外出自粛が続く中「レンタルなんもしない人」はいま何してる?

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“なんもしない自分”を貸し出す「レンタルなんもしない人」氏(以下、レンタルさん)。2018年6月にTwitterでサービス開始の告知を行って以降、DMで依頼を受け、その内容を日々発信してきた。

昨年、フライデーデジタルの取材を受けてくれた際の「レンタルなんもしない人」氏

その後瞬く間に話題となり、書籍化やコミック化に加え、今春からはテレビ東京系で『レンタルなんもしない人』(主演・NEWS 増田貴久)も放送開始。さらに注目が集まっている。新型コロナウイルス感染拡大防止のため外出自粛が続いているなか、彼はどのように過ごしているのか?

今回、裁判傍聴をライフワークに、事件を通して人間の深い業を描いた著作の多い、ノンフィクションライター高橋ユキ氏によるインタビューが実現した。

——3月末にTwitterで「外出をともなう依頼をキャンセルする」旨を告知されていましたが、その後はどういった依頼を受けているのでしょうか?(高橋ユキ氏 以下同)

「『ただただ話を聞いてほしい』という依頼がメインですね。『DMで最近思っていることを書くので読んでいただければOKです』という依頼や『こう返信してくださればOKです』という依頼などです。DMの場合もありますし、LINEで通話したりする場合もあります。通話の場合はなんとなく相槌を打ってくださいと言われることが多いです。

告知をする以前から感染リスクを意識し始めていたので、密室空間でお会いすることは避けていました。依頼者のほうからも延期の連絡があったりしましたし、実際に会っても、散歩で外に行ったりというようにソーシャルディスタンスが保てる依頼のみ受けていました」(「レンタルなんもしない人」氏 以下同)

——先が見えない状況の中で「聞いてほしい」という依頼が増えたのではないかと想像したりもするのですが。

「増えたのかもしれないです。コロナに関連して、気分が落ち込んでいるというお話もありましたし、職業的に感染リスクが高く、仕事中は大変な状況だからそんなこと口に出せないし、職場外では守秘義務があるので誰にも相談できない方から『聞いてほしい』という依頼も。仕事の内容というよりは、それにともなう“気持ち”を吐き出したいという依頼でしたね。

ほかにはクリーニング店勤務など、リスクについてあまり報じられない職業だけど、実は不安を抱えているという方からも『聞いてほしい』と連絡があります。実際にかなり怖い思いをして働いている方も多いそうなんですが、休業補償の対象ではないため営業を続けているようです。

逆に『コロナのおかげで人生が楽しくなってるということを聞いてほしい』という依頼もありました。

学校が休校になってしまった教師の方からですが『それまでは部活とかもいろいろ担当していて、学校で生徒のケアに忙殺され、それだけの人生になっていた。けれど休校になってから、自分のプライベートな時間ができてすごく今人生が楽しい』、そんな話を聞いてほしいと」

——『聞いてほしい』という依頼の内容も、状況に応じて変化が生まれているんですね。

「そうですね。学生さんからは『本来勉強しないといけない時期なのに、学校が休みになっているので、テストもなければ課題が出ているわけでもなく、勉強するモチベーションが保てない。だからその日に勉強したノートの写真を必ず僕に送る、ということをやらせてほしい』という依頼がありました。勉強の強制力を保てるように報告させてほしいという依頼ですね」

——そういった依頼はDMやLINEでくるのだと思いますが、電話で受ける依頼もあるんですか?

「ちょっと特殊になるんですが『今度朗読のイベントがあるので、朗読の練習相手になってほしい』という演者さんからの依頼もありました。それも電話で聞いているだけで、特にここが聞き取りづらかったとかそういう感想は言わないんですけど。本人としては、人に聞いてもらっているということで本番を意識しながら練習ができるみたいです」

——昨年9月の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で密着取材の模様が放送されました。放送後、それまで諸経費の支払いだけで受けていた依頼を、一律1万円に設定しましたよね。ですが、コロナの感染拡大が深刻になってくるなか、依頼を無料や1000円で受けるというキャンペーンをツイートをされていたと思いますが、その時期はやっぱり依頼が増えましたか?

「土日の外出自粛が初めて呼びかけられた時、自宅にいることを支援するという意図で、それまで1万円いただいていたのを、土日だけ無料で依頼を受けたんですね。そうしたら依頼が殺到して、それはもちろん楽しかったんですが、ちょっと依頼が来すぎてしまって。寝不足で免疫力落ちた感じになっちゃったんで、次の土日に1000円へと価格変更しました。

自分もやっぱりコロナむちゃくちゃ怖かった時期なので、なるべく感染爆発させたくないと。そういう意味では、社会貢献的な気持ちというよりは、利己的な動きでもあるんですが」

——緊急事態宣言が発令されたのが4月7日で、まさにその翌日にドラマの放送も始まりましたが、ドラマに絡むDMも増えたとTwitterで拝見しました。

「間違えたり勘違いしてたりするDMがけっこうありますね笑。

いろいろな勘違いがありますが、一番多いのが、実際に増田貴久さんが僕のツイッターアカウントを動かしていると思っている方から『増田さんが来てくれる』と思ってDMを送ってくるというものです。あとは、僕のアカウントが『ドラマのスタッフがドラマのために作ったアカウント』だと思われていることもあります。

それぐらいのことは想定していたんですが、悲しいのは『ドラマが始まってそれに影響を受けて真似している人』だと思われてることですね。それは一番悲しいです。割と毎日のようにそういう連絡は来るんですけど、最近そんなに忙しいわけじゃないので一つの刺激として楽しんでるところはあります」

——去年はまだ依頼自体は無料で受けていた時期なので、比較するのは難しいと思いますが、2020年年明けからゴールデンウィークにかけての依頼の数は?

「1月ってどのサービス業も閑散期に入るみたいで、例に漏れず、僕の場合も年明けは少なめでした。去年は3月くらいから徐々に依頼が増えてきて、ゴールデンウィークはまさに繁忙期だったんですが、今年は1日のDMが年始頃と同じ程度で、いまも10〜20件程度(去年は50件程度)と落ち着いています。

去年の寒い時期にインフルエンザになったり大風邪をひいたりしたので、もともと今年はあまり根をつめないよう、体調管理に気をつけながらやろうと決めていました。去年は1日3件が最低ラインで4件5件依頼を受ける日もあったんですけど、今年は、早朝や夜遅い依頼は控えるようにし、なるべく日中だけ依頼を入れるようにしています」

——昔は無茶していたんですね(笑)。そういえば私も昨年の夏にレンタルさんに裁判所の傍聴券抽選に並んでもらうという依頼をさせていただきましたが、抽選の前も後も、依頼のためにどこかに移動していましたね。

「活動開始して間がなかった頃なので、斬新な依頼とか、目の付け所が面白い依頼がくると、どうしても断れなかったというのがあります。いまはだいぶ、体調優先にできるようになってきて、ワークライフバランスが整ってきました」

——しばらく外出自粛モードで“会わない依頼”を受ける状態を続けるんでしょうか?

「11日から、外出を伴うレンタル再開の予定です。ただし、依頼内容、時間帯、場所などから考えて感染リスクが十分低いと思えるものに限ります。マスク着用や食事中は会話NGとするなど、感染拡大に注意しながら受けていきたいです

この言葉通り、5月6日に外出を伴うレンタルの再開を告知したレンタルさん。続くツイートで「『再開すんな家にいろ』という依頼も1日につき1万円で引き受けます」と、すかさず先手を打つあたり、巷に跋扈する自粛警察対策も怠りない。粛々と「なんもしない」を貫いてきたが故のしたたかさを感じるのは私だけだろうか。

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『レンタルなんもしない人』1~2話

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

  • 撮影西崎進也

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