現役精神科医が推す「コロナプチ鬱に効く漢方&食べ物」 | FRIDAYデジタル

現役精神科医が推す「コロナプチ鬱に効く漢方&食べ物」

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原因不明の倦怠感に悩まされる人も多いのではないだろうか(写真:アフロ)
原因不明の倦怠感に悩まされる人も多いのではないだろうか(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、緊急事態宣言が5月31日まで延長された。解除となった県も出てきたが、これまで様々な自粛を強いられ、知らず知らずのうちにストレスを抱え込んでいる人が多いのではないだろうか。どこにいても新型コロナに感染する可能性が消えない今、体に異変を感じても積極的に病院に行きたい、という人はそう多くないだろう。

家庭で「コロナプチ鬱」を改善する方法はないのか。山形県長井市の吉川記念病院に精神神経科医として勤務しながら、週に1度、静岡のあおいクリニックで診察する木村好珠医師に話を聞いてみた。

「新型コロナウイルスによる外出自粛などが長引き、そのことが直接的な原因として鬱症状を訴える方はそこまで多くはありません。ただ、『なんとなく全身だるい』『熱っぽい気がする』と明確な原因がわからず、症状も重症ではないけど不調を感じ、精神科ではなく、内科に来院する方を多く見かけます。もちろん器質的な原因の場合もありますが、精神面、いわゆる“プチ鬱”のような状態の可能性も考えられます」

木村医師によると、“プチ鬱”の症状は、気分が落ち込んで活動することを嫌がる「抑うつ気分」に加え、「やる気が出ない」「集中力がわかない」「なかなか寝付けない」といった比較的わかりやすい症状から、「些細なことにイライラする」「怒りっぽくなった」など、自分ではあまり気がつきにくい症状として現れることもある。こういった不定愁訴を改善する方法として、木村医師は体に入れるもの、特に漢方と食事をあげる。

普段、精神科医として、患者に抗不安薬や睡眠薬など西洋の薬を処方するが、並行して漢方も勉強してきた。背景に、医療現場や自分自身の経験がある。

「患者さんの中には、精神薬に分類される薬に対して、依存してしまうのではないかとか、どんどん量が増えてしまうのではないかという不安から、抵抗を示す方もいらっしゃいます。そういった方に漢方をすすめることがあるので、勉強を続けてきました。

私自身、婦人科系の悩みに対して漢方を飲んでみたのが最初でしたが、飲み始めて2週間ほどしたら、なんとニキビができにくくなりました。婦人科系の不調を改善する目的なのに、と思うかもしれませんが、東洋医学は症状に対して1対1の対応ではなく、体質そのものを改善するイメージです。私が飲んでいた漢方は、『瘀血(おけつ)』と呼ばれる体の悪い血に対してアプローチするので、婦人科系だけでなく、皮膚にも効果があったんです」

東洋医学において、人間の体は「気」「血」「水」で構成されていると言われる。「気」とは人間の生命活動のエネルギー、「血」は血液、「水」は水分のこと。プチ鬱の可能性が考えられる体の異変は、「気」を軸に考えた場合、文字通り、気が滞っている“気滞”と、エネルギーそのものが不足する“気虚”に分けられるという。“気滞”と“気虚”を家庭でどう改善できるのか。木村医師が解説する。

写真:アフロ
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~“気 滞”~
些細なことが心配で寝られない
▼漢方:「柴胡加竜骨牡蛎湯」「桂枝加竜骨牡蛎湯
漢方の中で、「柴胡(さいこ)剤」と言われるグループで、自律神経や精神的なストレスを処方する。炎症を抑えたり、高い度合いまで進んだ病勢を抑える効果があり、上記症状に加え動悸がある人にも勧められる。「竜骨」や「牡蛎(ぼれい)」といった生薬は、気分を落ち着ける作用がある。

ただし、「柴胡加竜骨牡蛎湯」はある程度、体力にがある人向き(風邪による高熱を汗を出すことで熱を下げられる人)だ。体力のない人(風邪をひいたときに微熱や寒気、倦怠感などが短期間で終わらず、長く続いてしまう人)は、「桂枝加竜骨牡蛎湯」がお勧めだ。

「社内での嫌がらせにより、不眠になったり、些細なことでイライラしていると妻に指摘され、来院した男性がいました。その方は元々、薬が嫌いで、西洋薬はなるべく飲みたくないと希望されたので、柴胡加竜骨牡蛎湯を勧めたら、声を荒げて怒ることがなくなり、睡眠も取れるようになりました」(木村医師)

なんとなく喉がつっかえる
▼漢方:「半夏厚朴湯
ストレスで、なんとなく喉がつっかえる「ヒステリー球」と呼ばれる症状がある人に勧めている漢方。生薬の「半夏」はサトイモ科カラスビシャクの球根で、停滞してるものを動かす作用があり、鎮吐、鎮静作用あり。「厚朴」はモクレン科朴(ホオ)の木の皮。体を温める作用、緊張や痛みを緩和させる作用がある。生薬の「厚朴」と「蘇葉」には滞った気を巡らせる作用があり、さらに半夏と生姜が喉の違和感や吐き気といった上部臓器の症状に効果をもたらす。

「抑うつ気分と喉の違和感により来院された女性に半夏厚朴湯を処方しました。この方には別の抗うつ薬も処方していましたが、喉の違和感が改善されました。
効果を実感される人が多く、処方する頻度が一番高い薬です」(木村医師)

イライラする、感情のコントロールがうまくできない
▼漢方:「抑肝散
「肝」とは漢方では心や精神を表す。つまり精神神経症状を抑え、筋肉のこわばりなどを緩めて心や体の状態をよくする。含まれる7つの生薬のうち、「柴胡(さいこ)」はセリ科のミシマサイコなどの根を乾燥したもので、解熱、鎮静、解毒効果がある。さらに、「釣藤鈎(チョウトウコウ)」はアカネ科のカギカズラのとげなどを乾燥し、脳循環をよくする作用があるとされ、手足のふるえ、けいれん、不眠などにも効く。子供から高齢者まで幅広く服用でき、ストレスで夜泣きがひどくなったり、癇癪を起こしたり、チックが出ている子供にも効果がある。

★“気滞”を解消する食べ物
シソ入り蕎麦」「シーフードパスタ」「柑橘類
蕎麦には滞った気を巡らす気巡の効果があり、さらにシソを入れると効果が高まる。魚介類のエビやシジミにもその効果があり、シーフードパスタも良い。魚介類には睡眠に必要なグリシンも多く含まれているので、なかなか寝付けない人にもお勧め。

デザートには、柑橘類が良い。気を巡らす作用のほかに、睡眠に必要なリラックス効果をもたらすアミノ酸の一種、「GABA」が多く含まれる。

また、「なんとなくイライラしている」「些細なことが気になる」といった症状がある人は、唐辛子などの刺激物は避けたほうがいい。 あまり自炊をしない人はジャスミン茶やローズマリー、ラベンダーといったハーブティーを飲むだけでも気巡の効果がある。

~“気 虚”~
全身倦怠感やだるさが取れない
▼漢方:「補中益気湯
名前の通り、「気を補う」作用があり、食欲がない人や術後に体力が落ちている人に勧めている。10種類の生薬からなり、特に「人参」やマメ科のキバナオウギの根茎を乾燥させた「黄耆(おうぎ)」には滋養強壮作用がある。

★“気虚”を解消する食べ物
キノコと卵のスープ」「豆乳とかぼちゃのスープ
「全身の倦怠感やだるさ」のほか、「息切れや動悸」「寝汗がある」「耳鳴りがする」人もエネルギー不足の状態にある可能性がある。巡らす「気」が不足しており、「気」を補う食材として、卵や牛肉、豆類、キノコ、かぼちゃなどがある。特に卵は「気」と「血」を両方満たす効果があるので、女性で元々虚弱体質の人や、食欲がわかない人にもおすすめだ。

推薦した漢方薬はいずれも薬局で買うことができるが、誰でも必ず効果が出るわけではない。人によっては副作用として出る場合もあるので要注意だ。

「『甘草』という生薬による偽アルドステロン症があります。顔や手のむくみや脱力感、筋力低下手足のしびれが出た場合は内服はやめてください。また、『黄芩(おうごん)』という生薬による間質性肺炎も指摘されていますので、内服後に咳が出るようになったら、病院に行ってください。即効性のある半夏厚朴湯などは、数日で効果を感じる方も多いですし、逆に1ヶ月飲んで変わらなければ、その漢方は体にあってません」(木村医師)

「人類にとって最大の感染症クライシス」とも言われ、体に異変があっても病院に行く足取りが重くなる超非日常的な今だからこそ、やれることもある。何を口にすれば自分の体調が改善されるのか、見つめ直すいい機会なのかもしれない。

木村好珠医師は静岡で診察するときは、患者さんと2mの距離をとり、アクリル板を隔てて対話するという
木村好珠医師は静岡で診察するときは、患者さんと2mの距離をとり、アクリル板を隔てて対話するという

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