驚愕…!「歯周病」が原因で肥満のリスクが3倍に、EDも?

アルツや糖尿病だけじゃない

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新型コロナによるストレスフルな毎日、気をつけたい「歯周病菌」が原因の体の不調 

最近、数多くの病気を誘発しているのが、歯周病だという研究結果が次々と発表されている。ウイズコロナで、思うように行動できないストレスフルな毎日が続くが、歯周病を悪化させる要因の一つにストレスが挙げられている。働き盛り世代の日本人労働者の二人に一人は歯周病を発症しているという報告もある。

多くの人が毎日朝晩、歯みがきしているにもかかわらず、歯周病になるのはなぜなのか? 歯周病研究の最新情報を日本大学歯学部教授の川戸貴行氏に聞く。 

スポーツジムに通うより、歯磨き!? 歯周病が慢性化している人は、歯周病がない人の3倍も肥満になりやすいとの調査がある(写真:アフロ)

太るのも「歯周病」のせい? 肥満のリスクが3倍に! 

歯科臨床総合誌『月刊ザ・クインテッセンス』に、川戸貴行氏と公益財団法人ライオン歯科衛生研究所の調査でわかった興味深いあるデータが発表された。それは、歯周病があると肥満になりやすくなるというのだ。

「9年間の調査で、歯周病の典型的な症状である“歯周ポケット”が年1回の検診で6回以上見つかると、なかった場合に比べて、3倍も肥満になりやすかったことがわかりました」 (川戸貴行氏 以下同)

なぜ歯周病になると太りやすくなるのか、原因はまだ解明できていない。川戸氏は、炎症性サイトカインの影響で脂肪細胞が肥大しやすくなり、脂肪を蓄えやすくなるのではと考え、研究を進めている。

9年後の肥満、高血圧、脂質異常の陽性化のオッズ(起こりやすさ)を歯周ポケットなしの集団を1とした場合に、それぞれの歯周ポケット保有年数の集団では何倍だったかを示す *は統計学的有意差あり

新発見が続々と報告されている「歯周病」。よく耳にするけど、その原因、症状とは?

腸内の次に細菌が存在するという口の中の細菌の数は、700種類とも900種類とも言われている。その中で歯周病の原因と考えられているのは100種類ほど。

虫歯菌は口の中に残った糖分をエサに、白くてネバネバした物質を作り出し、虫歯と歯周病の原因となるプラーク(歯垢)と呼ばれる細菌の塊を歯の周囲に粘着させる。歯周病菌は空気を嫌い、血液にも含まれるタンパク質やアミノ酸をエサとするため、空気が届きにくいプラークの奥深くや血液に似た成分で満たされる歯と歯茎の間のわずかな隙間で活発になる。この歯と歯茎の間の隙間は1~2㎜の深さが健康な状態とされるが、歯周病にかかると深くなり、4㎜以上では歯周ポケットとよばれ、歯周病の典型的な症状となる。

他にも歯周病には歯茎の赤み、腫れ、出血などの症状があるが痛みは少なく、そのまま放っておいておくと歯茎は本来の位置から下がり、歯が長くなったように見える。さらに症状が進むと歯を支える骨が失われて歯がぐらつき始め、最終的には歯が抜け落ちてしまう。

歯茎の間の隙間が4㎜以上になる「歯周ポケット」。歯周病の典型的な症状だ

自覚がなく、進行し慢性化する「歯周病」。歯周病菌が引き金で作られた“炎症物質”は、血液で体全体に運ばれる

歯周病は年齢とともに増え、30代~40代では2人に1人が歯周病だというデータもある。

歯を失ってしまうことも怖いが、もっと怖いのは、歯周病の自覚がない状態で進行しつつ慢性化して、さまざまな病気のリスクを押し上げるということだ。

「歯茎にはたくさんの毛細血管が走っていて、つねに歯周病菌との攻防が繰り返されています。歯周病は軽微な慢性疾患状態で、一時的なものであれば白血球がやっつけるのですけど、この攻防が続くとその最前線の歯周ポケット深くで歯茎や骨にダメージを与える炎症物質が増えていく。5年10年というスパンで炎症状態が続くと、血流にのって臓器や血管壁にも毒性を発揮し、循環器系や糖尿病のリスクを上げていると考えられています」

歯周病があると、炎症物質は血液にのって全身に回る。実際、腕から採血した血液を歯周病のある人とない人で比べると、歯周病のある人には炎症物質が高く検出されるという。

動脈硬化を起こしている部分から歯周病菌が検出されたという報告も

歯周病を原因とする、さまざまな病気の中でも古くから研究されているのが、虚血性心疾患だ。

「歯周病菌が血中に入り込むとマクロファージや白血球が捕食します。その結果、これらの細胞も死んで、その死骸が血管につき、動脈硬化の一因になります。また、血管についたものがコブのようになり、それが剥がれ落ちて血栓となることもあります」

動脈硬化を起こしている部分から歯周病菌が検出されたという報告もたくさんあるという。さらに、炎症物質の一つ、“炎症性サイトカイン”が血中を移動することによって血管内皮細胞や白血球が刺激され、血管に負担をかけて、心臓血管系の異常を引き起こすこともあると考えられている。

正常値の人でも、歯周病の慢性化で糖尿病になるリスクが6.4倍に

糖尿病も歯周病と深い関係があることが知られている。川戸氏が(公財)ライオン歯科衛生研究所と行った前出の調査でも、それが証明された。

肥満ではなく、血糖値、血圧、中性脂肪も正常値だった人を2003年から2012年までの9年間追ってみたところ、歯周病である期間が長いと、これらの値が異常値となるケースが多く、年1回の歯科健診で歯周ポケットが6回以上認められた人は、5回以下の人の6.4倍も高血糖になりやすかったという。

なぜ、こんなことになってしまうのか。

「食物を摂ると、インスリンが分泌されて、血糖値を下げます。ところが、炎症性サイトカインがあると、インスリンの働きが低下し、その結果、血糖値の下りがにぶくなってしまうのです」

その結果、糖尿病でなかった人も高血糖になってしまい、糖尿病の人は病状を悪化させてしまうことになるのだという。

では、歯を磨いていれば、糖尿病にならないのだろうか。

「確かに歯周病の人は糖尿病になりやすかったり、糖尿病を悪化させてしまいますが、糖尿病になるには、カロリー過多など主犯となる原因がある。循環器系の病気にしても同じです。歯周病は病気を助長させますが、歯周病だけで病気になるわけではありません」

とはいえ、歯周病が要因の一つであることは確か。歯周病予防が糖尿病や循環器系の病気の予防にもなるのだ。

アルツハイマー病、腎臓病、EDも!

炎症性サイトカインによる悪影響は、まだまだある。

「アルツハイマー病の人の脳にはアミロイドβというタンパク質の一種が多く見られ、これがアルツハイマー病の進行に大きく関与すると考えられていますが、炎症性サイトカインはアミロイドβの数値を上げると言われています。

また、腎臓は血液のろ過機能の働きがあり、それだけ血液が集まる臓器です。血液に炎症性サイトカインが含まれていることによって、腎臓により負担をかけてしまう。その結果、腎臓病になることも考えられています」

陰茎も毛細血管の塊。炎症性サイトカインの作用で血液がスムーズに流れないと勃起できなくなる。EDと歯周病の関連性も、最近は注目されている。

また、早産や低体重児の危険性も、喫煙や飲酒に次いで歯周病に関連があるとされている。妊娠中はつわりなどで歯磨きがおろそかになることもあり、それも歯周病を増やす一因になるという。

さらにHIVの進行も早める可能性がある。

「歯周病菌が作り出すブチル酸がHIVウイルスを活性化させる働きがあるとの報告があります」

歯周病の原因は、喫煙、ストレス、薬…

まさに全身くまなく悪さをする歯周病。予防するのは歯磨きなのだろうか。(公財)ライオン歯科衛生研究所との調査では、1日1回歯磨きする人の歯周病発症率を1とした場合、1日3回歯磨きすると、0.6にまで下がるという。

「歯茎から血が出る、歯茎が腫れるなどの症状があれば、歯周病とわかりますが、初期の段階は無症状で、気づかないうちに歯周病が進んでしまうことがほとんどです。自覚症状がなくても1年に1~2回は定期検診を受けることをおすすめします」 

しかし、これだけやっても万全ではない。

「歯周病は多因子疾患で、歯磨き以外にも宿主因子と環境因子が大きく影響します。宿主因子というのは、患者自身にかかわる要因です。体質的なこともありますが、一般的に免疫力が低下していると歯周病が発症・悪化しやすくなることがわかっています。また、年齢が高くなるほど、リスクは高まり、女性は思春期や妊娠中、更年期などホルモンが変動する時期も悪化しやすくなります。環境因子は喫煙やストレス、薬などです」

ニコチンは歯周病菌の発育を促し、受動喫煙でも歯周病のリスクは高まるという。また、唾液には口の中の菌の増殖を抑え込む働きがあるが、花粉症などの治療に使う抗ヒスタミン剤の中には唾液の分泌を止めてしまうものがあり、それによって歯周病菌が増える。ストレスも歯周病菌を増やす要因になる。

予防の基本は、歯磨き。1日1回歯磨きする人の歯周病発症率を1とした場合、1日3回歯磨きすると、0.6にまで下がるという

外出自粛が続く中、うつうつとした状態でストレスをため、運動不足などで免疫力や体力が低下すると、歯周病にもなりやすくなる。1日3回歯を磨き、年1~2回定期検診、気分転換をしてストレスをためこまず、適度な運動を心がける。それが歯周病の予防策だ。

川戸貴行 歯学(博士)。日本大学歯学部教授。専門は口腔衛生学。公益財団法人ライオン歯科衛生研究所とともに、歯周病と全身病の関連を研究。現在、歯周病に着目した非肥満型メタボリックシンドローム予防に関する細胞生物学・疫学研究を続けている。

  • 取材・文中川いづみ

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