『おどるポンポコリン』日本がピーヒャラ踊ったあの名曲の秘話

スージー鈴木の「ちょうど30年前のヒット曲」第5弾は、この大ヒット曲!

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ちょうど30年前のヒット曲を紹介していきます。1990年の4月に、量的にも質的にも、まさに90年を象徴する曲が発売されました――B.B.クィーンズ『おどるポンポコリン』。この年のオリコン年間シングルチャートの1位に輝く大ヒット。売上枚数は何と164.4枚ですから「大ヒット」の前に「超」を付けてもいいですね。

言うまでもなく、この年の1月から始まったフジテレビ系アニメ『ちびまる子ちゃん』のテーマ曲として、世に知られることになりました。『ちびまる子ちゃん』は大人気アニメとなり、90年の10月28日には最高世帯視聴率39.9%を記録します(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

『ちびまる子ちゃん』の作者はさくらももこ。上の写真は『FRIDAY』1989年8月25・9月1日号に掲載された、24歳の頃の彼女です。突然のブレイクに戸惑いながら、それでも喜びを隠せない様子がリアルに伝わってきます。

B.B.クィーンズの成り立ちについて、メンバーだった坪倉唯子はこう語ります――「先に『ちびまる子ちゃん』の曲をやることが決まっていて、のちに、寄せ集められたメンバーなんですよ。うちのBeingっていう事務所に所属している…近藤(註:房之助)さんと私と、ギター、キーボード、ベース…そのあとは、これじゃ見栄えが良くないっていうことで、Mi-Keっていう3人のモデルさんをオーディションで選んできたんですよ」(TOKYO FM「ももいろクローバーZのSUZUKIハッピークローバー」公式サイト・2019年9月22日)

作曲は織田哲郎。メロディのポイントはやはり「♪ピーヒャラ・ピーヒャラ・パッパパラパ」のところ。階名で「♪ドーラソ・ドーラソ・ミッレドドレ」となり、演歌やブルース、世界中の民謡で使われるシンプルな五音音階(ドレミソラの五音だけで構成される)で作られていることも、多くの人に親しまれた要因の1つでしょう。

ちなみに大胆な編曲も織田哲郎。本人のコメントからも、大胆なノリで編曲したことが伝わってきます――「『おどるポンポコリン』はなんせ“奇妙さ”がテーマなので、やりたい放題です。リコーダーは私がちょっと下手っぽく吹いて何本も重ねたり、ピーヒャラピーヒャラというコーラス部分はメインがボコーダーで、それにまた私が何十本もオペラ声を重ねたりと変なことばかりやっています」(zakzak「大ブーム『おどるポンポコリン』秘話 誰もそんなに売れるとは思っていなかった」2019.9.9)

しかし、『おどるポンポコリン』の超・大ヒットの最大の要因は、さくらももこ自身による(編曲以上に)大胆な歌詞だと思います。先の「♪ピーヒャラ・ピーヒャラ・パッパパラパ」に加えて、「♪インチキおじさん」「♪エジソンはえらい人」「♪ニンジンいらない」「♪ブタのプータロー」……と、シュール&ナンセンスの極み。個人的に大好きなのは、「♪キヨスクは駅の中」。そりゃそうだろうと(笑)。

91年10月に発売された、りぼんマスコットコミックス『ちびまる子ちゃん【8】』には、まる子がクレージーキャッツ・植木等の歌う『スーダラ節』を聴いて「じゃあ青島幸男(註:『スーダラ節』の作詞家)みたいにああいう歌をつくりたい」と言うシーンがあり、続くコマで「……15年後その夢をすてずに作った歌が エジソンはえらい人ピーヒャラピーヒャラ……であった」と書かれています。

つまり、さくらももこによる『おどるポンポコリン』の、シュール&ナンセンスの極みのような歌詞の背景には、植木等と青島幸男による『スーダラ節』への憧憬があったのです。

そんな、さくらももこと植木等が直接対決する日がやって来ます。90年12月31日「第41回NHK紅白歌合戦」。23組目が初登場のB.B.クィーンズ『おどるポンポコリン』で、次の24組目が、植木等によるクレージーキャッツ・メドレー『スーダラ伝説』。

自分の作品と自分が憧れた作品との直接対決頂上決戦。若きさくらももこは感無量だったのではないでしょうか(ただし個人的には、このときの『スーダラ伝説』は紅白史上に残るパフォーマンスだったと思っています)。

バブル全盛時代を壮絶に駆け抜けた女性「アッコちゃん」の半生を描いた小説=林真理子『アッコちゃんの時代』(新潮社)の中のセリフ――「あの歌って、今思うと本当にあの時代にぴったりだったと思いませんか。あの頃、みんなピーヒャラピーヒャラ踊っていたし……」「そうね、インチキおじさん、登場っていうところもぴったり」

30年後の先日、『ちびまる子ちゃん』公式サイトに掲載されたコメント――「新型コロナウイルス感染拡大防止に最大限の配慮をするべく、当面の間『ちびまる子ちゃん』の新作アニメの放送を休止/することに致しました。罹患された方々のご快復と皆様の安全、一日も早い事態の終息を心よりお祈り申し上げます」(「アニメ『ちびまる子ちゃん』放送に関するお知らせ」2020.4.25)

あれから、バブル崩壊、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災、そして新型コロナウイルス……日本がもう一度、ピーヒャラピーヒャラと踊り出すのは、一体いつになることでしょう。

  • スージー鈴木

    音楽評論家。1966年大阪府東大阪市生まれ。BS12トゥエルビ『ザ・カセットテープ・ミュージック』出演中。主な著書に『80年代音楽解体新書』(彩流社)、『チェッカーズの音楽とその時代』(ブックマン社)、『イントロの法則80's』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)など。東洋経済オンライン、東京スポーツ、週刊ベースボールなどで連載中。

  • 撮影鬼怒川毅

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