コロナ収束の韓国が「安倍政権は朴槿恵政権以下」と呆れ顔のワケ

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第18回大統領選挙「最終テレビ放映討論」前(2012年12月16日)。当時、与党のセヌリ党・韓国大統領候補・朴槿恵と野党・民主連合の文在寅。ここからわずか8年。二人の人生は激変する 写真:代表撮影/ロイター/アフロ

「安倍政権の迷走・無能ぶりは韓国でもいろいろと言われてますが、星野源さんとの動画には言葉を失いました。これが我が国の大統領じゃなくてよかったです。もし韓国の大統領が国家の一大事にこんなことをやったら、国民の怒りを買って大きなデモに発展していたことでしょう」

こう語るのは、韓国のテレビ局に勤務する韓国人女性だ。

韓国の新型コロナ対策は、出足こそつまずいたものの、その後、徹底的なPCR検査や国民の行動管理で巻き返し、収束の気配さえ見せている。その韓国から見て、日本と安倍政権の状況は、驚きをもって受け止められているーー。

例えば、日本政府が新型コロナウイルス対策として当初466億円も投じた「アベノマスク」。このマスクの不衛生ぶりがお隣の韓国でも報じられ、話題になっている。

未発送のものをすべて回収するというお粗末な展開を見せたマスクは、日本ではすっかり「ムダノマスク」となったが、お隣の韓国の視線は“冷ややか”とか“呆れ”とは違っていた。それを一言で表すなら“驚き”にほかならない。

韓国在住の日本人女性は布マスク2枚配布について「最初は冗談かと思っていました」と当初は笑い流したという。政府が方針を明らかにしたのが折しも4月1日のエイプリルフールと重なっていたからだ。

このニュースがフェイクではなく安倍首相肝いりの政策と分かると「本当に驚き、同時に恥ずかしくなりました」と彼女は振り返った。

新規感染者が徐々に減り、マスクの品薄状態が解消されている韓国で、日本政府が「各世帯に布マスクを2枚配布する」というニュースは衝撃でしかなかったようだ。

ちなみに、韓国では今あらためてマスクの効果が注目されている。

釜山で感染していることに気づかないまま生活していた親子が千人以上の人と接触したが、二次感染は一人しか出なかった。韓国の専門家は「親子がマスクをしていたからではないか」と分析している。

韓国人が抱いた素朴な疑問

当初、日本と韓国は新型コロナウイルスにおいて運命共同体のようだった。
ともに中国からの入国を阻止できなかった“水際対策の失敗組”といえる。その両国が新型コロナウイルスの感染力の強さを思い知ったのは今年2月のこと。

日本は横浜港に帰港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内で徐々に感染が広まり、死者も出た。

韓国では大邱(テグ)市の宗教団体で集団感染が発生。一気に感染者が1万人を超えるなどの大惨事となり、対岸の火事ではなくなっていた。国民からの批判を浴びたのは日本も韓国も同じだった。

ところが、韓国政府は次から次へと「PCR検査」を行い、感染者の「隔離」「治療」「情報公開」を徹底した。韓国は新規感染者が激減し、収束ムードが漂っている。政府によって配給されていたマスクも供給が安定し、今では街中で普通に購入できる。

一方の日本は、感染者の急増が止まらないだけでなく、死亡者も日に日に増えている。依然としてPCR検査のハードルは高く、検査を受けられずにいる“隠れコロナ”の存在も懸念されている。

マスクの品薄状態は今も続いており、街中では高値で販売している医薬品以外のショップも少なくない。

こうした状況にソウル在住の韓国人女性は首をかしげる。

「これだけ恐ろしいウイルスだってことは2月のうちに分かっていたはずなのに、韓国がウイルスと戦っていたこの2ヵ月の間、日本は一体なにをしていたんですか?」

彼女もまた、本気で驚いているのだ。

日本政府の対応を見て多くの韓国人が思い出す悲劇

韓国在住の日本人女性もこう話す。

「日本は政府の対策を正当化し、間違いがあっても、あやふやなまま進めてきた結果、結局は国民が犠牲になっているように見えます」

この女性は仕事で日本と韓国を行き来しており、日本の入国制限は死活問題だという。

安倍首相と星野源とのコラボ動画も韓国で大きな話題となっていた。

冒頭で、「もし韓国の大統領が国家の一大事にこんなことをやったら、国民の怒りを買って大きなデモに発展していたことでしょう」と、コメントした韓国のテレビ局に務める女性は、韓国で新型コロナウイルスの感染が収束しつつあるのは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の強いリーダーシップと、政府の素早いリカバリーにあると分析する。

「韓国は文在寅が大統領で本当によかったと思います。あれだけ悲惨な集団感染が起きたのに韓国政府の対応が早くて国民は救われました。もし今も朴槿惠(パク・クネ)が大統領だったらどうなっていたことか。今の日本を見ていて朴槿惠時代を思い出し、怖くなりました」

そう朴槿惠前大統領を批判し、日本の現状を憂いているのだ。

韓国で観光事業に携わっている韓国人女性も、「韓国の防疫対策が必ずしも正解といえないまでも、感染拡大を食い止めつつ、社会活動が回っている点は評価できると思います」と、文在寅大統領の防疫対策を絶賛。

そして同じ名前を口にした。

「今の日本の状況は見ていて胸が痛みます。日本政府が先手を打っていれば、ここまで感染者が増えることはなかったはず。私は朴槿惠政権下の韓国を思い出しました。国内でも『この状況で朴槿惠が大統領だったらと思うとゾッとする』という声が多いです」

朴槿惠前大統領といえば、2013年2月に誕生した韓国初の女性大統領だったが、2017年に弾劾訴追によって罷免されている。

2015年にはMARS(中東呼吸器症候群)が韓国国内で感染拡大し、国民から批判されたが、大統領としての資質をもっとも問われたのは「セウォル号」沈没事故での対応のまずさだった。

2014年4月に起きた大型客船「セウォル号」沈没事故では政府の対応の遅さが災いし、299人もの犠牲者を出している。救えたはずの命を失ったことで、今も多くの韓国人が朴槿惠前大統領に対して怒りを隠さない。

前出の韓国人女性は「セウォル号にしても、新型コロナウイルスにしても、国が国民を守るのは、どちらも当たり前のことなのに…」と悔しさをにじませる。

4月15日の総選挙で悩んだ末、与党に1票を投じた韓国人女性は心の揺れ動きについて語った。

「文在寅政権は外交と経済政策に問題があります。今回のコロナウイルス感染拡大についても、そもそも1月に中国からの入国を阻止すればよかったのにと思いました。

けれど、そのあとの対策はどれを取っても日本よりマシ。日本政府を見ていると、どうしても朴槿惠政権時代を思い出してしまうんです」

結果的に韓国の総選挙で与党は圧勝。その勝利の“影の功労者”が安倍首相と朴槿惠前大統領とは、なんとも皮肉な話だ。

  • 取材・文児玉愛子

    (ライター)韓流エンタメ誌、ガイドブック等の企画、取材、執筆を行う韓国ウォッチャー。
    新聞や韓国旅行サイトで韓国映画を紹介するほか、日韓関係についてのコラムも寄稿。

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