人が感染していることがわかり、パニックになる県民が急増しました」(富山市民病院関係者)
世界に比して日本のPCR検査数は圧倒的に少ないが、ドライブスルー方式を採用しているドイツや韓国では、死者数を低く抑え込めている。
「屋外で検査することで、飛沫(ひまつ)などによる感染リスクを抑えられます。患者ごとに防護服を交換する必要がなく、手袋を換えればいいので、検査時間を短縮できます」(医療ジャーナリストの吉澤恵理氏)
「検討する」と言うばかりで積極的に動こうとしない政府をよそに、今回の富山市や新潟市、名古屋市など、自治体が独自でドライブスルー方式のPCR検査に踏み切っているというのが現状だ。
東京大学大学院の国際保健政策学教室特任研究員でWHOのコンサルタントを務める坂元晴香医師が言う。
「都市部でのクラスター対策は限界が見えており、もう少し早い段階でPCR検査の拡充を検討してもよかったと思います。その際、留意すべきは陽性者をどう隔離するか。ドライブスルー方式を採用することで、医療従事者への感染リスク、医療機関でのクラスター発生のリスクをある程度下げることが可能です」
PCR検査を受けた30代男性はマスク越しにこう訴えた。
「検査を受けられていない”隠れコロナ”は相当数いるはず。家族が葬儀に参列できない最期なんて絶対に迎えたくない」
この声を政府は何と聞くか。

『FRIDAY』2020年5月1日号より
撮影:幸多潤平