外出自粛は温故知新の好機!指南役おススメの“神7コンテンツ”

指南役のエンタメのミカタ 第30回

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再放送『野ブタ。をプロデュース・特別編』大健闘! 『未来少年コナン』も登場!!

この5月3日から、NHKでは放送延期されたアニメ『キングダム』に代わり、なんと42年前のアニメ『未来少年コナン』が再放送される。

同ニュースが報じられた際、SNSはちょっとしたお祭り騒ぎになった。ご存知、宮崎駿監督の初監督作品(※個別の回の演出は『ルパン三世』1stシリーズで経験あり)であり、名作中の名作だ。

そのプロットは後に宮崎監督自身の『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』などに受け継がれ、また同作品を見てアニメーターを志した人も多いなど、アニメ業界に与えた影響は計り知れない。

実際、今年1月クールに放送されたアニメ『映像研には手を出すな!』でも、主人公・浅草みどりがアニメーターを志すきっかけとなった作品(劇中タイトルは「残され島のコナン」)として語られている(要するに同作品の湯浅政明監督の心の声ですナ)。

そう、温故知新――。

名作へのオマージュが、また新たな名作を生む。誤解されがちだけど、エンタテインメントにおけるクリエイティブとは、0から1を生み出すことではない。1を、2や3や5にアップデートする作業。即ち、優れた旧作をオマージュして、インスパイアされた作品こそが、エンタメ作りの王道なのだ。

実際、かのジョージ・ルーカスを一躍時の人に押し上げ、アメリカン・ニューシネマに引導を渡し、ハリウッドに再び黄金時代をもたらした金字塔『スター・ウォーズ』――。

かの作品が、神話学者ジョセフ・キャンベルが発見した、世界各地に伝わる神話に共通する“神話の法則”をベースにプロットが練られ、その世界観は1930~50年代に一世を風靡した「スペースオペラ」から、ストーリーとキャラクターは黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』から、それぞれインスパイアされたのは有名な話。かように、同作品はオマージュの宝庫である。

何が言いたいかというと、新作ドラマや新作映画が軒並み延期された今――禍を転じて福と為すじゃないけど、この空いた時間を、過去の名作に学び、己の糧とする「温故知新」の機会にしたらどうだろう。

幸い、テレビの地上波では、この4月クールの連ドラの代わりに、絶賛、旧作ドラマが再放送中である。思えば、昭和の時代は当たり前のように毎日、夕方にドラマの再放送や、夜9時から映画の放送枠が各局1つずつあって、セレンディピティ(幸運をつかむ偶然の出会い)を体験できたけど――今再び、そのチャンスが巡ってきたのだ。

更に嬉しいことに、比較的近い年代のドラマが再放送される傾向の中、日テレが15年も昔の『野ブタ。をプロデュース・特別編』を放送したところ、『下町ロケット』や『コウノドリ』の再放送が一桁視聴率だったのに対し、初回11.0%と大健闘。つまり、古い作品でも本当に面白い作品なら、お茶の間は見てくれることが証明されたのだ。これは今後、他のテレビ局も古い年代の作品を再放送する上で、追い風になると期待したい。

とはいえ、一方で、そこに壁があるのも事実。

現在の著作権法では、テレビ局は再放送でも俳優たちへ報酬を支払う義務があり、あらかじめ再放送の回数を決めた上で契約が行われるが、概ね90年代以前のドラマはその契約がされていない。つまり、連絡の取れない俳優がいると、再放送が難しいのだ。

実際、映像コンテンツの二次利用の権利処理を担う「映像コンテンツ権利処理機構」のサイトには、連絡のつかない出演者の一覧がある。この機会に、各テレビ局は電波を通じて、彼らに呼び掛けたらどうだろう。「再放送したいので、ご連絡を!」って。何せギャラがもらえるのだ。出演者にとって悪い話じゃない。

そんな次第で、この旧作への需要が高まっている好機に、僕もこの場を借りて、いくつかテレビ局に再放送してほしい名作を提案したいと思う。

一応、既に動画配信されているなど、二次利用の権利処理が済んでいる国内作品を対象に、7つほど挙げさせていただく。いわゆる“神7”だ。

その選考基準は、時代を越えて面白いこと。多くの作り手たちにオマージュされた作品であること。皆で語り合えるうんちくが豊富なこと――以上の3つ。早い話が、再放送したら、日テレが「金ロー」枠で流すジブリ作品と同じく、SNSがバズりそうな作品である。

〔指南役の考える名作 “神7” 国内編〕

『王様のレストラン』(1995年/フジテレビ系)※FODで視聴可能

個人的には、日本の連ドラ史上最高傑作だと思います。

 

ドラマ『王様のレストラン』©︎フジテレビ/共同テレビ (FOD公式サイトより)

脚本はご存知、三谷幸喜サン。三谷サンお得意のダメチーム再生モノだけど、元ネタはご自身で明かされているように、米映画の『がんばれ!ベアーズ』(76年)である。

ただ、僕の見立てでは、恐らく山田太一脚本、田宮二郎主演のTBSドラマ『高原へいらっしゃい』(76年)も参考にしてそう。全11話、捨て回がないドラマですが、強いてあげれば、4・5・6・7話が神。演出の鈴木雅之サン、河野圭太サンの2人ともいい仕事。そして企画は、三谷サンの朋友、石原隆サン。音楽は服部隆之サンで、こちらも絶品。キャストも全員素晴らしいんだけど、強いてあげれば、白井晃サン演じるソムリエの大庭金四郎の孤高キャラに注目すると、より楽しめると思います。

『踊る大捜査線』(1997年/フジテレビ系)※FODで視聴可能

王道中の王道だけど、何度見ても面白い。

実際、宮藤官九郎サン脚本のフジテレビのドラマ『ロケット・ボーイ』(01年)が織田裕二の入院で撮影が一時中断された際も、急遽『踊る』がピンチヒッターで再放送され、4話分の平均視聴率が21.3%もあった。

同ドラマの企画は石原隆サン。そもそも「サラリーマン刑事」というアイデアを考えたのは、彼である。脚本は君塚良一サンで、一番脂が乗り切っていたころ。元ネタは80年代に大ヒットした米ドラマ『ヒルストリート・ブルース』である。演出は、映画版を手掛けた本広克行監督と、セカンドでフジテレビの澤田鎌作サン。意外にも、この澤田演出回がいいんです。特に10話で真下警部が撃たれた後の演出は神。あと、『踊る』の功績として、一話完結ながら、クール全体でユルくストーリーが連続する二面構造は、同ドラマの発明とも言われます。

『3年B組金八先生(第2シリーズ)』(1980年/TBS系)※Paraviで視聴可能

80年代の第2次学園ドラマブームを牽引した金字塔。

ちなみに、第1次学園ドラマブームとは、『青春とはなんだ』(65~66年)から『われら青春!』(74年)に至る日テレの日曜20時の一連の学園青春ドラマのこと。ここで注目してもらいたいのが、『金八先生』の第2シリーズを挙げているところ。

もちろん第1シリーズも傑作で、「十五歳の母」の回がギャラクシー賞を受賞したり、生徒役で田原俊彦・近藤真彦・野村義男の“たのきんトリオ”や三原順子(現・じゅん子)がブレイクしたけど、純粋にドラマとして面白く、今も語り継がれるのは、圧倒的に第2シリーズのほう。平均視聴率26.3%もシリーズ最高。

直江喜一演ずる加藤優や沖田浩之演ずる松浦悟ら“腐ったミカン”が評判を呼んだシリーズですね。特に最終回の1つ前の回、中島みゆきの名曲「世情」が流れる中、加藤や松浦らが逮捕・連行されるシーンはドラマ史に残る名場面脚本・小山内美江子、演出・生野慈朗の神仕事でした。

『機動戦士ガンダム』(1979年/テレビ朝日)※Huluなどで視聴可能

1979年は、日本のアニメ史において「奇跡の年」。

『機動戦士ガンダム』 ©創通・サンライズ

それは、この年、『機動戦士ガンダム』が放映され、アニメ『ドラえもん』がスタート。映画では『銀河鉄道999』がアニメ作品として初めて邦画の興行収入第1位となり、天才アニメーター出崎統監督の『エースをねらえ』が公開、年末には宮崎駿監督の『ルパン三世カリオストロの城』が封切られるという、奇しくもアニメ界のレジェンドたちの作品が揃ったから。

中でも「ガンダム」の登場は、アニメ界の一大エポックメーキング。まず、何が画期的だったかと言うと、ロボットアニメではなく、戦争ドラマだったこと。現に第1話は、いきなり戦争状態から始まります。ちなみに、台本上の原題がカッコよくて、第1話が「モビルスーツ」(オンエア時は「ガンダム大地に立つ!!」)、第2話が「赤い彗星」(オンエア時は「ガンダム破壊命令」)だったんですね。このコピーライティングのセンスも同アニメの魅力の1つ。

富野喜幸(現・由悠季)監督曰く「普段から、響きのいい語感の言葉をストックしておいて、それを使った」と。シャア・アズナブル、ザク、ホワイトベース、ジオン公国、ルナツー、マ・クベ、ジャブロー等々、響きのいい造語は、全て富野監督の創作である。

『ルパン三世カリオストロの城』(1979年/東宝)※Amazonプライムビデオなどで視聴可能

ジブリ作品ではないけれど、宮崎駿監督の映画デビュー作にして、最高傑作だと思います。

ちなみに、この作品、何が凄いって制作スケジュールの短さ。宮崎監督に依頼が来てから劇場公開まで、わずか半年。これはオリジナルのアニメーション映画のスケジュールとしては前代未聞、ほとんど不可能な時間。しかし、ここからが宮崎駿サンの天才たる所以で、過去のエンタメ作品からエッセンスを借用して、絶妙にコラージュして完成にこぎつけたんですね。

つまり、先に示した『スター・ウォーズ』同様、同アニメはオマージュの宝庫だった。実際、ジョージ・ルーカスから「史上最高の冒険活劇の1つ」と最高級の評価を受けたのがその証左。ちなみに、コラージュされた作品は以下の通りと言われる。

〇タイトルは、本家・モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズ『カリオストロ伯爵夫人』から引用

〇ヒロインのクラリスが誘拐される物語のベースは、「Damsel in distress(囚われの姫君)」と呼ばれる古典的活劇の定番

〇劇中に登場する湖とローマの遺跡は、アルセーヌ・ルパンシリーズの『緑の目の令嬢』からヒントを着想

〇巨大な時計塔の世界観は、黒岩涙香と江戸川乱歩の『幽霊塔』がモチーフ

〇冒頭のカーチェイスのシーンは、ソ連映画『コーカサス誘拐事件』を参考にしたもの

〇その他――時計塔の内部メカニズム、本物を上回る精度の偽札、テレビ局員に扮しての敵のアジトへ潜入等々、テレビ版の1stシリーズに登場したエピソードから多数流用

――そう、もはやコラージュの芸術作品である。

『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1976年/松竹)※NETFLIXなどで視聴可能

日本人なら誰もが知ってる「寅さん」は、シリーズ全50作(※特別編の第49作を加算)を数え、もはやレジェンド。

元々は1968年のフジテレビの連ドラで、小林俊一プロデューサー(この方、田宮二郎版の『白い巨塔』を演出した人でもあります)から山田洋次監督が脚本を依頼され、赤坂の旅館で渥美清サンを入れて打ち合わせをしていたところ、渥美サンが知り合いのテキヤの口上を真似して、これに一同大爆笑。あっという間にプロットが出来たという。

テレビシリーズは好評のうちに終わるも、最終回を寅さんがハブに噛まれて死ぬ話にしたところ、局に抗議の電話が殺到。それを聞いた山田洋次監督が勝算ありと松竹に企画を持ち込んで、映画化が決まったとか。

第1作が69年。ここから80年代前半(第32作)までは、基本ハズレはない。

中でも、寅さんフリークの間で最も評価が高いのが、第17作の『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(76年)。マドンナは大地喜和子サンで、1時間49分、全部面白い。

キネマ旬報年間ベストテン第2位は、寅さん映画として歴代最高位だし、Yahoo!映画の採点も、同映画がシリーズ中最高。

舞台となった兵庫県・龍野の町並みは風情があり、名優・宇野重吉演ずる画伯もいい味。「寅さん」未見の方なら、まずは本作をお勧めします。捧腹絶倒、そして泣けます。

『仁義なき戦い』(1973年/東映)※Huluなどで視聴可能

巨匠・深作欣二の大傑作。

映像系の仕事を志す人は必見ですね。洋画なら『ブレードランナー』、邦画ならコレ。打ち合わせの際の共通言語みたいなものです。シリーズものだけど、やっぱり1作目が最高です。

映画『仁義なき戦い』©︎東映 (hulu 公式サイトより)

これを、単なるヤクザ映画と思って敬遠するのはもったいない。昭和の実録映画であり、青春ドラマであり、群像劇であり、広義のエンタテインメント。先入観なしで見るのをお勧めします。

冒頭の闇市シーンから手持ちカメラが揺れるリアリティたっぷりな深作演出が楽しめるし、菅原文太松方弘樹梅宮辰夫らの瑞々しい芝居も必見。たまに、主人公・広能が指をつめるシーンのコメディ演出もあったりと、一筋縄ではいかない面白さ。そして何と言っても金子信雄サンの怪演。

公開された73年は、アメリカで『ゴッドファーザー』(72年)が公開された翌年で、その影響を多少受けているとはいえ、ほぼ同時期に映画化の話が進んだこともあり、時代が生んだ作品とも――。

 

――以上、僕の考える名作 “神7” 国内編でした。

ここに挙げた作品は、いずれもその後、多くのクリエイターにオマージュされたり、あるいはパロディにされたりと、コスられまくった名作中の名作。テレビ局の皆さん、再放送してくれませんかね。SNSが盛り上がり、日本が少しは元気になると思います。

次は、海外作品で神7と行きましょうか。その日まで、お茶の間の皆さまにはどうか平穏に、温故知新の日々を送られることをお祈り申し上げます。

  • 草場滋

    (くさばしげる)メディアプランナー。「指南役」代表。1998年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。現在、日経エンタテインメント!に「テレビ証券」、日経MJに「CM裏表」ほか連載多数。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。代表作に、テレビ番組「逃走中」(フジテレビ)の企画原案、映画「バブルへGO!」(馬場康夫監督)の原作協力など。主な著書に、『テレビは余命7年』(大和書房)、『「朝ドラ」一人勝ちの法則』(光文社)、『情報は集めるな!」(マガジンハウス)、『「考え方」の考え方』(大和書房)、『キミがこの本を買ったワケ』(扶桑社)、『タイムウォーカー~時間旅行代理店』(ダイヤモンド社)、『幻の1940年計画』(アスペクト)、『買う5秒前』(宣伝会議)、『絶滅企業に学べ!』(大和書房)などがある

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