まるでエヴァの世界…コロナで箱根が「恐るべき光景」になった日

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令和になってから箱根はいいことがない

「箱根には来ないでください」

4月23日、小田原市と箱根町は会見を開き、マスク姿の山口昇士町長はこう訴えた。

ゴールデンウィークの観光による人口移動で、感染拡大を警戒する政府は繰り返し「外出自粛」を呼びかけている。このところ特にワイドショーを騒がせたのが、湘南のビーチに繰り出す人々の姿だった。黒岩祐治神奈川県知事が「家にいてください」、と繰り返し会見で発言し、公営駐車場を閉鎖するなどしたが、なかなか人は減らなかった。

神奈川県の新型コロナウイルス感染者は増加傾向が続き、4月28日時点では東京、大阪につぐ感染者数3位になってしまっている。鎌倉とならぶ観光地の箱根にGWの旅行客が来たら……観光でもっている箱根町にとって苦渋の決断だったろう。

が、じつをいうと山口町長がこう会見する前から、箱根湯本は「シャッター街」へと変貌していた。

山口町長が記者会見を行った4月23日の箱根湯本商店街

23日の昼に営業していたのは、60軒近い店が立ち並ぶ箱根湯本商店街のなかで、コンビニと薬局、タバコ屋、2軒の飲食店(テイクアウトのみ)、そして銀行だけ。誰も来店しないため、手持ち無沙汰なのだろう。店舗入り口に出て寂しそうに通りを眺めている行員さんに聞いてみた。“シャッター通り”になってしまったのはいつからですか?

「緊急事態宣言が出てからこんな感じですよ。もう誰も来ないし、奥の旅館街もかなりの数が休業しています。正直言って、令和になってから箱根はいいことが全然ない。台風19号で箱根登山鉄道が寸断されてしまった上に、こんなことになるなんて……本当に早く終わってほしい」

箱根湯本駅の改札。この後、ロマンスカーがホームに入線してきたが、降りてきたのは4~5人だけだった

箱根湯本駅の改札口にも人っ子一人いない。いつも何十人もの客がお土産を品定めしている大きな売り場もシャッターが下りている。かろうじて開いているカフェにも人は3人しかいない。

ロマンスカー売り場だけは空いていたので、1日に果たしてどれくらいの人が乗るのか聞いてみたが、「ここではお答えできないので……」と困り顔をされてしまった。

この2日後、4月25日には小田急が5月2日~6日までのロマンスカーの運休を発表した。

台風や噴火以上の事態

営業していた数少ない1軒、釜めし屋の店頭には手作りマスクが

2015年の噴火警戒レベル引き上げ、2019年の台風19号と、箱根は2000年代に入って自然災害に立て続けに見舞われ、そのたびに観光業は大きな打撃を受けてきた。箱根取材をライフワークとしている私は、そのいずれも見届けてきた。噴火活動の影響で硫黄が流出してまっ黄色に染まった早川の様子に驚き、土砂崩れで押し流された箱根登山鉄道の痛ましい姿に心を痛めた。

だが、現在の箱根湯本商店街の姿ほど、ぞっとしたことはない。

噴火騒動でも台風19号でも、たとえお客さんが減っても、商店の人たちは常に店を開けていた。「いや~大変!」と言いながら、店の前の泥を掻き出したり、商品を並べ替えたりしていたのだ。人が生きて活動しているはずのところから突然誰もいなくなった光景は、まるで町ごと神隠しにあったようで現実のものとは思えなかった。

箱根は『新世紀エヴァンゲリオン』の舞台となったことも知られている。1995年に作られた第一話のオープニングで主人公の碇シンジがたたずむ場所は、非常事態宣言が発令され、誰もいない駅のホームとシャッターが閉じられた商店街だ

箱根は『新世紀エヴァンゲリオン』の舞台となったことも知られている。大災害セカンド・インパクトによって地球の人口が半減した世界だ。1995年に作られた第一話のオープニングで主人公の碇シンジがたたずむ場所は、非常事態宣言が発令され、誰もいない駅のホームとシャッターが閉じられた商店街。店の看板には「かまぼこ」の字があった。

まさか、その光景が実世界で目の前に広がるとは……。

湯本駅改札に掲出されていた箱根全山の減便、運休情報。湯本から強羅まで走っていた箱根登山鉄道は昨年10月の台風19号で線路が寸断されて運休中。当初はGW頃の復旧と言われていたが、見込みよりもはるかに崩落がすさまじく、まだまだかかる
箱根湯本駅前のタクシー乗り場。いつもならば大きなキャリーケースを引いた観光客が常に順番待ちをしているのだが・・・
  • 取材・文・撮影花房麗子

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