ハケン、半沢、スーツ、BG…「4大続編ドラマ」それぞれの苦しみ | FRIDAYデジタル

ハケン、半沢、スーツ、BG…「4大続編ドラマ」それぞれの苦しみ

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13年ぶりに復活した名作『ハケンの品格』で主人公を演じる篠原涼子/写真 アフロ
13年ぶりに復活した名作『ハケンの品格』で主人公を演じる篠原涼子/写真 アフロ

新型コロナ対応で4者4様の悩み

新型コロナウイルスの影響で春ドラマが苦しんでいる。約半数が第1話から放送延期されたほか、スタートを切った作品も中断を余儀なくされ、通常放送のメドが立たないなど、かつてないピンチに追い込まれている。

もともと今春は、TBSが『半沢直樹』、日本テレビが『ハケンの品格』、フジテレビが『SUITS/スーツ2』、テレビ朝日が『BG~身辺警護人~』をラインナップし、業界内で「4大続編ドラマがそろい踏み」と言われるなど大きな期待を集めていた。

いずれも局の威信を賭けた大作の続編なのだが、新型コロナウイルスの影響で4者4様の苦しさを見せている。それぞれ、どんな苦しみがあり、今後はどうリカバーしていけばいいのだろうか。

まず大作の中でも頭1つ抜けた感のある『半沢直樹』。放送延期が決まると、同じ池井戸潤原作で福澤克雄がチーフ演出を担当した『下町ロケット 特別総集編』を5日、12日、19日の3週に渡って放送した。

さらに、26日に『ノーサイド・ゲーム 特別編』が放送されるが、「話数未定」という発表に苦しさが表れている。今後も放送が延期され続けたら、同じ放送済みの池井戸作品である『下町ロケット2』『陸王』の特別編もありえるだろう。

加えて、延期が決まる前から『半沢直樹 特別総集編』を2週に渡って放送する予定があり、『半沢直樹』の続編はその後になる。ここまで池井戸原作×福澤演出のドラマが続けば、「肝心の続編が放送される前に飽きられてしまう」というリスクがあるのだ。

TBSは「2020年は半沢直樹イヤー」というキャッチコピーを掲げて、1月に特別ドラマ「エピソードゼロ~狙われた半沢直樹のパスワード~」2月にラジオドラマ「『半沢直樹』敗れし者の物語by AudioMovie」を放送するなど、前作から7年間のブランクを埋めるべく盛り上げてきただけに放送延期は痛かった。

次に13年ぶりの続編となった『ハケンの品格』は、事前の番宣が裏目に出てしまったパターン。たとえば関東地区では3月30日から4日連続で深夜に「傑作選」を放送し、TVerでも多くのエピソードを無料配信していた。そのため新型コロナウイルスの感染拡大で続編を延期せざる得なくなったとき、「前作の傑作選を再び放送するのか」と悩んでしまったのだ。

また、『ハケンの品格』には『半沢直樹』のような同じ作風やスタッフの過去作がないため、けっきょく『春子の物語 ハケンの品格2007特別編』を放送。「“スーパーハケン”大前春子の歴史に迫る」という苦しい切り口で再編集版を放送しているが、これも15日、22日の2回のみで今後のメドは立っていなかった。けっきょく22日に「29日、5月6日も再編集版を放送する」と発表されたが、問題をGW明けまで先送りにしただけだろう。

半沢直樹の公式サイトには「coming soon…」の文字が
半沢直樹の公式サイトには「coming soon…」の文字が
ハケンの品格公式サイトも「近日放送!」のまま…
ハケンの品格公式サイトも「近日放送!」のまま…

「近日放送」としか書けない…

『SUITS/スーツ2』は4大続編の中では唯一放送されていたが、20日放送の第2話終了後に3話以降の放送延期を発表。「今さら戻って放送するのはおかしい」と流れを考えたのか、次週からは前作の再放送は避けて、『コンフィデンスマンJP』を放送する。

これを知った人々は、「中断なんて中途半端にするなら最初から延期しておいたほうがよかった」「他作と違って2話放送してくれただけでも感謝」と賛否両論。ただ、番宣対象の映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』も、5月1日公開の予定が無期延期となっているだけに、「織田裕二主演ドラマの再放送にすればいいのに」などと疑問の声があがっている。

『BG』は傑作選として前作の第1話から順に放送しているため、他の3作よりも柔軟な対応が可能な反面、長引くほど「ただ再放送しているだけ」というCSや動画配信サービスと同じ状態になり、中盤以降は飽きられるリスクが高い。また、他作以上に主演の木村拓哉が『出張!徹子の部屋』『林修の今でしょ!講座SP』などに出演して大々的に宣伝した効果が半減してしまった。

このように4大続編ドラマは4者4様の苦しさを見せているが、共通しているのは放送日を明記できないこと。「近日放送」としか書けない異例の状況が各局の苦悩を象徴している。

元をただせばこの4作には、東京オリンピックの影響で夏ドラマが苦戦必至なことから、「春は実績のある大作で結果を出しておきたい」という狙いがあった。皮肉にも東京オリンピックが延期になったことで、現時点では「結果的に夏ドラマ以上に苦戦を強いられるだろう」と言われている。

もちろん夏以降のドラマにも、新型コロナウイルスの影響は出るはずだが、春ドラマへのダメージは人々の想像を上回るほど深刻。

延期や中断だけでなく、俳優の接触を避ける脚本と演出の変更、スタジオやロケ地の再考、出演者とスタッフのリスケジュール、スポンサーとの調整と交渉など、重大な問題が山積している。これらを対面交渉が制限された中で行わなければいけないのだから、いかに難しいかが何となくわかるのではないか。

SUITS、BGの公式サイトより
SUITS、BGの公式サイトより

代替放送は番宣より名作を

『半沢直樹』『ハケンの品格』『SUITS/スーツ2』はオフィスの物語だけに近い距離感でのシーンが多く、とりわけ『半沢直樹』は人とカメラが至近距離での撮影が目白押し。また、『BG』の主人公はボディガードであり、クライアントと常に近い距離感で仕事をしている。

そもそもドラマは、「テレビ番組の中でも、最も人数が多く、時間が長く、距離感が近い」と言われる撮影現場。さらに4大続編ドラマは濃厚接触のシーンが多く、最大限の配慮が必要なのは間違いない。

もし局の威信を賭けた大作がクラスターになってしまったら……。そんな最悪のケースは絶対に避けなければいけないだけに、「バラエティなどの他ジャンルよりも慎重な対応になるだろう」というのが大方の見方。それはすなわち、「放送までにまだまだ時間がかかる」ということにほかならない。

だからこそ代替放送では、「番宣につながりそうな作品ではなく、視聴者が喜ぶその枠の名作を選ぶ」ことが重要になる。

たとえば、『半沢直樹』は“日曜劇場”で放送された池井戸原作×福澤演出以外の名作も選びたいし、『ハケンの品格』も“水曜ドラマ”の名作を放送したいところ。こちらは逆に池井戸原作で、好感度の高い杏主演の『花咲舞が黙ってない』もありかもしれない。

『SUITS/スーツ2』は番宣度外視で“月9”の名作を放送しつつ再開の準備が整ったら、続編の第1話・第2話を地上波再放送+無料配信したいところ。『BG』も“木曜ドラマ”の名作を放送したいが、5年前の同じ木村拓哉主演作『アイムホーム』あたりはアリだろう。

いずれにしても延期の期間が長引くほど、そんな緊急事態でも番宣を続けようとするテレビ局の姿勢を見た視聴者の心は離れていく。「外出自粛中の視聴者を楽しませる名作はどれか?」「ドラマ枠の財産となっている名作はどれか?」というシンプルな目線でのセレクトが求められているのだ。

緊急事態だからこそ、番宣という自社の利益ではなく、視聴者サービスを優先させたテレビ局が大きく株を上げるのではないか。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本強のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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