コロナの抗体検査、いま実際に受けてみて分かったこと

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海外では広く実施

アメリカがニューヨーク州内40箇所でランダムに選んだ3000人を対象にコロナウルスの「抗体検査」を行った結果、陽性、つまり抗体を持っていた人の割合は、州全体で13.9%、ニューヨーク市で21.2%だったと報じられた。市内では5人に1人が感染しているということである。この数字は、これまでのPCR検査による感染者の報告数をはるかに超えている。

実際の感染者数を推定するうえで有効であるため、アメリカのみならず、アイスランド、オランダ、シンガポール、ドイツ、英国、ロシアなどでも抗体検査の準備を進めている。

一方、日本は諸外国に比べ検査体制は遅れを取っており、PCR検査のセンター設置が始まったばかり。検査数はいまだに大きくは増えていない。抗体検査も、日本医師会が4月10日、加藤勝信厚労大臣に速やかな普及を求める要望書を提出したが、直ちに体制を整えることは容易ではないだろう。

抗体検査については、現在は、検査を行う医療機関において自由診療で受けることができる。実際の抗体検査がどういったものかを知るために、「千駄ヶ谷インターナショナルクリニック」を受診した。

いろんな理由がある

千駄ヶ谷インターナショナルクリニックでは、新型コロナウイルス感染症の抗体検査についてはメール予約のみとなっている。筆者が受診した4月27日現在では、検査のキャパは1日10人。4月1日に抗体検査を開始したが、すでに問い合わせ、予約ともに多数受けているという。

「検査キットの供給数が需要に追いつかない現状です。しかし、抗体検査の普及が必要だと考え、今後、1日30人の検査ができるよう準備しています」(同クリニックの篠塚医師)

抗体検査を受ける患者には、さまざまな理由がある。

「海外から帰国し2週間隔離の後、自宅へ帰る前に感染の有無を知りたいという方で、保健所にPCR検査を希望しても実施してもらえないため、やむなく抗体検査を受けたという方もいます。

また、これまでに発熱、咳が長引き感染を疑う兆候があるけれど、保健所へ希望を伝えてもPCR検査を受けることができなかったという患者さんが、すでに症状がなくなり2週間以上経つものの、感染の有無を確かめたいから…と抗体検査を受け陽性になった例もあります」

都内の感染者が100人を超えるときもあるなか、 今後は抗体検査が重要な役割と担うと篠塚医師は考えているという。

わずか15分で

早速採血を開始。検体となる血液は、指先を針で刺し採取する医療機関もあるが、静脈からの採血の方が感度が良い傾向にあるという。

このクリニックでは、クラボウが製造するイムノクロマト法による新型コロナウイルスの抗体迅速検査キットを使用している。このキットは、IgM、IgG抗体の有無を調べる定性試験である。

抗体については、専門家によって様々な意見があり、「新型コロナウイルスでは抗体ができても、再感染しなくなるとの保証はない」という声も聞かれる。この点について篠崎医師は、

「抗体が十分量できれば、ウイルスに対して防御することができます。しかし、新型コロナは新しいウイルス疾患であり、再感染の有無などについてこれから検証が必要であることは間違いありません」

と、現時点では検査結果はあくまで「現在の状況を知るため」のものでしかないことなどに留意が必要、とつけくわえた。過去に感染したことが分かっても、イコール絶対安心とはいえない、ということだ。

血液をキットに滴下し、待つこと15分。薬剤師として医療現場でも働く筆者は、2020年1月からこれまで肺炎と診断された患者とも接する機会があった。そのため、「もしかするとすでに抗体があるのでは」とも考えていたが、結果はIgM、IgG抗体ともに陰性(感染経歴ナシ)であった。

希望者には、証明書が発行される。証明書には別途料金が必要だ(証明書の有無や料金はクリニックによって異なるため予約時に確認をしておいたほうがよい。また、抗体検査の信頼性について様々な意見があることも付記しておく)。

集団免疫と抗体検査

集団免疫とは、大多数の人々が感染し免疫を持つことにより感染の連鎖が断ち切られる現象をいう。集団免疫を理解するには「基本再生産数(RO)」が重要である。ROは1人の感染者から生じる二次感染者数をいう。R0が1未満であれば感染は広がらない。しかし、新型コロナウイルスのROは1.4−2.5と推測され、理論上60%程度の人が感染すれば、収束に向かうと考えられる。

「コロナの抗体検査には2つの機能があります。ひとつは私どものクリニックのように患者さんが抱えている不安の解消などのニーズに応えること。一方で、本来抗体検査は集団免疫の指標となるものです。国や医師会が主導となって多くの患者に広く抗体検査を行うことができれば、感染の実態が見えてくるものです。

これは個人的な考えですが、事実がわからない限り、現在実施している対策が適切かどうかの評価もできないと思います」

篠塚医師

ドイツ 、台湾、韓国はウイルスの封じ込めに成功し、落ち着きを取り戻りつつあるが、日本やアメリカを含むその他の国では未だロックダウンや自粛が続き、ウイルスと闘っている。

イギリスは、感染拡大当初、集団免疫の獲得を目標としたが、重症化や死亡者数の増加という犠牲が大きく、ロックダウンによる感染拡大阻止に転じた。

各国が移動制限措置を採ったり自粛を拡大する中、独自路線を突き進むのがスウェーデンだ。同国は、集団免疫による収束を目指し、国民に責任行動を促す新型コロナ緩和対策を採っている。50人以上の集会を禁止し、レストランやジムは通常営業、学校も休校はない。報道で見る限り、国民の生活はほとんど変化していないように見える。

スウェーデン方式には賛否両論あり、この選択肢が正しいかどうかは感染収束後にしかわからない。ニューヨークの抗体検査でも、実際にはPCR検査で把握していた感染者数よりも多くの人が抗体を持っていることが判明。最終的には「集団免疫の取得」によって感染拡大が収束する国も出てくるかもしれない。

いずれの方法が正しいのかを検証するには時間を要するが、篠塚医師の言うように、まずは実態を知らなければ、対策が有効なのかどうかも判断できないというのは大いに納得できる。

PCR 検査により現在感染しているかどうか、また抗体検査によりすでに感染し回復した人および未感染の人が正確に識別できるようになれば、効率的な感染予防対策ができるだろう。とはいえ、個人がこうした検査を受けるには、医療的なリソースの限界や、信頼できる検査を受けられるかどうかという限界がある。

外出自粛により経済的打撃を受けている日本。政府には検査実施の重要性についていま一度考え、体制を整えて欲しいと願う。

協力:医療法人社団コスモ

千駄ヶ谷インターナショナルクリック院長・篠塚規医師(日本旅行医学会、WHOグリーンブック編集委員、千葉大学客員教授)

  • 取材・文吉澤恵理

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